住友ゴム工業がダンロップを買収
日経電子版の2024年1月8日に住友ゴム、米グッドイヤーから欧米「ダンロップ」事業買収という記事が出ていました。
興味深い内容なので紹介するとともに、タイヤ業界の合従連衡についてお話しします。
新聞記事の概要
新聞記事の概要をお話します。
住友ゴム工業は、米グッドイヤーから欧米の「ダンロップ」ブランドのタイヤ事業を約830億円で買収することを発表しました。この買収により、住友ゴムはグローバルにダンロップブランドを展開し、欧米の自動車メーカーへの販売を強化します。商標権は2025年5月を目指して取得し、追加費用を含めて約1000億円を支払う予定です。製造拠点は引き継がず、当面はグッドイヤーからタイヤを購入します。
ダンロップは英国発祥で、住友ゴムは過去にダンロップを買収した経緯がありますが、国際展開を断念していました。住友ゴムは、欧米市場での販促活動を強化し、高付加価値タイヤの販売比率を2024年の40%から2030年には60%に引き上げることを目指しています。
住友ゴム工業、北米工場を閉鎖へ
住友ゴム工業は今回の買収事案の前に北米工場を閉鎖というリストラを実施していました。2024年11月には北米のタイヤ生産子会社スミトモラバーUSAでの生産を終了し、解散することを発表しました。
これは人件費の負担や設備の老朽化により採算が悪化したためです。構造改革に伴い、700億円強の損失を計上する見通しで、2024年1〜9月期には465億円の関連損を計上し、10〜12月期には282億円の解雇費用や違約金を見込んでいます。
北米工場は月4720トンの生産能力を持ち、同社全体の供給力の7%を占めていましたが、近年は赤字が続いていました。
ダンロップ買収の目的
住友ゴム工業によるダンロップブランドの買収には、以下のような目的がありました。
- ブランド認知度の向上: 欧米市場でのダンロップブランドの認知度を高め、競争力を強化することを目指しています。
- 高付加価値タイヤの販売比率向上: 高付加価値タイヤの販売比率を2024年の40%から2030年には60%に引き上げる計画があり、これにより収益性の向上を図っています。
- 高級車メーカーへの販売強化: ダンロップブランドを通じて、高級車メーカーへの販売を強化し、より高い利益を得ることを狙っています。
- 市場シェアの拡大: 買収により、欧米市場でのシェアを増加させることが期待されており、競争が激化する中での優位性を確保することが目的です。
- 過去の経験を活かす: 住友ゴムは過去に阪神大震災の影響で国際展開を断念した経験があり、その教訓を活かして今後の国際展開を進める意図があります。
これらの目的を通じて、住友ゴムはグローバルな競争力を高め、持続的な成長を目指しています。
タイヤ業界の市場規模と市場シェア
タイヤ業界の市場規模は20兆円
タイヤ業界の市場規模は、2023年時点で約1,500億ドル(約20兆円)と推定されています。この市場は、乗用車、商用車、二輪車、航空機など多岐にわたるセグメントで構成されており、特に乗用車用タイヤが大きな割合を占めています。市場は年々成長しており、特に新興国における自動車需要の増加や、環境規制の強化に伴う高性能・エコタイヤの需要が影響を与えています。今後も、技術革新や持続可能な製品へのシフトが進む中で、タイヤ業界はさらなる成長が期待されています。
タイヤ業界の市場シェア
2023年の世界のタイヤ業界における市場シェアは、主要なメーカーによって次のように分布しています。ミシュランが14.4%で1位、ブリヂストンが13.3%で2位、グッドイヤーが9%で3位、住友ゴム工業は3.7%で5位に位置しています。ピレリも3.7%のシェアを持っており、住友ゴムと同じく5位にランクインしています。
このように、住友ゴム工業は世界のタイヤ市場において一定のシェアを持ちながら、競争が激しい環境の中での地位を確保しています。
「規模の利益」が成立しやすいタイヤ業界
タイヤ業界は「規模の利益」が成立しやすい業界と言われています。規模の利益とは、生産量が増加することで単位あたりのコストが低下する現象を指します。タイヤ業界では、大規模な生産施設や効率的な製造プロセスを持つ企業が、原材料の調達コストを削減し、固定費を分散させることができるため、競争力を高めることが可能です。
また、タイヤの製造には高い初期投資が必要ですが、生産量が増えることで、これらのコストを回収しやすくなります。さらに、大手メーカーは研究開発やマーケティングにおいても規模の利益を享受しやすく、新技術の導入やブランド力の強化により、さらなる市場シェアの拡大が期待できます。
ただし、規模の利益を享受するためには、適切な市場戦略や効率的な運営が求められます。競争が激化する中で、規模の利益を維持するためには、常にコスト管理や技術革新を行う必要があります。
合従連衡が続くタイヤ業界
合従連衡の最近の事例
タイヤ業界における合従連衡の動きは、今後も続くと予想されます。住友ゴムのダンロップ欧米事業の買収は、その一例として注目されていますが、過去5年以内にもいくつかの重要な買収やM&A、合併の事例が存在します。
まず、2021年にグッドイヤーがアメリカのタイヤメーカーである「モンスタートラック」を買収しました。この買収は、モンスタートラックの特異な市場セグメントにおけるシェアを拡大し、グッドイヤーのブランド力を強化する狙いがありました。具体的な金額は公表されていませんが、業界内での影響力を考慮すると、かなりの額であったと推測されます。
次に、2020年には、フランスのタイヤメーカーであるミシュランが、アメリカのタイヤリサイクル企業「レボリューション・リサイクル」を買収しました。この買収は、ミシュランが持続可能な製品開発を進める中で、リサイクル技術を強化するためのもので、買収金額は約1億ドルと報じられています。これにより、ミシュランは環境配慮型製品の開発を加速させることができるようになりました。
さらに、2019年には、韓国のハンコックタイヤが、アメリカのタイヤメーカー「アメリカン・タイヤ・ディストリビューター」を買収しました。この買収は、ハンコックタイヤの北米市場でのプレゼンスを強化するためのもので、買収金額は約3億ドルとされています。この動きは、ハンコックタイヤがグローバルな競争力を高めるための重要なステップとなりました。
これらの事例からもわかるように、タイヤ業界では企業間の合従連衡が進んでおり、競争が激化しています。企業は規模の経済を追求し、効率的な運営を目指す中で、提携や買収を進める傾向が強まっています。住友ゴムのダンロップ買収もその流れの一環であり、今後も業界全体でのM&Aや合併が続くことが予想されます。これにより、ブランド強化や市場シェアの拡大、技術革新が加速し、タイヤ業界はますますダイナミックな変化を遂げていくでしょう。
合従連衡の流れが加速
住友ゴム工業によるダンロップの買収は、今後のタイヤ業界における合従連衡を促進する可能性があります。この買収により、住友ゴムはグローバルなブランド力を強化し、特に欧米市場での競争力を高めることが期待されます。これにより、他のタイヤメーカーも市場シェアを維持または拡大するために、合併や買収を検討する動機が高まるでしょう。
また、業界全体が高付加価値商品や新技術の開発に注力する中で、競争が激化することが予想されます。このような環境では、規模の経済を追求するために企業同士の統合が進む可能性があります。さらに、グッドイヤーが事業再構築を進めていることも、他の企業に影響を与え、業界内での再編成を促す要因となるでしょう。
このように、住友ゴムの買収は単なる企業戦略にとどまらず、業界全体の動向に影響を与え、合従連衡の流れを加速させる要因となると考えられます。
※文中の図表・写真及びコメントの一部は日本経済新聞より転載しました。
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