「九龍ジェネリックロマンス」7話解説～令子は「見えない存在」!?

はじめに：揺らぐ現実、加速する謎―第7話が突きつける「存在」の問い

ノスタルジックな九龍城砦を舞台に、切なくもミステリアスな恋模様が描かれる『九龍ジェネリックロマンス』。20アニメ第7話は、これまでの伏線が一気に回収され始めると同時に、新たな衝撃の事実が提示される、まさに神回と言える内容でした。特に、鯨井令子（A）の存在の謎や、九龍という街の驚くべき秘密が明かされ、多くの視聴者が息をのんだことでしょう。「とにかくわかりにくい回でもあった」という声も聞かれるほど、情報量が多く複雑な第7話。この記事では、その難解な物語を丁寧に紐解き、登場人物たちの「本物」と「ジェネリック（ジルコニアン）」としての側面、そして彼らの関係性がどのように変化していくのかを、深く考察していきます。

登場人物：九龍城砦で生きる個性豊かな人々

物語の解説に入る前に登場人物の紹介をします。ここを把握できていないとストーリー展開が判りませんからね。

鯨井令子（くじらい れいこ）/ CV: 白石晴香

本作の主人公。32歳の女性で、九龍城砦にある不動産会社「旺来地產公司」に勤務しています。スイカとタバコを愛し、先輩である工藤に恋心を抱いています。 物腰が柔らかく穏やかな性格。過去の記憶がなく、九龍の謎を追う中で自身のアイデンティティに疑問を抱き始めます。

今まで興味が無かったレモンチキンなど新しいものに興味を持つようになり、クローンというには特異な存在であることも示唆されていま。物語が進むにつれて、自分が「人によっては目に見えない存在」だと知り苦悩します。 工藤との関係は「共依存」に近く、工藤に一方的に想いを寄せているように見えます。しかし、自分が存在する理由を知りたいと第二九龍の謎について探り始めます。

工藤発（くどう はじめ）/ CV: 杉田智和

34歳の「旺来地產公司」に勤務する男性。8を見かけると触ってしまう癖があります。九龍を愛し、その文化や食に詳しい。かつて令子と瓜二つの婚約者（鯨井B）がいました。 一見ぶっきらぼうだが、面倒見が良い一面も。 鯨井Bへの未練があり、令子との違いに戸惑います。

物語の核心に迫る重要な鍵を握っており、彼の過去と現在の交錯が、物語を大きく動かしていきます。8という数字に異様なこだわりを持ち、街中で8を見つけると指で触れてしまう癖があります。この癖の背景には、九龍に潜む時間や記憶に関連する重要な伏線があると考えられています。過去の出来事から心を閉ざしており、令子に心を許せずにいることが、2人の関係を複雑にしています。

蛇沼みゆき（へびぬま みゆき）/ CV: 置鮎龍太郎

彼は蛇沼製薬の社長であり、蛇沼美容メディカル中心の院長も務めています。また、半陰陽であり、男性を愛する人物で、蛇沼製薬の先代社長の庶子でもあります。蛇沼みゆきは物語において、クローン人間の研究を秘密裏に進めており、主人公である鯨井令子に強い関心を持つという、謎めいた存在として描かれています。

蛇沼みゆきの主な目的は、実の父親である蛇沼家当主への復讐です。蛇沼の父親は、亡くなった息子をクローン技術で蘇らせようとしていますが、蛇沼はそのクローンに記憶を与えずに父親に与えることで、絶望させようと計画しています。蛇沼はクローンやジルコニアンと呼ばれる存在の研究に関わっており、令子が特異なジェネリック存在であることにも気づいています。

タオ・グエン / CV: 坂泰斗

「金魚茶館」の元ウェイター。優しく控えめな性格で、温和で聞き上手な青年として描かれています。物語の観察者としての役割も担っており、静かな存在感を放っています。多くを語らないものの、その佇まいからは物語の深層に関わる何かを知っているような雰囲気が漂います。実際に、令子の過去（鯨井B）を知る数少ない人物の一人です。

蛇沼みゆきの元恋人でもあり、「みゆきちゃん」と呼ぶなど、関係解消後も気にかけている様子が描かれています。物語の鍵を握る重要人物とされ、九龍の街やクローン（ジルコニアン）に関する秘密に関与していると考えられています。彼自身も現在の九龍に違和感を抱いており、「後悔」を持つことで幻影の九龍を認識できる人物の一人とされています。

楊明（ヤンメイ）/ CV: 古賀葵

令子の友人で、最近九龍に引っ越してきました。ミシンを使ってぬいぐるみなどを作る縫製業で生計を立てています。令子のことを「レコぽん」と呼ぶ気さくな女の子。本名はヤンミン。国民的女優・楊麗の娘ですが、全身の整形手術で過去を捨て、九龍城砦で暮らしています。

レモンチキンに目を輝かせるなど、食への関心が高いという設定になっています。物語が進むにつれ、グエンの忠告を受け、自分の人生の意味について考え始めます。そして、「自分の人生を生きたい」という決意から九龍を去ることを告げます。

小黒（シャオヘイ）/ CV: 鈴代紗弓

九龍の南燈街に住むフリーターの女性です。ロリータファッションを好み、アルバイト代を洋服につぎ込んでいます。靴屋や映画館など様々な場所でアルバイトをしており、鯨井令子や工藤発と頻繁に出会います。鯨井や工藤の友人でもあります。「〜ネ」という片言のような口調が特徴です。ロリータファッションを好み、アルバイト代を洋服につぎ込んでいます。特徴的な「〜ネ」という片言口調で話します。

小黒は、靴屋や映画館など、さまざまな場所でアルバイトをしており、主人公の鯨井令子や工藤発と頻繁に出会います。鯨井や工藤の友人でもあります。

ユウロン / CV: 河西健吾

蛇沼みゆきと行動を共にし、九龍の謎を調べている研究者のような立ち位置の人物です。関西弁を話し、飄々とした態度をとりますが、冷静な観察眼と優れた状況判断能力を持っています。ミステリアスな雰囲気を持ち、憎めない一方で怪しさも感じさせるキャラクターです。

彼の特異な点は、九龍を見ることができず、中に入ることもできないことです。しかし、九龍が見える条件が「後悔」であることを突き止めています。物語の中では、グエンに九龍の飲食物を摂取しないよう助言したり、小黒に鯨井A（過去に存在した令子にそっくりな女性）を殺すよう依頼したり、楊明に第二九龍のチョコレートを渡すといった行動を見せます。また、理由は不明ですが、鯨井令子を排除しようとしている描写もあります。

ユウロンは物語の中盤以降に登場する重要キャラクターであり、物語の「裏」を知る者として多くの謎を示唆する存在です。第二九龍と「後悔」の関係を知るなど、その情報量と洞察力は他のキャラクターとは一線を画しています。

鯨井B（くじらい ビー）

鯨井B（くじらいビー）は、主人公である鯨井令子（くじらい れいこ）のオリジナルとされる女性です。彼女は物語開始の3年前に他界しており、クールな性格でスイカとタバコが好きだったとされています。工藤からは「令子」、グエンからは「令子さん」と呼ばれていました。

第7話「後発的ロマンス」怒涛のあらすじプレイバック

第7話は、冒頭から重要な会話が展開され、ラストには衝撃の真実が待ち受けていました。まずは、その目まぐるしい物語の流れを振り返ってみましょう。

プロポーズと不穏な影：過去の工藤とグエン

物語は、工藤発がタオ・グエンに、鯨井令子（B）へのプロポーズを考えていると打ち明ける場面から始まります。洋風居酒屋のテラスのような場所で、工藤は「本当はもう少し先の予定だったんだけどよう。九龍もなくなるっうし、人生の節目って感じだろ」と語ります。しかし、グエンは「なるほど、工藤さんって令子さんのことちゃんと知ってるんですか？」と意味深な問いを投げかけます。この「令子さん」は、現在の鯨井令子（A）ではなく、鯨井Bを指していることが後の会話で明らかになります。工藤は「あいつの好きな九龍はもうこの夏しかないんだ。これ以上の最高を望まない彼女にもっと最高の九龍をプレゼントしたい。だから、どうしてもプロポーズしたい」と、鯨井Bへの強い想いを語ります。この会話から、この時点での工藤とグエンは「オリジナル」であり、まだ鯨井Aとは出会っていない、過去の時間軸の出来事であることが示唆されます。

西安楼爆破事故と再会：オリジナル同士の絆と九龍の異変

場面は変わり、第6話のラストで発生した西安楼（さいあんろう）の爆破事故現場。工藤はそこでグエンと再会します。グエンは工藤に「本人ですよね」と確認し、工藤が「ああ」と答えると安堵したように抱きつきます。互いに「オリジナル」であることを確認し合う二人。工藤は過去に黙っていなくなったことを詫び、グエンは久しぶりに九龍へ戻ってきた様子。しかし、グエンが「こんなとこ早く出ましょう」と促すのに対し、工藤は「いや、俺は行かない」と拒否します。グエンは「それは鯨井令子がいるからですか。彼女は麗子さんとは別人です」と、工藤が今一緒にいるのが鯨井Aであることを指摘します。この会話は、冒頭のプロポーズの会話よりも後の時間軸、つまり工藤が鯨井Aと出会った後の出来事であることが分かります。

グエンは「大切な人がここにいるから」戻ってきたと言い、それが蛇沼みゆきのことであると示唆します。しかし、「フラれちゃったんですけど」とも。工藤は「俺みたいにならねえようにここにいるってわけか」と意味深な言葉を口にし、「ありがとうな。でも俺はここから出られない」と答えます。グエンは「ここの鯨井令子だけじゃない、ここの九龍だって別物だ」と訴え、工藤を連れ出そうとしますが、工藤の決意は固いようです。

蛇沼みゆきの苦悩とグエンとの出会い：九龍の呪縛と「絶対の自分」

場面は、蛇沼みゆきが汪診療所の前でユウロンに電話をしているシーンへ。第二九龍塞城にも第二の汪先生がいるかもしれないと語ります。電話の中でユウロンは、みゆきが元カレ（グエン）に九龍出身であることを隠していたと指摘。このことから、蛇沼みゆきは九龍の人間であり、ジルコニアンである可能性が浮上します。直後、みゆきは「意識しすぎている、九龍を」と言って気を失ってしまいます。
次に、みゆきがバーのカウンターに座っている場面。テレビでは蛇沼グループが指揮した第二九龍塞城の解体が本日終了したというニュースが流れています。そこへグエンが現れ、二人は初めて出会います。グエンはみゆきに一目惚れし、その夜を共に過ごします。事が済んだ後、みゆきは自身が女性器も男性器も持つことについてどう思ったか尋ねますが、グエンは「君が女性の姿をしていたら声をかけなかった」と答えます。みゆきは「男なのか女なのか知りたがらないのは彼が初めてだな」と独白し、男にも女にもなれない自分にコンプレックスを感じ、「絶対の自分」になろうとしていたことが明かされます。この「絶対の自分」というテーマは、楊明や鯨井Aも追求している、本作の重要なキーワードです。

令子と蛇沼の対峙：「私は鯨井Bとは違う」「あなたは後発的ジェネリック」

気を失っていたみゆきが目を覚ますと、そこはショーダンスクラブ「クラブ花園」の楽屋でした。通路で倒れていたところを助けられたようです。みゆきは踊り子に「スーハンという踊り子を知っているか？半分日本人の血が流れている」と尋ねますが、「聞いたことないね」と返されます。昨日の西安楼崩壊事故の影響で停電となる中、不動産屋の仕事でやってきた鯨井令子（A）と鉢合わせします。
後日、二人は「蛇沼総合Medical中心」で再会。令子Aは「ジルコニアンって何ですか？私はジルコニアンなんですか？だからあなたは私に会いに来たんですか？」と問い詰めますが、みゆきは「記憶はないままですか？」と聞き返します。令子Aは「私は鯨井Bと別の人間だからそもそも記憶自体が存在しない」「疑問に思うことはいろいろあるが『絶対の私になる』と決めたから」と毅然と答えます。

みゆきは、工藤がオリジナル（の鯨井令子）を知っていることから、工藤もオリジナルであると推測。そして、目の前の令子Aはオリジナルではないと考えます。「死んだ恋人とそっくりだが別人である鯨井令子Aと共に暮らしている工藤、それはまさに俺がやろうとしているあの男（父）への復讐そのもの」と、みゆきは自身の歪んだ計画を垣間見せます。
そして、みゆきは令子Aに対し、「あなたはジルコニアンか否か、答えはNOです。かといってクローンでもなく、私たちも何と表現したらいいかわからない。あなたは後発的ジェネリックな存在だ」と告げるのでした。

明かされる鯨井Bの死の真相：汪医師のカルテが示すもの

場面は汪医師の診療所へ。ユウロンが鯨井令子のカルテを盗み見ています。そこへ汪医師が現れ、カルテが書かれた時、つまり鯨井Bが運び込まれた時には、彼女は自死で既に死亡していたという衝撃の事実が明かされます。

揺れる心と新たな一歩：令子の決意と楊明との香港行き

8月30日14時、崩落現場に佇む工藤は鯨井Bを偲んでいます。麻雀牌の「發」のキーホルダーを眺めながら、「いっそ、いかさまだったら良かったのにな」と呟きます。この日が彼女の命日のようです。
一方、令子Aは楊明に部屋を出ていくことを告げます。楊明もそれに賛成。「後発的なら鯨井令子Bと似ていても別の人間だということでしょ。それなら出て行っても私は私と堂々と言えるし、彼女の人生を私が必要以上に背負うことはないかな」と語る令子A。しかしその夜、工藤が令子Aの部屋を訪れ、「今日が開けたら命日なんだ」と告げます。
翌日、令子Aは引っ越しを辞めたと楊明に伝えます。楊明はがっかりしますが、せめてカーテンを変えようと、二人で香港に生地を探しに行くことで盛り上がります。ここでエンディングテーマが、mekakusheの「恋のレトロニム」から「わたしだけのポラリス」に変更されます。

衝撃のラストシーン：九龍は廃墟？令子は「見えない」存在なのか？

令子と楊明が九龍塞城からまさに出ようとする瞬間。先に外に出た楊明は何か違和感を覚えて立ち止まります。続いて出ようとした令子Aの腕を、突如現れたグエンが掴み、「何してる！」と大声で制止します。「何って、香港に買い物に…」と言いかける令子A。そこへピザのデリバリー配達員がやってきます。

配達員は楊明に「ご注文された方ですか？」と尋ねますが、グエンが九龍の中から「おーい、こっちこっち」と呼び寄せ、ピザを受け取ります。配達員は「良かったっす。悪戯じゃなくって。うちくらいですよ、こんながれきの廃墟でも受け付けるのは」と言い放ちます。グエンは「持ってきてくれるとは思わなかったよ」と、ここが廃墟であることを認識している様子。
楊明と令子Aは配達員の言葉に困惑しますが、さらに驚愕の事実が判明します。配達員には、令子Aの姿も声も認識できていないのです。

グエンは「見えてないのさ。この九龍もあんた（令子A）のことも、彼には見えていない」と告げます。「この九龍の正式名称は第二九龍塞城、3年前に取り壊されている。検索してみな」と。スマホで検索した楊明は、グエンの言葉が真実であることを知ります。

令子Aは「さっきの人、はっきりとここを廃墟だって言っていたし、私のことが本当に見えてないみたいだった。どちらもまるで、存在していないみたいに」と愕然とします。
グエンは令子Aに「ここの九龍は見える人と見えない人がいるんだよ。俺と楊明ちゃんは見える方、あのピザ屋は見えない方。あんたはこの九龍と同じようなもの。人によっては目に映らない、存在しない存在。多分あんたはここの九龍でしか存在できない。だから出ない方がいい」と残酷な現実を突きつけます。令子Aの脳裏には、第6話で工藤が「どこへも行くな、ずっとそばに居ろ」と強く言った場面が蘇るのでした。

第7話徹底考察：7つの疑問に迫る

第7話で提示された情報とこれまでの伏線を元に、特に重要と思われる7つの疑問について深く考察していきます。

【疑問1】工藤のプロポーズと「あいつの好きな九龍はもうこの夏しかない」の真意は？

冒頭の工藤とグエンの会話は、過去の出来事であり、工藤が鯨井Bにプロポーズしようとしていた場面です。工藤の「あいつの好きな九龍はもうこの夏しかないんだ。これ以上の最高を望まない彼女にもっと最高の九龍をプレゼントしたい」という言葉には、いくつかの解釈が可能です。

• 九龍の取り壊しと鯨井Bの心情: 当時、九龍城砦の取り壊し計画が進行しており（史実では1993年3月着手、1994年4月完了）、鯨井Bが愛する九龍が失われることへの不安や諦念を工藤は感じ取っていたのかもしれません。彼女が「これ以上の最高を望まない」というのは、失われる九龍と共に、自身の幸せも終わってしまうという諦観の表れだった可能性があります。工藤は、そんな彼女に「もっと最高の九龍（＝プロポーズによる未来の約束）」をプレゼントすることで、彼女を繋ぎ止めようとしたのではないでしょうか。
• 「夏」というキーワード: 「夏」は本作において繰り返し登場するモチーフであり、過去の美しい記憶や、儚く過ぎ去る時間を象徴していると考えられます。鯨井Bにとっての「最後の夏」に、工藤は永遠を誓いたかったのかもしれません。
• 工藤の後悔の伏線: 結果的に鯨井Bは自死を選んでしまいます。このプロポーズが、彼女を救えなかった、あるいは逆に追い詰めてしまったのではないかという工藤の後悔に繋がっている可能性があります。

このプロポーズの場面は、工藤の鯨井Bへの深い愛情と、その後の悲劇を予感させる重要なシーンと言えるでしょう。

【疑問2】爆破現場での工藤とグエン、なぜ「本人」だと確認できたのか？工藤が黙っていなくなった理由とは？

西安楼の爆破現場で再会した工藤とグエンが、互いに「本人ですよね」「ああ」と確認し合う場面は、この世界における「本物」と「偽物（ジェネリック/ジルコニアン）」の存在を示唆しています。

• 「本人確認」の必要性: 九龍では、自分と同じ姿形をした「もう一人の自分」が存在しうるため、相手が「オリジナル」なのか、それとも「ジェネリック」なのかを確認する必要があるのでしょう。特に、久しぶりに再会したグエンにとっては重要な確認だったはずです。
• 確認方法: 具体的な確認方法は描かれていませんが、言葉遣いや態度、あるいは共有している記憶など、微細なニュアンスで判断しているのかもしれません。あるいは、彼らにしか分からない特殊なサインや感覚がある可能性も考えられます。
• 工藤が黙っていなくなった理由: 工藤が過去にグエンの前から黙っていなくなった理由は明示されていません。考えられる可能性としては、
  • 鯨井Bの死に関わる何らかの事情で、周囲との関係を断つ必要があった。
  • 九龍のシステムや蛇沼グループの陰謀に巻き込まれ、姿を消す必要があった。
  • 彼自身が「ジェネリック」な存在と入れ替わるような事態が発生した。
    この「黙っていなくなった」過去が、現在の工藤が九龍から出られない理由とも関連しているのかもしれません。

この再会シーンは、九龍の異常な日常と、登場人物たちが抱える存在の不確かさを改めて浮き彫りにしました。

【疑問3】「絶対の私」とは何か？作品のテーマ性を深掘り

「絶対の私」という言葉は、第6話で楊明が語り、第7話では令子Aや蛇沼みゆきも口にする重要なキーワードです。これは、本作の根幹をなすテーマの一つと考えられます。

• 自己存在の確立: 記憶がない令子A、過去のトラウマから逃れたい楊明、そして性別二元論に当てはまらない身体を持つ蛇沼みゆき。彼らはそれぞれ異なる形で自身のアイデンティティに問題を抱えており、「絶対の私」とは、他者や過去に規定されない、自分自身の本質を見つけ出し、確立したいという切実な願いの表れでしょう。
• 「ジェネリック」からの脱却: 令子Aが「私は鯨井Bとは別の人間」と宣言し、「絶対の私になる」と決意するのは、自分が単なる「代替品」ではないことを証明しようとする意志の表れです。たとえ出自が「ジェネリック」であっても、独自の経験や感情を積み重ねることで、「絶対の私」という「本物」の存在になり得るという可能性を示唆しています。
• 蛇沼みゆきの歪んだ探求: 蛇沼みゆきもまた「絶対の自分」を求めていますが、彼のそれは他者を顧みない歪んだ形での自己実現であり、令子Aや楊明のそれとは対照的です。彼の「復讐」もまた、歪んだ自己肯定の手段なのかもしれません。
• 工藤の葛藤: 蛇沼が令子Aに「あなたは工藤はじめに認めてもらえない限り『絶対の私』になれない。そうお考えなのでは」と指摘する場面は、令子Aの「絶対の私」が、工藤との関係性の中でどのように形成されていくのか、という問いを投げかけています。

「絶対の私」を求める旅は、登場人物たちが自身の存在意義を見出し、困難な現実に立ち向かっていくための原動力となるでしょう。

【疑問4】蛇沼みゆきの言う「スーハン」とは誰か？そして「後発的ジェネリック」とは？

蛇沼みゆきがクラブ花園で尋ねた「スーハン」という踊り子の名前は、これまで物語に登場していません。

• 「スーハン」の正体:
  • みゆきの母親？: 「半分日本人の血が流れている」という情報から、みゆきの母親である可能性が考えられます。もしそうであれば、みゆきは自身のルーツや母親に関する情報を探しているのかもしれません。これは彼の複雑な出自や、「お父様」との関係にも繋がる可能性があります。
  • 物語の新たなキーパーソン？: 全く新しい登場人物で、今後の物語に重要な役割を果たす可能性もあります。
• 「後発的ジェネリック」の定義:
  • ジェネリック医薬品とのアナロジー: 「ジェネリック」という言葉は、一般的に後発医薬品を指します。先発医薬品（オリジナル）の特許が切れた後に、同じ有効成分で作られる安価な薬です。これを人間に当てはめると、オリジナルの人間（鯨井B）が死亡した後に、何らかの形で「後から発生した」存在が令子Aである、と解釈できます。
  • クローンやジルコニアンとの違い: 蛇沼は令子Aを「ジルコニアンではない」と明確に否定しています。クローンとも異なる「後発的ジェネリック」という独自のカテゴリーが存在することを示唆しており、その生成方法や特性はまだ謎に包まれています。記憶を持たない点や、九龍の外では認識されない可能性などが、その特異性を示しているのかもしれません。

「スーハン」の謎と「後発的ジェネリック」という新たな概念は、物語のミステリーをさらに深める要素となるでしょう。

【疑問5】鯨井Bはなぜ自殺したのか？8月31日の事故との関連、工藤の「いかさまだったらよかった」の意味は？

第7話で鯨井Bの死因が「自死」であることが確定しましたが、その動機や背景にはまだ多くの謎が残されています。

• 自殺の動機:
  • 九龍への絶望: 鯨井Bは九龍を深く愛していましたが、その九龍が取り壊されることを知り、絶望した可能性があります。彼女にとって九龍は生きる意味そのものであり、それなしでは生きていけないと考えたのかもしれません。
  • 不眠症と精神状態: 元々不眠症を患っており、精神的に不安定だった可能性も指摘されています。九龍の取り壊しが引き金となり、追い詰められた結果、自ら命を絶ったのかもしれません。
  • 工藤との関係: 工藤からのプロポーズを受けた直後の死であり、そのことが何らかの影響を与えた可能性も否定できません。彼女は工藤との未来を望みながらも、何かを恐れて死を選んだのでしょうか。
• 8月31日の事故との関連: 鯨井Bの命日は8月31日であり、この日に何らかの「事故」があった可能性も示唆されています。大清楼の爆破事故や西安楼の崩壊事故と関連があるのか、あるいは全く別の出来事なのかは不明です。彼女の死が、これらの事故と何らかの形で結びついている可能性も考察の余地があります。
• 工藤の「いかさまだったらよかった」の意味: この言葉は、工藤が鯨井Bの死という厳しい現実を受け入れられず、それが何かの間違いや嘘であってほしいと願う気持ちの表れでしょう。あるいは、彼女の死が誰かの「いかさま」（＝策略や陰謀）によるものであってほしかった、つまり自殺という彼女自身の選択ではなかったと思いたい、という複雑な心情も含まれているのかもしれません。麻雀牌の「發」のキーホルダーは、彼女との思い出の品であり、運命や偶然性といったテーマも暗示している可能性があります。

鯨井Bの死の真相は、工藤のトラウマの根源であり、物語全体の大きな謎の一つです。

【疑問6】蛇沼みゆきはなぜグエンに「九龍のものを食べるな」と言ったのか？

グエンが「出来立ての食べ物を食べたいがみゆきちゃんが九龍のものを食べるなと言った」と呟く場面は、九龍の「食」に関する重要な伏線です。

• 九龍の食べ物の特異性:
  • 記憶への影響: 原作やWEB上の考察では、九龍の食べ物を摂取すると、外部の記憶が薄れたり、九龍の異常性に疑問を持たなくなったりする可能性が示唆されています。蛇沼は、グエンが「本物」の記憶や認識を保つために、九龍の食べ物を避けるよう忠告したのかもしれません。
  • 身体への影響: 九龍の食べ物が、ジルコニアンやジェネリックといった特殊な存在の身体に何らかの影響を与える可能性も考えられます。あるいは、外部の人間が摂取すると、九龍のシステムに取り込まれてしまう危険性があるのかもしれません。
  • 幻影としての食: 九龍自体が幻影であるならば、そこで提供される食べ物もまた実体がない、あるいは特殊な性質を持っている可能性があります。

この伏線は、九龍という世界の法則性や、そこに住む人々の存在様式を理解する上で重要な手がかりとなりそうです。

【疑問7】鯨井令子Aはなぜ九龍でしか存在できないのか？彼女の正体と鯨井Bとの関係は？

第7話のラストで提示された、令子Aが九龍の外では認識されないかもしれないという事実は、彼女の存在の根幹に関わる重大な問題です。

• 九龍への依存性:
  • ジェネリックテラの産物？: 九龍の上空に浮かぶジェネリックテラが、令子Aのような「後発的ジェネリック」な存在を生み出し、維持しているのかもしれません。九龍はその影響範囲であり、そこから出ると存在が維持できなくなる、あるいは認識されなくなる可能性があります。
  • 記憶の集合体？: 九龍が人々の記憶や想いによって形成された空間であるならば、令子Aもまた、誰か（おそらく工藤）の鯨井Bへの強い記憶や願望が具現化した存在である可能性があります。その場合、記憶の源泉である九龍を離れることは、自身の存在基盤を失うことを意味します。
• 鯨井Bとの関係:
  • オリジナルの死後に発生: 鯨井Bが死亡した後に令子Aが現れたことから、彼女は鯨井Bの「代替」あるいは「再生」として生まれた存在と考えられます。
  • 記憶の非継承: しかし、鯨井Bの記憶は一切継承しておらず、性格も異なります。これは、単純なクローンではないことを示しています。
  • 「後発的ジェネリック」の意味合い: この言葉が示すように、オリジナル（鯨井B）が存在した後に、何らかのプロセスを経て「後から」生まれた、オリジナルとは異なる特性を持つ「ジェネリック」な存在。それが令子Aの正体に近いのかもしれません。

令子Aの存在の謎は、九龍という世界の謎そのものと深く結びついており、今後の物語で徐々に解き明かされていくでしょう。工藤の「どこへも行くな」という言葉は、彼女のこの特異性を知っての発言だったのかもしれません。

エンディングテーマ変更に隠されたメッセージ：「わたしだけのポラリス」を考察

第7話からエンディングテーマがmekakusheの「恋のレトロニム」から「わたしだけのポラリス」に変更されました。この変更には、物語の進行と令子Aの心境の変化が反映されていると考えられます。

• 「恋のレトロニム」の意味: 「レトロニム」とは、新しいものが登場したために、古いものを区別するために後から付けられた名称のことです。これは、鯨井B（オリジナル）に対して、後から現れた令子A（ジェネリック）という関係性や、過去の恋（工藤と鯨井B）と現在の恋（工藤と令子A）の対比を象徴していたのかもしれません。
• 「わたしだけのポラリス」の意味: 「ポラリス」は北極星を指し、古来より旅人たちの道しるべとされてきました。変わらない位置で輝き続ける北極星は、「絶対的なもの」「確かな指針」の象徴でもあります。
  • 令子Aの「絶対の私」への探求: 記憶がなく、自身の存在に揺らぎを感じる令子Aが、「わたしだけのポラリス」つまり「絶対の私」という確固たる自己を見つけ出そうとする決意を表しているのではないでしょうか。
  • 工藤への想い: 令子Aにとって、工藤が心の支えであり、進むべき道を示す「ポラリス」のような存在になっているのかもしれません。
  • 歌詞の内容: 「わたしだけのポラリス」の歌詞には、不確かさの中で確かなものを見つけようとする意志や、自分自身の足で未来へ踏み出そうとする前向きなメッセージが込められていると推測されます。これは、第7話で「絶対の私として生きていく」と決意した令子Aの心境と強くリンクします。

エンディングテーマの変更は、物語が新たなフェーズに入り、令子Aの自己探求の物語が本格的に始まったことを示唆していると言えるでしょう。

まとめ：九龍の真実が暴かれ始める…愛と存在を巡る物語の行方

『九龍ジェネリックロマンス』第7話は、息つく暇もないほどの情報量と衝撃的な展開で、物語の核心に大きく迫りました。鯨井Bの死の真相、令子Aの「後発的ジェネリック」という存在定義、そして九龍が「見える者」と「見えない者」がいる廃墟であるという驚愕の事実。これらの要素が複雑に絡み合い、登場人物たちの運命を大きく揺さぶります。
「絶対の私」を求める令子Aの旅は、より困難なものとなることが予想されますが、同時に彼女自身の力で未来を切り開いていく希望も感じさせます。工藤、グエン、蛇沼、楊明といった主要キャラクターたちもまた、それぞれの過去や秘密を抱えながら、この歪んだ九龍という舞台で複雑に絡み合っていきます。
「本物」とは何か、「ジェネリック」であることの意味、そして「記憶」と「存在」の関係性。これらの深遠なテーマが、ノスタルジックで美しい映像と、切ない恋愛模様の中で描かれていく本作から、ますます目が離せません。

次回への期待

第7話で提示された衝撃の事実は、今後の物語にどのような影響を与えるのでしょうか。

• 令子Aは、自身が「見えない存在」である可能性にどう向き合うのか？
• 工藤は、令子Aを守り、共に九龍の謎を解き明かすことができるのか？
• グエンは、九龍の真実をどこまで知っているのか？彼の目的とは？
• 蛇沼みゆきの復讐計画と、ジェネテラ計画の全貌とは？
• そして、第二九龍塞城の秘密は完全に解き明かされるのか？

多くの謎が残る中、登場人物たちがどのような選択をし、どのような未来を紡いでいくのか。エンディングテーマ「わたしだけのポラリス」が示すように、彼らがそれぞれの「道しるべ」を見つけ出すことを願いつつ、次回の展開を心待ちにしたいと思います。

ベスト10（何とか）継続中！💦

あなたもクリックして応援してね💗

にほんブログ村

コミックスの紹介

実は今回のブログ記事作成のため、Amazonで全10巻セットを買いました。この作品はコミックスを読んでないと本当にわかんないと思います。僕も全力で解説していきます（全話解説するつもりです）が、作品に興味を持たれた方は是非コミックスを購入してください。これはセールスと負いう意味ではなく、僕の本心です。せっかくアニメを楽しむなら深い感動を得たいですよね。

コミックス

懐かしさと謎が交錯する九龍城砦を舞台に、記憶を巡るミステリーと大人の恋を描いた眉月じゅん先生の『九龍ジェネリックロマンス』。全10巻セットで、あの独特な世界観にどっぷり浸かってみませんか？

過去と未来が入り混じる場所で、ヒロイン・鯨井令子が見つける真実とは？ 彼女を取り巻く魅力的なキャラクターたち、繊細な絵柄、そして心に深く残るストーリー。一度読み始めたら、もう止まらない！

全巻セットには、コレクションBOXが付属。B6判サイズの単行本を美しく収納できる特典は、ファンならぜひ手に入れたいアイテムです. 2025年にはTVアニメと実写映画も公開予定！アニメを見る前に、原作の世界に触れてみませんか？ 今すぐ全巻セットを手に入れて、『九龍ジェネリックロマンス』の世界に飛び込もう。

なお、TVアニメ『九龍ジェネリックロマンス』および実写映画『九龍ジェネリックロマンス』のBlu-rayに関する情報について、現時点（2025年4月7日）で確定的な発売情報は確認されていません。

VODの紹介

2025年春アニメは深夜枠が多い（別に今回に限るわけではないけどね）のでVODで見るのがおすすめ。

僕が紹介するアニメは以下のVODで見れるので加入してない人はどれかに加入するといいですよ。

おすすめポイント

• U-NEXT: アニメ以外にもラノベやマンガが楽しめる。ポイント還元で実質的なコストを抑えられる。
• Amazonプライム: コストパフォーマンスが高く、独占配信が魅力。Amazon利用者には特に便利。
• ABEMAプレミアム: 地上波作品の視聴やオリジナルコンテンツが充実。テレビ番組やニュースも楽しめる。

特にABEMAをおススメ！月額料金は960円。

無料放送も多く、コンテンツも充実しています。VODだけじゃなくテレビ番組やニュースも豊富なんでおススメです。

☟アニメ見るならここがおすすめ

☆☆☆☆☆今回はここまで。

👉使用した画像および一部の記述はアニメ公式サイトから転用しました。