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時代を超えて続く、鬼と人の壮大な物語『鬼人幻燈抄』。その旅路はついに明治の世へとたどり着きました。江戸での数々の出会いと別れを経て、主人公・甚夜は新たな地・京都で静かな日々を送っているかのように見えました。しかし、彼の周りには常に鬼の影が付きまといます。
第22話「二人静」は、甚夜がおふうと別れ、京都を舞台に、新たな出会いと、来るべき宿命の対決を予感させる嵐の前の静けさと激しさが同居した回でした。
「もし、時代が違えば。もし、出会い方が違えば。違う結論になったであろう二人の別れ」この言葉が、私の胸を締め付けます。
今回は、明治編の幕開けを飾る重要な登場人物、そして物語に散りばめられた謎について、いつもより少しだけ私の感情を乗せて、深く、熱く語っていきたいと思います。作画への愛あるツッコミから、物語の核心に迫る考察まで、この世界の魅力を余すところなくお伝えします。あなたもきっと、この幻燈の奥深さに、再び心を奪われるはずです。
第22話「二人静」あらすじ~静かな京都に潜む鬼の影
物語の歯車が、また静かに、そして確実な音を立てて回り始めました。江戸の喧騒を離れ、甚夜が選んだ次なる地は、古都・京都。そこでの穏やかな日常と、忍び寄る不穏な影を、まずは振り返ってみましょう。
明治の京都、父娘の穏やかな日常
時は明治五年(1872年)、四月。文明開化の波が押し寄せる京都・三条通で、甚夜は蕎麦屋「鬼そば」を営んでいました。かつて江戸で出会ったおふうの「鬼の夫婦が営む蕎麦屋、面白いと思いませんか?」という言葉が、こんな形で実現するとは…。もちろん、隣にいるのはおふうではなく、九つになった娘の野茉莉です。


夕凪から託された赤子が、こんなにも愛らしく成長した姿には、思わず胸が熱くなります。寝たふりをして「父さま」に起こされるのを待つ野茉莉の姿は、長い時を孤独に生きてきた甚夜にとって、何物にも代えがたい宝物なのでしょう。この穏やかな光景が、この物語においてどれほど貴重で、そして儚いものであるかを、私たちは知っています。
しかし、この「魔都」京都では、夜ごと鬼が練り歩きます。ある夜、甚夜は鬼に囲まれる少女を助けます。名を「向日葵」というその少女は、八つとは思えぬほど礼儀正しく、大人びた口調で話す不思議な子でした。この出会いが、新たな悲劇の序章であることを、この時の甚夜はまだ知りません。

謎の依頼者「兼臣」と五条大橋の鬼「地縛」
甚夜とすっかり馴染みとなった“付喪神使い”の三代目・秋津染吾郎も、たびたび店を訪れます。弟子らしき少年を連れた彼は、今宵、一人の客人を甚夜に引き合わせました。

現れたのは、十代後半ほどの凛とした娘。彼女は自らを「兼臣(かねおみ)」と名乗り、その腰には、かつて畠山康秀が振るい、甚夜の記憶にも深く刻まれた妖刀「夜兎の守兼臣」が下げられていました。

彼女の依頼は、五条大橋に夜ごと現れるという鬼「地縛(じしばり)」を捕らえること。「大切なものを奪われたので、取り返したい」と語る彼女の瞳には、強い意志と、どこか物悲しい光が宿っていました。依頼料として提示されたのは60円。この金額が意味する彼女の本気度については、後ほど詳しく解説しますが、これが尋常ならざる依頼であることを物語っています。
そして、兼臣は衝撃的な事実を口にします。
「件の鬼は、私と瓜二つなのです」
一体、どういうことなのでしょうか。彼女と鬼の関係、そして妖刀に秘められた謎が、物語の新たな縦軸となって動き始めます。
二人静の舞、現れる二人の鬼
五条大橋へ向かう道すがら、兼臣は甚夜に「二人静」を知っているかと問いかけます。山野に咲く白い花の名であり、世阿弥が作った謡曲の演目でもある、その名を。
そして、橋の上で対峙した鬼「地縛」は、まさしく兼臣と瓜二つの姿をしていました。「マガツメ様の命により、人を狩っております」と語る地縛。マガツメ…その名に、私たちの心はざわつきます。
戦いは当初、甚夜が優勢でした。しかし、その均衡は、一人の少女の登場によって崩れ去ります。
「こんばんは、おじさま」
そこに立っていたのは、先日助けたはずの向日葵でした。彼女は地縛を「妹」と呼び、驚くべき言葉を続けます。
「さすがですね。まさか妹がここまで追い詰められるなんて」

八つの少女の妹が、十代後半に見える鬼。そして、彼女たちの母の名は「マガツメ」。点と点が繋がり、恐るべき線が姿を現します。向日葵の助言で戦況は一変し、地縛の操る見えざる鎖が甚夜を縛り付けます。
「退きましょう。あなたはまだお母様の命を果たしていない」
そう言って撤退していく向日葵と地縛。戦いは痛み分けに終わりますが、甚夜の心には、新たな敵の出現と、その背後にいるであろう宿敵・鈴音の影が、重くのしかかったことでしょう。物語は、否応なくクライマックスへと加速していきます。

作画と演出に寄せて~光と影が織りなす危うい美
物語の感想に入る前に、どうしても触れておきたいことがあります。それは今回、特に印象的だった「作画」と「演出」についてです。光と影、その両極端な表現が、私の心を強く揺さぶりました。
公式サイトの刷新に心を奪われる~穏やかな日常が告げる嵐の予兆
まず、アニメ公式サイトのトップページが、なんと明治編のビジュアルに変わっていることにお気づきでしょうか。これまでの仄暗いイメージとは一線を画す、柔らかな光に満ちた「鬼そば」の店先。穏やかに微笑み合う甚夜と野茉莉の姿は、一枚の美しい絵画のようです。

鬼人幻燈抄といえば、闇夜や血飛沫といった「陰」のイメージが強い作品です。だからこそ、この淡く優しい光に包まれた父娘の姿に、私は心を鷲掴みにされました。しかし、同時に、言いようのない不気味さを感じてしまうのは、私だけでしょうか?この幸せな光景が、これから訪れるであろう過酷な運命との残酷な対比になるのではないか。この穏やかさこそが、最大の嵐の予兆なのではないかと…。そう思うと、この美しい一枚絵が、ひどく切なく、そして恐ろしく見えてくるのです。
なぜ『鬼人幻燈抄』は「作画崩壊」と戦い続けるのか
光があれば、影もある。公式サイトの美しいビジュアルに感動した一方で、本編の作画、特に戦闘シーンには、正直に言って「うーん…」と唸ってしまう部分がありました。いわゆる「作画崩壊」と指摘されても仕方のないカットが散見されたのです。

地縛が操る鎖帷子の攻撃を受ける甚夜の動きの不自然さ、キャラクターの表情の違和感…。ABEMAのコメント欄も、その点を指摘する声で溢れていました。背景美術の美しさは相変わらず素晴らしいだけに、人物、特に動きの多いシーンでのクオリティの低下は残念でなりません。

アニメーション制作は、第1話の感想でも触れた横浜アニメーションラボです。過去には「ささ恋事件」と呼ばれる制作トラブルもあり、制作体制に不安を抱えるファンも少なくありません。『鬼人幻燈抄』も、その影響と無関係ではないのかもしれません。
しかし、不思議なことに、私はこの状況に怒りよりも「頑張れ!」という応援の気持ちが湧いてくるのです。この壮大な物語を、限られたリソースの中で何とか映像化しようと奮闘している制作陣の姿が目に浮かぶようです。背景美術や声優陣の熱演、そして物語そのものの魅力が、多少の作画の乱れを補って余りあるからかもしれません。物語は残りわずか。最後まで、この魂の旅路を走り抜いてほしい。心からそう願っています。

第22話 深掘り解説~散りばめられた謎と「二人静」が暗示するもの
さて、ここからは物語の核心に迫る考察の時間です。第22話には、今後の展開を読み解く上で非常に重要なキーワードや謎が、数多く散りばめられていました。一つひとつ、じっくりと紐解いていきましょう。
鬼たちの渇望「欲しい…足りない…」の正体
物語の冒頭、甚夜が斬り捨てた鬼たちがうめくように繰り返していた「欲しい…足りない…」という言葉。あなたはこの言葉に、何を感じましたか?

私は、これが明治という時代に生きる人々の、心の渇きそのものを象徴しているように思えてなりませんでした。江戸という古い時代が終わり、文明開化の名の下に新しい価値観が雪崩れ込んでくる。その変化の奔流の中で、多くの人々が拠り所を失い、心にぽっかりと穴を開けていたのではないでしょうか。失われたものへの執着、新しい時代への漠然とした不安、富や名声への渇望…。そうした人間の根源的な「欠落感」が鬼を生み、あるいは鬼を引き寄せる。「魔都」京都の闇の中で、鬼たちは人々の心の隙間を喰らっていたのかもしれません。
そして、最後に鬼が遺した「マガツメ…」という言葉。彼らはマガツメ(鈴音)によって生み出されたのか、あるいは彼女に仕えることで、その渇きを満たそうとしていたのか。いずれにせよ、鈴音がこの時代の“渇き”を利用し、勢力を拡大していることは間違いなさそうです。
兼臣が求める「大切なもの」と鬼「地縛」の謎
「大切なものを奪われた」。そう語り、瓜二つの鬼「地縛」を追う謎の娘・兼臣。彼女が取り戻したい「大切なもの」とは、一体何なのでしょうか。
最もシンプルに考えれば、それは家族や恋人といった、かつて鬼に奪われた人物のことかもしれません。しかし、鬼が自分と「瓜二つ」であるという事実が、事態をより複雑にしています。
ここで、いくつかの可能性を考えてみましょう。
一つは、地縛が兼臣から分離した存在であるという可能性。強いトラウマや願いによって、魂や能力の一部が切り離され、鬼として実体化したのかもしれません。その場合、「大切なもの」とは、兼臣自身の魂のかけらや、失われた過去の記憶そのものである可能性があります。
もう一つは、妖刀「夜兎の守兼臣」が関わっているという説です。この刀は持ち主の魂を喰らうとも言われる曰く付きの品。もしかしたら、地縛は妖刀が生み出した幻影、あるいは刀に宿る怨念が兼臣の姿を借りて現れた存在なのかもしれません。
いずれにせよ、兼臣と地縛は、単なる追う者と追われる者の関係ではないでしょう。彼女たちは、光と影、あるいは表裏一体の存在。地縛を討つことは、兼臣自身を傷つけることにも繋がりかねない。そんな危うい関係性が、この先の物語に深い緊張感をもたらすはずです。
花と謡曲、二つの「二人静」に込められた意味
今回のサブタイトルにもなっている「二人静」。この言葉が持つ二つの意味が、物語のテーマを深く暗示しています。
花の「二人静」~寄り添う二つの魂
甚夜が語ったように、二人静はセンリョウ科の植物で、一本の茎から二本の花穂(かすい)が寄り添うように伸びる姿からその名が付けられました。その花言葉は「静かな愛」「寄り添うふたり」。

これは、まず第一に兼臣と地縛の関係を象徴していると考えられます。同じ姿を持ちながら、敵対する二つの存在。しかし、その根源は同じ場所にあるのかもしれません。また、よく似た花に、花穂が一本だけ付く「一人静」という植物があります。孤独(一人静)と共存(二人静)。この対比は、『鬼人幻燈抄』という物語全体を貫くテーマとも重なります。甚夜と鈴音、甚夜とおふう、そして甚夜と野茉莉…。様々な「二人」の関係性が、この物語を織りなしているのです。
謡曲の「二人静」~誰がために舞うのか
そして、もう一つが世阿弥作の謡曲「二人静」です。兼臣が語ったあらすじは、非常に示唆に富んでいます。

吉野山で菜を摘む女に、静御前の霊が憑依する。神職の前で舞を披露する女。しかし、舞の途中で静御前の幽霊そのものが女の背後に現れる。その時点で女への憑依は解けていたはず。なのに、女は舞い続けた。
兼臣は問います。「何が女を動かしていたのでしょうか」と。
あなたなら、どう答えますか?
私は、それは「想いの力」だったのだと思います。静御前の義経への強い想い、舞への情熱が、憑依が解けた後もなお、女を動かし続けたのではないでしょうか。あるいは、女自身が静御前の悲哀に深く共感し、その想いを継いで舞い続けたのかもしれません。
これは、物語の登場人物たちの行動原理そのものを指し示しているようです。甚夜は白雪への想いと鈴音への贖罪の念に突き動かされ、170年もの時を旅しています。兼臣もまた、自らの意志だけでなく、奪われた「大切なもの」への強い想いや、あるいは妖刀に宿る誰かの念によって、地縛を追うという宿命の舞を踊らされているのではないでしょうか。彼女たちを突き動かすものは、果たして本人の意志なのか、それとも抗えぬ宿命なのか。この問いかけこそが、「二人静」という演目に込められた本質であり、第22話の核心を突くテーマなのです。
なぜ鬼の名は「地縛」なのか?~土地に縛られる魂
五条大橋に現れる鬼の名は「地縛(じしばり)」。この名もまた、非常に意味深長です。
「地縛」と聞くと、私たちは特定の土地や場所に縛り付けられ、離れることのできない霊、すなわち「地縛霊」を思い浮かべます。地縛が五条大橋という特定の場所に出現するのは、その土地に強い念や因縁があるからに他なりません。

謡曲「二人静」のモチーフである静御前も、愛する源義経と別れた吉野山に強い想いを残していました。五条大橋といえば、義経と弁慶の出会いの場所としても有名です。もしかしたら地縛は、この橋にまつわる誰かの悲恋や無念の想いが、長い時を経て鬼として形を成したものなのかもしれません。兼臣と瓜二つであることから、彼女の一族が過去にこの場所で何らかの悲劇に見舞われた可能性も考えられます。
鬼は、人の想いから生まれる。その想いが土地に深く結びついた時、「地縛」という名の鬼が生まれる。これは、この作品における鬼の発生原理の一つを示す、重要なヒントと言えるでしょう。
明治五年の60円、その価値と兼臣の本気度
物語の中で、兼臣は依頼料として「60円」を提示しました。些細な情報に見えますが、これも彼女の覚悟を示す重要な数字です。
明治初期の貨幣価値を現代に換算するのは非常に難しいですが、一般的に当時の1円は、現在の約2万円ほどの価値があったと言われています。とすると、60円は…なんと約120万円にもなります。
一個人が鬼退治の依頼に、ポンと出せる金額ではありません。これは、兼臣が相応の資産を持つ家の者であること、そして何よりも、この依頼にそれだけの価値を見出し、すべてを懸けていることの証明です。彼女の「大切なもの」を取り戻すという願いが、どれほど切実なものであるか。この60円という金額が、雄弁に物語っています。
総括と次回への期待~母と娘、そして新たな出会いの行方
静かな京都を舞台に、物語は大きく動き始めました。新たな登場人物たちの思惑が交錯し、宿敵・鈴音の影が色濃く見えてきた今、私たちの期待は最高潮に達しています。

兼臣は敵か味方か?甚夜との新たな関係
鬼そばに住み込み、仇討ちの機会を窺うという兼臣。明らかに不服そうな野茉莉の表情と、それを意に介さず微笑む兼臣の姿は、束の間のコメディリリーフとして、私たちの心を和ませてくれました。

今後、彼女は甚夜とどのような関係を築いていくのでしょうか。同じく鬼を追う者として、利害が一致すれば強力な共闘関係を結ぶことになるかもしれません。あるいは、長い時を生きる甚夜の孤独に、彼女が新たな光をもたらす存在となる可能性も…。歴史とミステリー、そしてクールな大人の関係性を愛する私たちにとって、二人の間に漂う緊張感と、まだ見ぬ絆の行方は、見逃せないポイントです。甚夜、野茉莉、そして兼臣。この奇妙な共同生活が、彼らの心にどんな変化をもたらすのか、温かく見守りたいですね。

鈴音の次なる一手と「遠目の鬼」の能力

そして、ラストシーン。私たちの背筋を凍らせた、あの光景。
遠くから「鬼そば」の様子を伺う向日葵。彼女が使っていたのは、間違いなく「遠目の鬼」の能力でした。これは、かつて葛野編にも登場した、遠く離れた場所や未来を見通す鬼の力です。

向日葵の肩に置かれた、爪を赤く染めた女の手。そして、その主は…やはり、鈴音でした。向日葵と地縛は、鈴音が生み出した「娘」たちだったのです。向日葵の「私、なんだか悔しいです。お母さま」という言葉は、甚夜と野茉莉の親密な様子への嫉妬でしょうか。あるいは、母である鈴音の愛情を独占したいという、娘としての純粋な願いなのでしょうか。

鈴音は、かつて自らが関わった鬼の能力を取り込み、さらに強大な力を得ているのかもしれません。母と娘という歪んだ絆を武器に、彼女は次に何を仕掛けてくるのか。
野茉莉が狙われることは、想像に難くありません。甚夜にとって最も大切な存在であり、彼の心を乱す最大の弱点だからです。170年前、白雪を守れなかった後悔に今も苛まれる甚夜。鈴音はその古傷を抉るように、野茉莉という「守るべきもの」を再び彼の前から奪い去ろうとするのでしょうか。ああ、想像するだけで胸が締め付けられます。この穏やかな日常が、彼女たちの手によって無残に壊されてしまう未来だけは、見たくありません。

全24話で描かれる終着点~物語はどこへ向かうのか
ここで一つ、皆さんと共有しておきたい情報があります。このアニメ『鬼人幻燈抄』は、全24話で構成されることが発表されています。つまり、この明治編を経て、物語は一つのクライマックスを迎えるということです。
しかし、本当にあと2話で、この壮大な物語は収束するのでしょうか?
鈴音の娘たち、謎の依頼者・兼臣、妖刀の行方、そして何より170年にわたる甚夜と鈴音の因縁…。あまりにも多くの謎と伏線が張り巡らされています。これを残り時間でどう畳むというのか。正直、私の頭の中は期待と不安でいっぱいです。
考えられるとすれば、この京都での戦いが、甚夜と鈴音の永きにわたる戦いの、一つの大きな区切りとなるのかもしれません。全てが解決するわけではなくとも、二人の関係性や、甚夜が刀を振るう意味について、一つの答えが示されるのではないでしょうか。
そして、野茉莉や兼臣といった新しい世代の存在が、この物語の結末に大きな役割を果たすはずです。彼らは、過去の因縁に縛られた大人たちを解放する、未来への希望となるのかもしれません。甚夜の旅は、ここで終わりを迎えるのか。それとも、また新たな時代へと続いていくのか…。私たちは、この壮大な大河ファンタジーの行く末を、固唾をのんで見守るしかありません。
タイトル回収~すれ違う「二人」の願い
最後に、今回のタイトル「二人静」について、もう一度深く考えてみたいと思います。この言葉は、ただ単に作中に登場したキーワードというだけでなく、この『鬼人幻燈抄』という物語そのものを貫く、哀しくも美しいテーマを象徴しているように、私には思えるのです。
「もし、時代が違えば。もし、出会い方が違えば。違う結論になったであろう二人の別れ」
この言葉が、私の胸を締め付けます。
それは、まず何よりも、甚夜と鈴音という兄妹のことでしょう。もし、鈴音が鬼の子として生まれなければ。もし、あの葛野の村に悲劇が起きなければ。二人はきっと、寄り添うように咲く「二人静」の花のように、穏やかな日々を送っていたはずです。鬼と鬼狩りとして対峙する宿命を背負った二人の姿は、あまりにも哀しいすれ違いの果てにあります。
江戸で出会った、甚夜とおふうの関係もまた、切ない「二人」の物語でした。互いに惹かれ合いながらも、人と鬼という、決して交わることのない時間の流れが二人を隔てました。「鬼の夫婦が営む蕎麦屋」という彼女の夢は、違う形で、しかし確かに甚夜の中に生き続けています。これもまた、叶うことのなかった、もう一つの「二人静」の姿です。
そして、かつて甚夜と死闘を繰り広げた畠山康秀。彼もまた、己の正義と信念のために刀を振るいました。立場こそ違えど、互いの魂の奥底で何か通じ合うものを感じていたのではないでしょうか。もし違う形で出会っていたら、彼らは無二の友になれたかもしれない。そう思うと、彼らの別れもまた、運命に引き裂かれた「二人」の悲劇と言えるでしょう。
今回の物語の中心にいる、兼臣と地縛もそうです。瓜二つの姿を持ちながら、一方は鬼を追い、一方は鬼として存在する。彼女たちの魂は、元は一つだったのかもしれません。引き裂かれ、敵対し合うことを強いられた、悲運の「二人」。
この物語は、こうした無数の「すれ違う二人」の物語で織りなされています。出会いと別れを繰り返し、その度に喪失と後悔を心に刻みながら、それでも甚夜は歩み続けます。彼の旅路は、叶わなかった願いや、救えなかった命への贖罪の旅なのです。
だからこそ、私たちはこの物語に心を揺さぶられるのかもしれません。誰の人生にも、あの時こうしていれば、という後悔や、選びたくても選べなかった道があるはずです。甚夜の背負う重荷に、私たちは自身の人生の哀しみを、そっと重ね合わせているのではないでしょうか。
さて、次回、物語はいよいよクライマックスへと向かいます。母の歪んだ愛を背負う娘たちと、父の愛を一身に受ける娘。そして、その間で翻弄される甚夜と兼臣。彼らの願いは、どこへたどり着くのでしょうか。
この幻燈の果てに待つ光景を、あなたと共に見届けられることを、心から楽しみにしています。
今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
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👉使用した画像および一部の記述はアニメ公式サイトから転用しました。
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