鬼人幻燈抄 最終話感想~林檎飴が繋ぐ約束、時を超えた再会と幸せの在処

こんにちは!びわおちゃんブログ&アニオタWorld!へようこそ。

ついに、この日が来てしまいました。江戸から平成へ、170年という長大な時を駆け抜けた鬼人・甚夜の旅路を描く物語、『鬼人幻燈抄』が、アニメ最終話を迎えました。見終わった直後の私の心を占めたのは、「こんな終わり方もあるんだ」という、静かでありながら、胸の奥深くを震わせるような不思議な感慨でした。

この作品は、その重厚なストーリー、息を呑むような人間(と鬼の)ドラマ、そして実力派声優陣の魂の演技で私たちを魅了し続けてきました。その一方で、制作会社である横浜アニメーションラボの作画が不安定になるたび、SNSでは作画崩壊の話題が賑わい、物語とは別の次元で、毎話ドキドキハラハラさせられたことも、今となっては忘れられない思い出です。

そして最終章「林檎飴天女抄」は、放送直前に「制作上の都合」で1週間の延期。第23話(前編)は、作画への一抹の不安を感じさせつつも、それを補って余りある衝撃的な内容でした。平成パートに登場したヒロイン・薫のまさかのタイムリープという展開は、作画の揺らぎとは質の違う、心臓を鷲掴みにされるようなスリルを私たちに与えてくれたのです。

この記事では、そんな波乱万丈の道のりを経てたどり着いた最終話「林檎飴天女抄(後編)」が、私たちに何を見せてくれたのかを、いつも以上に私の感情を乗せて、徹底的に語り尽くしたいと思います。見事に回収された伏線の数々、時を超えて繋がった人々の想い、そして甚夜が170年の旅の果てに見つけた「幸せ」の答えとは。

この記事を最後まで読んでいただければ、点と点で散らばっていた物語の欠片が、一つの壮麗な絵画として完成する瞬間を、きっと共に味わっていただけるはずです。

(ネタバレ注意)本ブログは「鬼人幻燈抄」の理解を促進するために感想や解説に留まらず、原作の記述等、ネタバレになる部分を多く含みます。アニメ放送時点で明らかになっていない点についても言及していますので、ネタバレを嫌う方にはおすすめできません。

しかし、本ブログを読んだ後、アニメを見直すと、この最終回が持つ本当の輝きを、より一層深く感じられるはずです。

第24話「林檎飴天女抄(後編)」あらすじ:時を超えた約束の行方

物語は、祭りを間近に控えた明治五年(1872年)八月十三日の京都から始まります。

狐の鏡と林檎飴~神主が知る天女の真実

未来から来た少女・薫は「朝顔」と名乗り、甚夜のもとで穏やかな日々を過ごしていました。二人は、天女を天に帰したという伝説が残る「荒妓稲荷神社」を訪れます。ご神体である「狐の鏡」に、未来へ帰る手がかりを求めて。

神主は、説話として語り継がれる物語には嘘と真実が混じり合っていると静かに語ります。そして、祭りの屋台で何が食べたいかと朝顔に問いかけた時、彼女は屈託なく「林檎飴!」と答えました。その瞬間、神主の目に確信の色が浮かびます。そう、この明治の世にまだ「林檎飴」は存在しないのですから。

神主の妻が運んできたお茶菓子は「磯部餅」。それを見て「角野君、よかったね」と微笑む朝顔。平成の世で、甚夜の好物が磯部餅であることを知っていた彼女の記憶が、時を超えてここに在ることを示す、切なくも愛おしい一幕でした。

帰るべき場所への躊躇い~薫が抱える心の揺らぎ

神主は、狐の鏡を使えば元の時代へ帰れると告げ、血を捧げるための短刀を差し出します。しかし、朝顔は「もう少し、心の準備がしたい」と、それを受け取れませんでした。

その夜、縁側で一人酒を飲む甚夜の隣に、朝顔が静かに座ります。
「毎日すごく楽しいよ。でも時々ね、すごく息苦しくなるの」
彼女は、自分の周りにいる友人たちが、巫女になる、強くなる、と確固たる目的を持っているのに、ただ楽しいだけの毎日を送る自分は何者でもない、と不安を吐露します。
「私は何も持っていないから」
その言葉に、甚夜は静かに問いかけます。
「楽しいことは、いけないことか?」

ままならぬ生と、果たされる別れ~二人が見つけた答え

「今の暮らしを悪くはないと思っている。なのに幸せかと問われれば、答えをためらう」
甚夜もまた、自身の心のありようを率直に語ります。そして、当たり前の日常から逃れて楽な呼吸を知ってしまったら、元に戻るのは怖いだろうと、朝顔の心に優しく寄り添います。

その言葉に、朝顔は決意を固めました。
「いつまでも立ち止まったままではいられない」
平成の甚夜が言っていた言葉。居心地の良いこの場所に甘えていてはいけない。
「でももう少しだけ、ここで休ませてもらってもいいかな」
彼女の微笑みは、未来へ帰る覚悟と、ほんの少しの未練を映していました。

そして翌日、二人は再び神殿へ。
「今度は一緒にお祭りに行こうね。その時は林檎飴が食べたいな」
「わかった。ちゃんと覚えておく」
約束を交わし、朝顔は血を鏡に捧げ、光の中に消えていきました。彼女の短い逃避行は、終わりを告げたのです。

第24話徹底解説:170年の旅路が紡いだ、奇跡という名の伏線回収

この最終話は、単なる物語の締めくくりではありませんでした。第1話から緻密に張り巡らされてきた伏線を、これ以上ないほど鮮やかで、感動的な形で回収してみせた、まさにシリーズの集大成です。ここからは、その驚きと感動の仕掛けを、一つひとつ紐解いていきましょう。

なぜ薫はタイムリープしたのか?~「息苦しさ」からの逃避と「憧れ」への希求

まず、物語の大きな謎であった「薫のタイムリープ」。彼女はなぜ時を超えたのでしょうか。私は、その答えが彼女の「私は何も持っていないから」という言葉に集約されていると考えます。

現代を生きる薫は、決して不幸ではありません。友達もいて、学校も楽しい。しかし、周りを見渡せば、巫女姫になるという使命を持つ親友・美夜香や、自らを犠牲にしてでも目的のために戦う甚夜がいます。彼らのように「何かを持っている」人間と自分を比べ、薫は「何者でもない自分」に強い焦燥感と息苦しさを感じていたのです。

これは、現代を生きる私たち、特に人生の岐路に立つことの多い人にとって、非常に共感できる悩みではないでしょうか。「このままでいいのだろうか」「私には何もない」…そんな漠然とした不安に、心が押し潰されそうになることはありませんか?

薫のタイムリープは、そんな息苦しさから逃れたいという無意識の願いが、「狐の鏡」の力と共鳴し、彼女が最も強く憧れ、心を寄せる存在――強く、優しく、そしてどこか儚げな「角野君」のいる時代へと彼女を導いたのではないでしょうか。「もう少しだけ休ませて」という彼女の言葉は、ただの甘えではありません。それは、息苦しい現代社会で再び前を向いて戦うために、心から安らげる場所で羽を休めたいという、切実な祈りだったのです。

明治5年に「林檎飴」は存在しない?~神主の慧眼と物語の仕掛け

朝顔の正体を神主が見抜くきっかけとなった「林檎飴」。この小道具の使い方が、実に巧妙でした。

【林檎飴の歴史(一般的な説)】
起源 : 20世紀初頭のアメリカで、菓子職人が余ったシナモンキャンディーを溶かして林檎にかけたのが始まりとされる。
日本での登場 :大正時代から昭和初期にかけて、縁日の屋台などで見られるようになったと言われている。
結論 :物語の舞台である明治五年(1872年)には、まだ日本に林檎飴は存在していなかった可能性が極めて高い。

この時代錯誤な発言一つで、神主は彼女が未来の人間であると察知します。怪異譚は嘘と真実が混じり合う、と語った彼自身が、朝顔の言葉から真実を見抜くという構成。歴史ミステリーとしても、非常に洗練された脚本に舌を巻きました。

最高のサプライズ!「千歳」との再会と「磯部餅」の約束

そして、この最終話で、私が最も心を揺さぶられ、涙腺が崩壊したのが、この場面です。
朝顔が去った後、甚夜の前に座った神主の妻・千代。彼女が発した言葉に、私は耳を疑いました。

「どうぞ、甚夜様、昔からお好きでしたやろ?磯部餅」

何故それを?訝しむ甚夜に、彼女は続けます。

「そうですね。でしたら『甚太にい』とお呼びしてよろしいでしょうか」

…千歳!!

そう、彼女こそ、第1話「鬼と人と」で、鬼となった甚太が故郷・葛野を去る際、たった一人、最後まで彼を「甚太にい」と呼び、涙ながらに見送ったあの茶屋の娘、千歳だったのです!

「甚太にい!本当に行っちゃうの?私にとって甚太にいは、甚太にいのままだから!」
「また今度、磯部餅でも食わせてくれ」
「絶対ですよ!絶対ですからね!」

あの遠い日の、幼い少女との約束。それが、こんな形で、数十年という歳月を経て果たされるなんて、誰が想像できたでしょうか。鬼となり若いままでいる甚夜(甚太)と、穏やかに歳を重ねた千歳。その対比は、時の流れの残酷さと、それでも変わらない人の想いの温かさを、痛いほどに描き出していました。

「やっと気づいてくれましたね」と微笑む千代(千歳)に、「お前‼千歳か?」と驚愕する甚夜。この再会は、白雪を失い、鈴音を追い、孤独な復讐の旅を続けてきた甚夜の心が、初めて過去と和解し、肯定された瞬間だったのかもしれません。千歳が守り続けた「甚太神社」という名前と共に、彼の旅路は決して無駄ではなかったのだと、温かい光に包まれたのです。この見事すぎる伏線回収には、ただただ涙するしかありませんでした。

薫の悩みと「幸せ」の定義~この物語が私たちに問いかけるもの

本作は、鬼との戦いを通して、「幸せとは何か」という普遍的なテーマを私たちに問いかけ続けます。

薫が抱える「楽しいだけではいけない」という焦り。それに対し、甚夜は「今の暮らしを悪くはないと思っている。なのに幸せかと問われれば、答えをためらう」と語ります。

私たちはつい、「幸せ」を特別な状態だと考えがちです。しかし、甚夜の言葉は、そうではないと教えてくれます。幸せとは「私は幸せだ!」と高らかに宣言できる状態ではなく、「悪くない」と思える穏やかな日々の積み重ねの中にこそ、その本質が宿るのではないでしょうか。

「当たり前に過ぎる毎日をつらく感じた時、少しだけゆっくりと呼吸がしたくなる。もしその願いが意図せず叶えられ、楽な呼吸ができるようになったら、当たり前の日常に戻るのは怖いだろうな」

甚夜のこの言葉は、薫の、そして私たちの心の深淵を的確に捉えています。つらい日常から逃げ出したくなる。でも、その非日常の居心地の良さに慣れてしまったら、もう戻れなくなる恐怖。170年という非日常を生きる鬼である彼だからこそ、その真理を語ることができるのです。

総括:170年の旅路の果てに~満ち足りた再会と未来への希望

アニメ『鬼人幻燈抄』の最終回は、復讐や確執の物語ではありませんでした。それは、時を超えた約束と再会がもたらす、温かく、満ち足りた「救い」の物語でした。

千歳との再会で過去の約束を果たし、心が温まった甚夜。彼が養い子の野茉莉に「林檎飴なんてどうだ?」と、この時代にはないはずのものを、未来への約束として口にするラストシーンは、とても洒落ていて、彼の心の変化を象徴しているようでした。その傍らを、宿敵であるはずの鈴音が、気付かぬままにすれ違っていく。これは、まだ戦いが終わっていないことを示唆する、続編への見事な布石です。

そして、物語は平成へ。
甚太神社の祭りで、薫は100年以上の時を超え、再び甚夜と再会します。

「遅かったな。梓屋。」
「久し、ぶり?」
「本当に久しぶりだ」
「これで気兼ねなく呼べるな。朝顔」

この再会シーンの、なんと満ち足りていることか。鬼として永い時を生き、数えきれないほどの出会いと別れを繰り返してきた甚夜。彼が語る言葉は、人生の深淵を覗くような重みと輝きに満ちています。

「もう思い出すこともまれになってしまったが、あの頃は本当に満ち足りていた。」

この言葉を、皆さんはどう感じますか? 私は、これこそが「人生の勝者」の言葉だと感じました。過去の喜びも悲しみも、全てが今の自分を形作る礎となり、いちいち思い出す必要もないほどに血肉となっている。それでいて、その日々が「満ち足りていた」と断言できる。これほど強く、美しい人生の肯定があるでしょうか。

「角野君は今、幸せ?」
「当たり前だろ。長く生きれば失うものは増える。寂しいと思わないわけではないが、そう悪いものでもない。なくすものが多い分、手に入れるものだってあるさ。それに、長くを生きればこそ時折降って湧いた再会に心躍らせることもある。多分君にはわからないよ。もう一度会えた時どれだけ私が嬉しかったか」

このセリフに、この物語のすべてが詰まっていると、私は思います。失うことを悲しむだけでなく、手に入れるものを慈しみ、再会の奇跡を心から喜ぶ。これこそが、170年の旅の果てに甚夜が見つけた、「幸せ」の答えなのでしょう。

原作はまだ続いており、甚夜と鈴音の凄絶な対峙が待ち受けています。この素晴らしい結末の先に待つ、本当のクライマックスを、ぜひアニメーションで見届けたい。心から、アニメ第2期の制作を熱望して、この感想を締めくくりたいと思います。

半年間、私たちを魅了し続けてくれた『鬼人幻燈抄』に、最大の感謝を。そして、また甚夜たちの旅路に会える日を、心待ちにしています。

『鬼人幻燈抄』の世界を深く味わう!待望の新刊&Blu-ray BOX発売

アニメも絶賛放送中、170年にわたる壮大な旅路を描く和風ファンタジー『鬼人幻燈抄』。ファン待望のコミックス&原作小説の最新刊が2025年9月10日に同時発売!さらに、物語の全てを収録したBlu-ray BOXも登場です。

【コミックス最新刊】鬼人幻燈抄 第9巻

里見有先生の美麗な筆致で描かれるコミカライズ版、待望の第9巻!
舞台は元治元年(1864年)、幕末の動乱期。甚夜のもとに舞い込んだのは、人斬りと化した鬼・岡田貴一を討ってほしいという依頼でした。歴史の大きなうねりの中で、甚夜は新たな鬼との死闘に身を投じます。アニメのあのシーンを漫画で追体験したい方、そしてその先の物語をいち早く見届けたい方におすすめです!

【原作小説最新刊】鬼人幻燈抄 文庫版 第10巻『大正編 夏雲の唄』

中西モトオ先生が紡ぐ物語の原点、文庫版の最新第10巻『大正編 夏雲の唄』が登場します。
南雲叡善の企みを阻止した甚夜でしたが、彼の故郷・葛野の記憶に繋がる「鬼哭の妖刀」が持ち去られてしまいます。失われた大切なものを取り戻すため、物語はついに大正編のクライマックスへ! 小説ならではの緻密な心理描写と重厚な世界観を、ぜひご堪能ください。

【永久保存版】鬼人幻燈抄 Blu-ray BOX

江戸から平成へ、甚夜の170年にわたる孤独な旅を描いたアニメ全24話。その全てを1BOXに完全収録したBlu-ray BOXで、感動の名場面を何度でも。高画質な映像美で蘇る壮大な物語は、まさに永久保存版。お手元でじっくりと『鬼人幻燈抄』の世界に浸ってみませんか。

☆☆☆☆☆今回はここまで。

👉使用した画像および一部の記述はアニメ公式サイトから転用しました。

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