ヴェゼルでお出かけ【熊本・人吉旅行記】偶然見つけた“ひみつ”の歴史と「薬師の湯宿 龍乃榊」

こんにちは!びわおちゃんブログ&「ヴェゼルでお出かけ」へようこそ。

旅の計画を立てる時間って、どうしてあんなにワクワクするんでしょう。地図を広げ、口コミサイトを巡り、まだ見ぬ風景に思いを馳せる…。その時間そのものが、もう旅の一部ですよね。

今回の旅の主役は、熊本県人吉市にある一軒の宿、「薬師の湯宿 龍乃榊」。決め手は、心を鷲掴みにされた数々の口コミでした。「自家源泉かけ流しの客室露天風呂」「まるで宝石箱のような朝食」――そんな言葉たちに心を奪われ、「この宿に泊まるためだけに旅をしよう!」と決めたのです。愛車のヴェゼルに荷物を積み込み、2泊3日の癒しの旅へ。期待に胸を膨らませて、九州道を南下していきました。

でも、旅の神様は時々、用意した脚本を軽やかに書き換えてしまう、いたずら好きな演出家なのかもしれません。高速道路のサービスエリアで偶然手にした一枚のパンフレットが、私の心を強く揺さぶる、予想だにしなかった「歴史」との出会いに繋がったのです。

この記事では、当初の目的だった極上の温泉宿での癒しの時間と、予期せず迷い込んだ「ひみつ」の物語、その両方を余すところなくお伝えします。計画通りの旅も素敵だけれど、偶然の出会いが旅を何倍も豊かにしてくれる。そんな旅の醍醐味を、一緒に感じていただけたら嬉しいです。きっと、あなたの次の旅のヒントも、この中に見つかるはずですよ。

旅の始まりは偶然の出会いから「人吉海軍航空基地資料館」

「龍乃榊」のチェックインは16時。少し時間に余裕があったので、九州自動車道の山江SAで休憩していると、インフォメーションコーナーに置かれた一枚のパンフレットが目に留まりました。

山の中の海軍の町 にしき ひみつ基地ミュージアム

“ひみつ基地”?まるでアニメや映画のタイトルのような、冒険心をくすぐる言葉。山の中に、海軍の、ひみつ基地…?頭の中に疑問符と好奇心が渦巻きます。地図を見ると、インターチェンジからそう遠くない場所。これはもう「呼ばれている」としか思えません。ハンドルを握る手に自然と力がこもります。好奇心という名の羅針盤に導かれるまま、私たちは予定のルートを外れ、その「ひみつ」を目指すことにしました。

左のマークが「薬師の湯宿 龍乃榊」

高速を降り、緑深い山道へ。木漏れ日がきらきらとフロントガラスに降り注ぎます。本当にこの先にあるのだろうか、と少し不安になった頃、忽然とモダンで洗練された建物が姿を現しました。ここが「人吉海軍航空基地資料館」、通称「ひみつ基地ミュージアム」です。

腹が減っては戦はできぬ?絶品ランチと「赤とんぼ」

時刻はお昼どき。ガイドツアーの開始までまだ時間があったので、まずは併設のカフェで腹ごしらえをすることに。全面ガラス張りの開放的な店内からは、屋外に展示された深紅の機体が鮮やかに見えます。

メニューを開くと、これまた魅力的な名前が並んでいました。

  • 人吉海軍キーマカレー
  • 国産牛のローストビーフ丼

どちらも捨てがたい…!食いしん坊な私たちは、迷わず両方を注文してシェアすることに決めました。

ほどなくして運ばれてきた「人吉海軍キーマカレー」。スプーンですくうと、複雑なスパイスの香りがふわりと立ち上ります。一口食べると、まず野菜の甘みが広がり、続いて馬肉のしっかりとした旨味、そして後からじわじわと追いかけてくる深いコクとスパイシーさ。熊本特産の馬肉と椎茸、トマトがじっくり煮込まれているそうで、これは単なる「施設のカレー」というレベルを遥かに超えた、専門店のような味わいです。

一方の「国産牛のローストビーフ丼」は、見た目からして圧巻。しっとりと柔らかなローストビーフが、まるで赤い絨毯のようにご飯を覆い隠しています。九州ならではの甘辛い醤油ダレと、とろりとした卵黄を絡めて頬張れば、もう至福のひととき。ローストビーフの柔らかさと、タレが染みたご飯のハーモニーがたまりません。

※食べるのに忙しくて写真を撮っていませんでした。ごめんなさい。。。

窓の外で静かに佇んでいるのは、旧日本海軍の練習機「九三式中間練習機」、通称「赤とんぼ」の実物大模型だそう。その鮮やかなオレンジの機体は、どこか切なくも美しい。かつて、多くの若者がこの機体で訓練し、そして実機で戦渦へと飛び立っていった…。そんな歴史に思いを馳せながらいただくランチは、いつもとは少し違う、特別な味がしました。

いざ、歴史の深部へ。運命を決める3つのガイドツアー

お腹も心も満たされたところで、いよいよガイドツアーの受付へ。このミュージアムの最大の特徴は、ただ展示物を見て回るだけでなく、専任ガイドさんと一緒に、普段は固く閉ざされている地下施設を巡るウォーキングツアーに参加できること。プランは所要時間と見学内容によって、以下の3種類から選べます。

  • ベーシックプラン(約60分): 地下の心臓部「地下魚雷調整場」を見学
  • スタンダードプラン(約90分): ベーシックに加え「地下兵舎壕」「地下作戦室・無線室」の3ヶ所を見学
  • プレミアムプラン(約120分): スタンダードの内容に加え、さらに特別な地下壕へ。まさに究極の探検コース。

プレミアムプランの「特別な地下壕」という言葉にも心惹かれましたが、初めての訪問で主要な施設をすべて見られるという「スタンダードプラン」を選択することに。

そしてここで、アニメ好きとして見逃せない情報を発見!なんと、スマートフォンで利用できる多言語音声ガイドの日本語ナビゲーターを、人気声優の島﨑信長さんが担当されているというのです!あの透明感のある声で、この場所の歴史が語られる…。想像しただけで胸が高鳴ります。今回は生のガイドさんのお話に集中したかったので利用しませんでしたが、次回訪れる機会があれば、絶対に音声ガイドを聴きながら巡ろうと心に誓いました。

集合時間になると、私たちを含め18名の参加者が集まりました。私たちの担当は、日焼けした顔に優しい笑顔を浮かべた、おじさまガイドさん。「今日はプレミアムプランの人はいませんね?よかったー、あれは長時間なんでガイドも大変だから助かった!」なんてお茶目な自己紹介で、初対面で少し緊張していた参加者たちの心を一気にほぐしてくれました。このユーモアのセンス、きっとツアーも面白いに違いありません。

90分間のタイムスリップ。スタンダードプランで巡る地下壕の世界

ガイドさんに導かれ、私たちはミュージアムの裏手にある森の中へと足を踏み入れます。ざわ…と風が木々を揺らす音、鳥のさえずり。階段を下り始めると、空気が少しずつひんやりと変わっていくのを感じます。一段、また一段と、現代から過去へと下っていくような不思議な感覚。木漏れ日が差し込む約190段の階段は、まるでタイムトンネルの入り口のようでした。

地上世界の喧騒が遠のき、湿った土と植物の匂いに満たされた場所にたどり着いたとき、私たちは完全に別世界にいました。ここから先は、戦時中、地図からその存在を消された「ひみつ」の物語が眠る場所です。

壁に残るツルハシの跡「地下魚雷調整場」

最初に案内されたのは「地下魚雷調整場」。一歩足を踏み入れた瞬間、ひんやりとした空気が肌を刺し、辺りはしんと静まり返っていました。ライトに照らされた壁面には、ツルハシで無数に削られた跡が生々しく残っています。その一つひとつが、暗闇の中、汗と土にまみれて働き続けた人々の息遣いを伝えているかのようです。機械もない時代に、これほど広大な空間を人力だけで掘り進めたという事実に、ただただ圧倒されます。

ガイドさんの話によれば、驚いたことに、この場所は戦後70年間、地元の人々にも単なる「防空壕」だと思われていたそう。それが、アメリカで発見された公文書によって、魚雷の調整や一部製造まで行われていた極秘の軍事施設だったことが判明したのです。まさに「ひみつ基地」。その秘密が、こんな静かな山の中に眠っていたなんて。

壕の奥はコンクリートで頑丈に補強され、そこには実物大の「九一式魚雷」の模型が静かに横たわっていました。全長約5メートル。鋼鉄の塊が放つ無機質な存在感は、これが人の命を奪うための兵器であることを雄弁に物語っており、私たちは思わず息をのみました。

予科練生たちの息遣い「地下兵舎壕」

次に訪れたのは、当時10代半ばの少年兵(予科練生)たちが寝起きしていたという「地下兵舎壕」。さらに深く、湿った空気が漂う空間です。薄暗い壕の中に、二段ベッドがいくつも並べられていたといいます。ここで、故郷を遠く離れた少年たちが、どんな会話を交わし、どんな夢を見ていたのでしょうか。壁に残るランプを置いた煤の跡や、ぬかるみを避けるための排水溝が、彼らの過酷な日常を物語っていました。

ほんのわずか1年9ヶ月という短い期間しか使われなかったこの場所は、戦後長く忘れ去られ、今では無数のコウモリが冬眠する安息の地となっていました。ガイドさんが壁を指差すと、そこにはコウモリの餌となるゲジゲジが。歴史の重みと、新たな生命の営みが同居する、不思議で神聖な空間。少年たちの魂が、今はコウモリたちを見守っているのかもしれない…そんな感傷的な気持ちになりました。

作戦の中枢「作戦室・無線室」

ツアーの最後に訪れたのは、山の斜面にひっそりと口を開ける「作戦室・無線室」。終戦間際に急ごしらえで造られたというこの場所は、前の二つとはまた違う、より緊迫した空気が漂っていました。

発電機から引かれた配線の跡や、かろうじて残る換気器具。ここから発信された無線の先には、どんな未来が待っていたのか。飛び立つ仲間を見送り、戦況を伝え、そして玉音放送を聴いた人々は、何を思ったのか…。想像すると、胸が締め付けられるようでした。

すべての見学を終えると、徒歩で山道をまた登り、ミュージアムの入口まで送ってもらえます。ただの観光ではない、歴史の証人になったかのような濃密な90分間。もしあの時、サービスエリアでパンフレットを手に取っていなかったら…この深い感動を味わうことはありませんでした。偶然の出会いが、こんなにも心を揺さぶる旅になるとは。

この旅の目的地へ。星降る客室露天風呂「薬師の湯宿 龍乃榊」

濃密な歴史体験を終え、ミュージアムの前に戻ってきたのは15時。心地よい疲労感と、歴史に触れた満足感で胸がいっぱいです。スーパーで今夜のディナーと地元の焼酎、そして白ワインを買い込み、いよいよこの旅の最終目的地「薬師の湯宿 龍乃榊」へと向かいます。

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歴史の重みを感じた心と体を、今度は極上の温泉で解き放つ時間。緑豊かな小高い丘の上に、その宿は静かに佇んでいました。16時、チェックイン。温かく気さくな笑顔で迎えてくれた若女将さんに案内され、私たちは予約した離れの客室へと胸を躍らせながら向かいました。

広大な自然がいいでしょ

24時間、名湯を独り占め。究極の癒し空間がここに

ヴェゼルで到着

私たちが選んだのは、2024年にオープンしたばかりの露天風呂付き和室。本館とは別棟の長屋形式の平屋建てのお部屋です。

今回のお部屋は「福禄寿」でした

玄関の扉を開けた瞬間、新しい木の香りと、い草の清々しい匂いにふわりと包まれます。隅々まで磨き上げられた室内は、広々としていて清潔そのもの。そして何より、窓の向こうにはプライベートな露天風呂が…!

部屋は7.5畳とコンパクト

ここの温泉は、歴史ある人吉温泉の中でも名湯と名高い「薬師の湯」。しかも、加水・加温なしの自家源泉100%かけ流しという、これ以上ないほどの贅沢。好きな時に、好きなだけ、誰にも邪魔されずにこの名湯を独り占めできるなんて…まさに大人のためのご褒美です

温泉付き広めのバルコニーです

早速、作務衣に着替えて縁側へ。スタッフの方が事前に絶妙な温度に調整してくれていました。足を浸すと、とろりとした柔らかなお湯が、じんわりと体を包み込んでいきます。ひみつ基地ミュージアムの地下壕を歩いた疲れが、湯気と共にゆっくりと溶けていくのが分かります。

日差しを浴びてのんびり露天風呂

そして夜。空を見上げると、口コミ通り、そこには手が届きそうなほどの満点の星空が広がっていました。街の明かりが届かない山の中だからこその、天然のプラネタリウム。静寂の中、聞こえるのは風が木々を揺らす音と、秋の虫の音だけ。立ち上る湯気の向こうに瞬く星々を眺めながら温泉に浸かる…これ以上にロマンチックな時間があるでしょうか。日中の歴史探訪の興奮と、夜の静寂な癒し。このギャップこそが、旅の醍醐味だと改めて感じました。

【ヒミツの内緒話】
ここの露天風呂付客室は新しくって気持ちいい(シャワールームは別途あります)のですが、一つだけ注意点(注意しようがないかもですが…)
隣室の音がとにかく響きます!子供が大声ではしゃいでいるのが会話の内容まで筒抜けです。

1日目は静かだったのですが2日目はこの不幸に遭遇してしまいました。

軽量鉄骨の長屋方式なので仕方ないのですが。。。

感動レベルの朝食!30種以上の小鉢が彩る朝の贅沢

大女将さんの趣味のダイニングコーナー

温泉で心ゆくまでリラックスした翌朝。この宿を選んだもう一つの大きな理由、「朝食」の時間です。

部屋に運ばれてきたお膳を見て、思わず「わぁ…!」と声が漏れました。そこには、色とりどりの小鉢が、まるでおせち料理のようにぎっしりと並んでいたのです。その数、なんと30種類以上!

朝食1日目

一つひとつ丁寧に作られたお惣菜は、どれも優しい味わい。地元の新鮮な野菜を使った煮物や和え物、甘くてふわふわのだし巻き卵、香ばしい焼き魚…。まるで宝石箱を開けた時のようなキラキラした気持ちで、一品ずつ、その繊細な味をゆっくりと噛み締めました。これはもう、ただの「朝ごはん」ではありません。作り手の温かい心がこもった、「おもてなし」そのものです。お腹も心もすっかり満たされて、最高の1日のスタートを切ることができました。

朝食2日目

2泊3日の宿泊でしたが、ホテルの敷地から一歩も出ずに温泉に浸かっては出て涼み、時にブログを書き、うたた寝をし…という極上かつ堕落の時間を贅沢に過ごすことになりました。

まとめ:心を揺さぶる「歴史」と「癒し」を巡る熊本・人吉の旅

当初の目的だった「癒しの温泉宿」での時間は、期待を遥かに超える素晴らしいものでした。そして、旅の途中で偶然出会った「ひみつ基地ミュージアム」は、私の心に忘れられない歴史の1ページを深く、そして鮮やかに刻んでくれました。

華やかな観光地を巡り、美味しいものをたくさん食べるのも、もちろん旅の大きな楽しみです。でも時にはこうして、静かな場所で歴史に思いを馳せたり、誰にも邪魔されない空間で心と体をゆっくりと解き放ったりする。そんな旅の形も、大人になった今だからこそ深く味わえる魅力なのかもしれません。

計画通りに進まないハプニングさえも、後から振り返れば最高のスパイス。今回の熊本・人吉の旅は、心を揺さぶる「歴史」と、とろけるような「癒し」という、二つの大きな宝物を見つける旅となりました。

この記事を読んでくださったあなたも、ぜひ次の休日に、自分だけの宝物を探しに出かけてみませんか?きっと、あなたの心にも響く、特別な体験が待っていますよ。

☆☆☆今回はここまで。またね👋


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