トランプ氏、EV促進策を撤回
日経電子版の2024年1月21日に『トランプ氏、EV促進策を撤回 大統領令に署名』という記事が出ていました。
興味深い内容なので少し深堀して情報をシェアします。
報道内容について
短い記事なので転載します。
トランプ米大統領は20日、電気自動車（EV）の促進策を廃止する大統領令に署名した。バイデン前大統領が掲げた2030年までに新車販売の半数をEVなどとする目標を取り下げる。EV購入時の補助金などの優遇策も撤廃を検討する。前政権から大幅な路線転換となる。
政策撤廃により、米国でEVを販売する自動車メーカーには逆風となる。米国市場でEVの普及が遅れれば、トヨタ自動車やホンダなどハイブリッド車（HV）技術に強みのある日本勢には出遅れていたEV開発に向けて時間的猶予を確保できる側面もある。
トランプ氏は排ガス規制の見直しを指示する方針だ。
バイデン前政権はクリーンエネルギーへの移行を掲げ、ガソリン車からEVへのシフトを図る政策を推進した。トヨタやホンダは北米にEVの基幹部品である車載電池の大型投資を相次ぎ決めた。
21年8月にバイデン氏が30年までのEV販売目標を定めた大統領令に署名したが、トランプ氏は就任初日に撤回した。トランプ氏は大統領選の期間中も、バイデン前政権のエネルギー・環境政策をたびたび批判してきた。EVの推進策について「事実上のEVの義務化」だと反対していた。
政策の内容と影響
トランプ氏の大統領令には、EV購入時の補助金や優遇策の撤廃が含まれており、これにより米国市場でのEVの普及が遅れる可能性があります。特に、トヨタやホンダなどの日本の自動車メーカーにとっては、EV開発に向けた時間的猶予を得る機会ともなり得ます。
また、トランプ氏は排ガス規制の見直しを指示する方針を示しており、これにより自動車メーカーはより緩和された規制の下で運営できることになります。バイデン政権下では、EVの普及を促進するための厳しい規制が導入されていましたが、これが緩和されることで、特にガソリン車を主力とするメーカーにとっては競争環境が改善される可能性があります。
アメリカ市場における日本車メーカーへの影響
トヨタにはハイブリッド依存の維持期待が
トランプ氏が電気自動車（EV）の促進策を撤回したことは、特にトヨタ自動車にとって多くの影響を及ぼす可能性があります。トヨタは長年にわたりハイブリッド車（HV）に強みを持ち、EV市場への移行に慎重な姿勢を示してきましたが、今回の政策変更により、EV市場での競争環境が大きく変わることが予想されます。
まず、トランプ政権下でのEV政策の撤回は、米国市場におけるEVの普及を遅らせる要因となります。バイデン前大統領が掲げた2030年までに新車販売の半数をEVとする目標が撤回されることで、トヨタはEV開発において競争が緩和される時間的余裕を得るかもしれません。これは、トヨタがハイブリッド車に依存し続ける戦略を維持する助けとなる可能性があります。
しかし、トヨタにとってのリスクも存在します。EV市場が急速に成長している中で、競合他社、特にテスラのような専業EVメーカーが市場シェアを拡大している現状を考えると、トヨタがEV開発を怠ることは長期的には不利に働くかもしれません。トランプ氏の政策がEVの成長を抑制する一方で、トヨタがEV市場での競争力を高めるための戦略を見直す必要があるでしょう。
さらに、トランプ氏が排ガス規制の緩和を指示する方針を示していることも、トヨタにとっては影響を及ぼす要因です。特に、カリフォルニア州などの厳しい環境規制を持つ地域では、トランプ政権の政策が反発を招く可能性があり、これがトヨタの販売戦略に影響を与えるかもしれません。トヨタは、環境規制の変化に柔軟に対応しつつ、EVとHVの両方をバランスよく展開する必要があります。
最後に、トランプ氏の政策が日本車メーカー全体に与える影響も考慮する必要があります。トヨタだけでなく、ホンダなど他の日本車メーカーも、米国市場での競争環境が変わる中で、戦略を再考する必要があるでしょう。トランプ政権の政策が日本車メーカーにとっての逆風となる一方で、競争が緩和されることで、トヨタが持つハイブリッド技術の強みを活かす機会も生まれるかもしれません。
EV化に出遅れたマツダには一時的に追い風が
トランプ米大統領の政策変更は、特にメキシコに製造拠点を持ち、EVへの対応が遅れているマツダにとって、さまざまな影響を及ぼす可能性があります。
まず、トランプ政権下でのEV政策の撤回は、米国市場におけるEVの普及を遅らせる要因となります。マツダは、これまでハイブリッド車や内燃機関車に重点を置いてきたため、EV市場への本格的な参入が遅れています。このような状況下で、米国市場でのEV需要が冷え込むことは、マツダにとって短期的には競争環境を緩和する要因となるかもしれません。特に、トランプ氏がEV購入時の補助金や優遇策の撤廃を検討していることから、マツダはハイブリッド車の販売を強化し、EV開発に対するプレッシャーを一時的に軽減できる可能性があります。
しかし、長期的にはリスクも伴います。EV市場は世界的に急成長しており、特に中国や欧州ではEVの需要が高まっています。マツダがこの流れに乗り遅れると、競合他社に対して不利な立場に置かれる可能性があります。トランプ氏の政策が米国市場でのEVの成長を抑制する一方で、他の地域での需要が高まる中で、マツダはグローバルな競争力を維持するために、EV開発を加速させる必要があるでしょう。
さらに、マツダはメキシコにおける製造拠点を活用して、EV生産を進める計画を持っていますが、トランプ政権の政策変更がその進展にどのように影響するかは不透明です。米国市場でのEV需要が冷え込む中で、マツダはメキシコ工場での生産計画を見直す必要があるかもしれません。特に、EV市場の成長が期待される中で、マツダがどのように戦略を再構築するかが、今後の競争力に大きく影響するでしょう。
スバルのSUVやクロスオーバー車にはチャンス
この政策変更は、特に北米市場において高い販売比率を持ち、日本からの輸出依存度も高いスバルに対して、さまざまな影響を及ぼす可能性があります。
まず、トランプ政権下でのEV政策の撤回は、スバルにとって短期的には競争環境を緩和する要因となるかもしれません。スバルは、主にハイブリッド車や内燃機関車に依存しており、EV市場への本格的な参入が遅れています。EVの普及が抑制されることで、スバルは既存のハイブリッド車やガソリン車の販売を維持しやすくなる可能性があります。特に、スバルの人気モデルであるSUVやクロスオーバー車は、依然として高い需要が見込まれるため、これらのモデルの販売を強化するチャンスが生まれるでしょう。
しかし、長期的にはリスクも伴います。EV市場は世界的に急成長しており、特に欧州や中国ではEVの需要が高まっています。スバルがこの流れに乗り遅れると、競合他社に対して不利な立場に置かれる可能性があります。トランプ氏の政策が米国市場でのEVの成長を抑制する一方で、他の地域での需要が高まる中で、スバルはグローバルな競争力を維持するために、EV開発を加速させる必要があるでしょう。
さらに、スバルは日本からの輸出に依存しているため、トランプ政権の政策変更が関税や貿易政策に影響を与える可能性も考慮する必要があります。特に、米国市場での競争が激化する中で、輸入車に対する関税が引き上げられると、スバルのコスト構造に悪影響を及ぼす可能性があります。これにより、スバルは価格競争力を失い、販売台数に影響が出るかもしれません。
このように、トランプ氏の政策変更はスバルにとって一筋縄ではいかない影響をもたらすと考えられます。短期的には競争環境が緩和される一方で、長期的にはEV市場への対応を怠ることがリスクとなるため、スバルは市場の動向を注視し、柔軟な戦略を採ることが求められるでしょう。
経営統合を目指すホンダと日産には逆風
トランプ米大統領の決定は、ホンダと日産の経営統合計画にとって逆風となる可能性が高いと考えられます。
まず、ホンダと日産はEV市場へのシフトを強化するために協力を進めており、両社の統合はその戦略を加速させる重要なステップと位置付けられています。しかし、トランプ政権下でのEV推進政策の撤回は、米国市場におけるEVの需要を冷やす要因となり、両社が目指すEV関連の投資や開発計画に対する不安を引き起こすでしょう。特に、米国市場でのEV需要が鈍化すれば、ホンダと日産が共同で進めるEVプロジェクトの収益性や市場競争力が低下する可能性があります。
さらに、トランプ氏の政策は、EV購入時の補助金や優遇策の撤廃を含むため、消費者のEV購入意欲にも影響を及ぼすでしょう。これにより、ホンダと日産が期待していた市場シェアの拡大が難しくなるかもしれません。両社は、EV市場での競争力を高めるために多額の投資を行う必要がありますが、政策の不透明感がその計画に水を差すことになります。
また、ホンダと日産の経営統合が進む中で、両社のブランド戦略や製品ラインの統合が求められますが、EV市場の成長が鈍化することで、統合後のシナジー効果が薄れる可能性も考えられます。特に、両社が共同で開発する技術やプラットフォームが市場で受け入れられない場合、統合の意義が問われることになるでしょう。
日本市場でもガソリン車への見直しが
日本市場における影響
トランプ米大統領が2025年1月20日にバイデン前大統領のEV目標を撤回したことは、北米市場においては大きな影響を及ぼすと考えられていますが、日本市場においてもいくつかの重要な影響が予想されます。以下にそのポイントをまとめます。
- EV市場の成長への影響: トランプ政権の政策変更により、米国でのEV需要が一時的に鈍化する可能性がありますが、日本市場では依然としてEVやハイブリッド車の需要が高まる見込みです。特に、日本の自動車メーカーはEV開発に力を入れており、国内外での販売戦略を強化しています。
- 補助金や優遇策の変化: 日本政府もEVやハイブリッド車に対する補助金や優遇策を提供していますが、米国の政策変更が日本の政策に影響を与える可能性があります。特に、国際的な競争が激化する中で、補助金の見直しや新たな政策が必要になるかもしれません。
- 環境規制の影響: 日本国内でも環境規制が厳しくなっているため、内燃機関車からEVへの移行は続くと考えられます。トランプ政権の政策変更が日本の環境政策に直接的な影響を与えることは少ないですが、国際的な流れとしてEVの普及は続くでしょう。
- 市場競争の変化: 米国市場でのEV需要が減少する場合、日本の自動車メーカーは他の地域での販売を強化する必要があります。特に、アジア市場や欧州市場での競争が激化する中で、日本メーカーは新たな戦略を模索することが求められます。
- 消費者の選択肢: 日本の消費者は、EVやハイブリッド車の選択肢を増やすことが期待されます。トランプ政権の政策変更が日本市場に直接的な影響を与えない場合でも、消費者の環境意識の高まりや技術革新により、EVの需要は引き続き増加するでしょう。
これらの要因を考慮すると、トランプ大統領の政策変更は北米市場においては大きな影響を及ぼす一方で、日本市場では比較的安定した成長が続く可能性が高いと考えられます。日本の自動車メーカーは、引き続きEVやハイブリッド車の開発を進め、国際競争に対応していく必要があります。
ガソリン車への再評価が
トランプ大統領がEV推進政策を撤回したことは、日本国内の自動車ユーザーにも影響を及ぼす可能性があります。これまでの流れでは、内燃機関からEVへのシフトが強調され、中国のEVメーカーの台頭も相まって、消費者の間には次の車をガソリン車からハイブリッド車やEVにするべきだという強迫観念が広がっていました。しかし、トランプ氏の政策変更は、ガソリン車の選択肢を再評価するきっかけとなるかもしれません。
まず、トランプ政権の方針転換は、EV市場の成長に対する不安を引き起こす可能性があります。米国市場でのEV普及が鈍化すれば、トヨタやホンダなどの日本メーカーも影響を受け、ハイブリッド車やガソリン車の需要が再び高まる可能性があります。これにより、日本国内でもガソリン車の選択肢が見直されることが考えられます。
次に、トランプ氏の政策撤回は、消費者に対して「内燃機関車も選択肢として残る」というメッセージを送ることになります。これにより、EV一辺倒の風潮が和らぎ、ガソリン車やハイブリッド車の購入を検討するユーザーが増えるかもしれません。特に、ガソリン車は初期費用が比較的低く、流通量も多いため、経済的な観点からも魅力的な選択肢となります。
さらに、日本政府は2035年までに新車販売を電動車100%にする方針を掲げていますが、トランプ政権の影響を受けて、国内の政策や市場環境が変化する可能性もあります。これにより、消費者は今後の政策動向を見極めながら、購入のタイミングや車種を選ぶことが求められるでしょう。
最後に、トランプ氏の政策変更は、消費者の意識に変化をもたらす要因となるでしょう。ガソリン車への回帰意識が高まることで、EVやハイブリッド車の選択肢が再評価され、より多様な選択肢が求められる時代が訪れるかもしれません。このような状況下で、消費者は自分のライフスタイルやニーズに合った車を選ぶことが重要になります。
☆☆☆今回はここまで。またお会いしましょう。
※文中の写真及びコメントの一部は日本経済新聞より転載しました。
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