完璧聖女1話感想：完璧だが愛想なし。隣国に売られる～異世界わた婚？

「完璧聖女」の概要
登場人物
第1話『完璧聖女』感想：「笑わない聖女」
1. 第1話の概要
2. あらすじ
フィリアの境遇と共感ポイント
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「完璧聖女」の概要

原作について

『完璧すぎて可愛げがないと婚約破棄された聖女は隣国に売られる』（以下、「完璧聖女」）は、冬月光輝先生によるライトノベルを原作としたファンタジー・ロマンス作品です。原作小説はオーバーラップノベルスfから刊行されており、シリーズ累計発行部数は150万部を突破しています。また、綾北まご先生によるコミカライズ版が「コミックガルド」にて連載中です。物語は、完璧すぎる聖女フィリアが理不尽な婚約破棄の末に隣国へ売られ、そこで新たな仲間たちと出会い、自身の能力を活かして幸福を掴んでいく姿を描いています。

アニメ化に至る経緯

この作品がアニメ化に至った経緯としては、シリーズ累計150万部突破という人気に加え、「笑わない聖女が売られた先で心を開き笑顔を咲かせる奇跡のファンタジーストーリー」というテーマ性が多くの読者の心を掴んだことが大きな要因と考えられます。読者からの熱い支持がアニメ化プロジェクトを後押ししたことは間違いないでしょう。待望のアニメ化であり、原作ファンを中心に大きな期待が寄せられています。

製作陣

アニメーション制作を担当するのは、TROYCA（トロイカ）です。TROYCAは、2013年に元AIC所属のプロデューサー長野敏之氏、撮影監督の加藤友宜氏、演出家のあおきえい氏を中心に設立されたアニメ制作会社です。社名はロシア語で「3人組」を意味し、設立メンバー3人が中心となっていることに由来します。

TROYCAは、作画・仕上・撮影・CGの部門を持ち、背景美術以外のアニメーション映像制作を一貫して行える体制が整っています。特に、設立メンバーに撮影監督が含まれていることもあり、撮影技術の高さには定評があります。緻密な演出と美麗な映像表現が特徴で、『アルドノア・ゼロ』（A-1 Picturesと共同制作）、『Re』、『アイドリッシュセブン』シリーズ、『やがて君になる』、『ロード・エルメロイII世の事件簿 -魔眼蒐集列車 Grace note-』、『オーバーテイク！』、『ATRI -My Dear Moments-』など、数々の話題作を手掛けてきました。

1年に2作品を制作していれば多い方と言われる中で、実力に優れた人物が多く所属しており、作品ごとに平均以上のクオリティを保証する制作会社として知られています。あまり知名度が高い制作会社ではありませんが、読者の皆さんがTROYCAの過去作をご覧になれば、その映像美にきっと魅了されるはずです。

監督は『忍の一時』を手掛けた渡部周氏、シリーズ構成は『HIGHSPEED Étoile』などの大知慶一郎氏が務めます。

音楽

オープニングテーマは、次世代シンガーソングライターとして注目を集める「りりあ。」の新曲「愛とか。」です。りりあ。さんはTikTokやYouTubeでの弾き語り動画が話題となり、そのエモーショナルな歌声と表現力で多くのファンを獲得しています。

特筆すべきは、りりあ。さんが過去に担当したアニメタイアップとの親和性の高さです。特に『わたしの幸せな結婚』では、第1期・第2期ともにオープニング主題歌を担当（「貴方の側に。」、「幸せな約束。」）。原作のセリフを歌詞に盛り込むなど、作品の世界観に深く寄り添う楽曲制作が国内外で高く評価されました。また、『らんま1/2』のエンディングテーマ「あんたなんて。」や、アニメ映画『バブル』のエンディングテーマ「じゃあね、またね。」（同作ではヒロイン・ウタ役の声優も担当）など、話題作とのタイアップを重ねています。

今回の「愛とか。」も、「完璧聖女」の主人公フィリアに想いを重ねて書き下ろされた楽曲です。りりあ。さんは、「フィリアの環境や状況は本来ならとても辛くて苦しいはずなのに、私の中のフィリアのイメージはどこかポジティブさを感じるキャラクターで、それはきっと妹のミアの存在ごあるからだと思うんです」とコメントしており、そのポジティブさの源泉として妹ミアとの絆を挙げています。歌詞には、フィリアの強く優しい心、ミアとの絆、そして隣国で出会う新しい仲間たちがフィリアのまだ見ぬ感情を引き出していく様子が表現されており、まさに「完璧聖女」の世界観に寄り添った楽曲と言えるでしょう。りりあ。さんの持ち味である、タイアップ作品の世界観に融合していくセンスと柔軟さが、本作でも遺憾なく発揮されています。

エンディングテーマは、WONの「Sister」です。こちらも作品テーマとの関連性が期待されます。

オンエア

TVアニメ『完璧すぎて可愛げがないと婚約破棄された聖女は隣国に売られる』は、2025年4月9日（水）深夜24:00より、テレビ東京ほかにて放送開始予定です。テレビ愛知では同日深夜25:30から、BS朝日では4月11日（金）23:00から、AT-Xでは4月10日（木）23:30から放送されます。配信情報など、詳細は公式サイトをご確認ください。

登場人物

フィリア・アデナウアー (CV：石川由依)

代々聖女を輩出する家系に生まれた、歴代最高の聖女と評されるほど優秀な女性です。幼少の頃から厳しい教育を受けて育ち、完璧に仕事をこなしますが、その完璧さゆえに「可愛げがない」と婚約者のユリウスに婚約破棄され、隣国パルナコルタ王国へ売られてしまいます。当初は感情を表に出しませんが、パルナコルタ王国での温かい人々に触れ合うことで徐々に人間らしさを取り戻し、笑顔を見せるようになります。聖女としての能力を遺憾なく発揮し、様々な問題を解決していく中で周囲からの信頼を得ていきます。妹のミアを大切に思っており、故郷の危機や友人の窮地には自身の力を役立てようと奔走し、過去の因縁と向き合います。

ミア・アデナウアー (CV：本渡楓)

フィリアの妹で、同じく聖女です。姉とは対照的に明るく社交的な性格で、誰からも愛される存在。姉であるフィリアを聖女としても姉としても尊敬しており、フィリアをないがしろにするユリウスや両親に恨みを抱いています。原作では、姉を裏切った者たちへの復讐を決意し、王侯貴族が集う場でユリウスの罪を暴きます。幼い頃から姉を守ろうと決意しており、その強い意志は物語全体を通して重要な役割を果たします。魔物の大群が押し寄せる中で聖女としての使命を果たすため、命を賭して戦う姿も見せます。姉を思う健気な妹として、試練に立ち向かい物語を盛り上げます。

オスヴァルト・パルナコルタ (CV：佐藤拓也)

パルナコルタ王国の第二王子で、農業を愛する気さくな人物です。王位には興味がなく、国民のことを第一に考えています。フィリアの心の傷を癒し、彼女が新たな人生を歩む手助けをしようとします。原作では、フィリアの良き理解者となり、彼女の才能を認めサポートします。フィリアと共に魔物の脅威に立ち向かい、国を守るために尽力。フィリアとの出会いをきっかけに、国の未来のために行動することを決意し、彼女の人生に大きな影響を与えるかけがえのない存在となります。フィリアに真っ直ぐな感情をぶつけ、彼女の感情を取り戻させる重要な役割を担っています。

ユリウス・ジルトニア (CV：天﨑滉平)

ジルトニア王国の第二王子で、フィリアの元婚約者です。プライドが高く自己中心的な性格で、フィリアの優秀さを疎み婚約破棄を突きつけます。原作では、フィリアを手放したことで国が危機に陥り自身の愚かさを後悔しますが、過ちを認めず保身に走るトラブルメーカー的存在です。権力を維持するためには手段を選ばず、物語が進むにつれてその行動はエスカレートし、自身の行動が招いた結果に苦しむことになります。「歪んだ感情から大暴れを見せる」キャラクターとして物語における重要な役割を担っています。

ライハルト・パルナコルタ (CV：立花慎之介)

パルナコルタ王国の第一王子で、オスヴァルトの兄です。物腰が柔らかく穏やかな性格ですが、国の繁栄を第一に考える合理主義者でもあります。原作では、フィリアの能力を高く評価し、彼女をパルナコルタ王国に迎え入れることを歓迎します。国の未来のために、時に非情な決断を下すことも。冷静沈着な性格で常に国の利益を優先して行動しますが、その合理主義的な考え方が、時に周囲との軋轢を生むこともあります。

リーナ (CV：徳井青空)

フィリアのメイド兼護衛を務める、元気で明るい女性です。屋敷のムードメーカー的な存在で、フィリアに様々なアドバイスをします。原作では、メイドとしてだけでなく、護衛としても高い能力を発揮しフィリアをサポートします。明るい性格で周囲を和ませる存在ですが、戦闘能力も高く、いざという時には頼りになります。フィリアの心の変化にいち早く気づき、彼女を支えようとします。

レオナルド (CV：成田剣)

フィリアの執事兼護衛を務める、経験豊富な執事です。以前はパルナコルタ騎士団で騎士として活躍していました。原作では、執事としてだけでなく、戦闘においても頼りになる存在としてフィリアを支えます。冷静沈着で、常にフィリアのことを第一に考えて行動します。過去の経験から戦闘能力も高く、フィリアを守るためにその力を発揮します。

第1話『完璧聖女』感想：「笑わない聖女」

第1話の概要

『完璧すぎて可愛げがないと婚約破棄された聖女は隣国に売られる』第1話「笑わない聖女」は、主人公フィリア・アデナウアーの人生が大きく転換する様子を描いています。フィリアはジルトニア王国で聖女を輩出する家系に生まれ、「歴代最高」と評されるほどの能力を持っていました。しかし、完璧すぎるために周囲から疎まれ、婚約者の第二王子ユリウスから婚約破棄を宣告されます。その後、彼女は聖女不在で苦しむ隣国パルナコルタ王国へ、お金と資源の交換条件で売られることになります。隣国では意外にも温かい歓迎を受け、新たな生活が始まるという物語の導入部です。

あらすじ

ジルトニア王国の聖女フィリアは、その能力から「歴代最高」と称えられていました。彼女は国の守護という重責を担い、日々その務めを完璧にこなしていましたが、その完璧さが仇となり、周囲からは「隙がない」「可愛げがない」と敬遠されていました。婚約者である第二王子ユリウスからも同様の理由で婚約破棄を言い渡され、さらに、聖女が不在で魔物の被害に苦しむ隣国パルナコルタ王国へ、金銭や資源と引き換えに売られることが決定します。故郷を追われ、隣国での過酷な扱いを覚悟するフィリアでしたが、パルナコルタ王国では国王代理であるオスヴァルト王子から予想外の歓迎を受けます。

フィリアの境遇と共感ポイント

第1話の概要（フィリアの視点）

第1話におけるフィリアの状況は、多くの視聴者に共感を呼ぶ要素に満ちています。聖女としての役割を完璧にこなそうと努力する彼女ですが、その完璧さこそが婚約破棄と隣国への売却という理不尽な結果を招きます。この「頑張りが認められない」「完璧を求められるプレッシャー」は、現代社会を生きる私たちも直面する問題です。

フィリアの境遇への共感点

視聴者がフィリアに共感するのは、彼女が置かれた理不尽な状況と、その中で見せる健気さ、そして内面の葛藤にあります。

完璧さゆえの孤独と生きづらさ: 歴代最高の聖女と称賛されながらも、その完璧さが「可愛げがない」とされ、周囲から理解されず孤立してしまうフィリア。完璧であろうと努力すればするほど、人間的な魅力がないと評価される矛盾は、社会的な期待と個人の感情との間で悩む人々の姿を映し出しています.
努力が報われない理不尽さ: 国のために身を粉にして働いてきたにも関わらず、一方的な理由で婚約破棄され、物のように売られるフィリア。正当な評価を受けられず、努力が徒労に終わる経験は、多くの人が共感できるでしょう.
感情の抑制と自己肯定感の低さ: 幼い頃からの厳しい教育により、感情を表に出すことを禁じられ、常に完璧であることを強いられてきたフィリア。自分の感情を押し殺し、自己肯定感が低い彼女の姿は、自己表現に悩む人々の心を打ちます.

フィリアの心理分析

フィリアの心理状態は、彼女が置かれてきた環境によって深く形作られています。聖女としての役割を全うするために、自身の感情を抑制し、周囲の期待に応えようと努めてきました。その結果、他者との感情的な繋がりを築くことが難しくなり、自己肯定感も低くなってしまったと考えられます。婚約破棄と売却という出来事は、彼女にとって大きな精神的打撃であったはずですが、それでも絶望せず、新たな地で生きようとする強さも秘めています。隣国での温かい歓迎は、彼女が閉ざしていた心を開き、人間らしい感情を取り戻すきっかけとなるでしょう。

妹ミアの存在

フィリアにとって唯一の心の支えとも言えるのが、妹のミアです。ミアは姉を心から尊敬し、その能力を正当に評価しています。姉が何も告げずに隣国へ送られたことに疑問を持ち、真相を探ろうとするミアの行動は、姉妹の強い絆を示しています。ミアの存在は、フィリアが困難な状況でも希望を失わないための重要な要素であり、今後の物語においても大きな役割を果たすことが予想されます。ミア自身も、姉を陥れた者たちに対して冷静に行動を起こそうとする芯の強さを見せており、彼女の活躍も注目されます。

ジルコニア王国の異常性

フィリアを「可愛げがない」という理由だけで婚約破棄し、貴重な聖女を隣国に売り渡すジルトニア王国の王族や貴族たちの判断は、極めて異常です。国の宝とも言える人材を私的な感情や都合で手放す行為は、国益を損なうだけでなく、倫理的にも問題があります。フィリアの能力を正当に評価せず、道具のように扱う彼らの姿は、権力者の傲慢さや腐敗を象徴しており、今後の物語で彼らがどのような末路を辿るのかも、見どころの一つとなるでしょう。

隣国での救い

絶望的な状況で隣国パルナコルタ王国へ送られたフィリアですが、そこでは予想外の温かい歓迎を受けます。特にオスヴァルト王子は、フィリアの能力と人柄を正当に評価し、彼女を心から受け入れます。ジルトニア王国とは対照的に、フィリアを一人の人間として尊重し、その力を必要とするパルナコルタ王国の人々との出会いは、フィリアにとって大きな救いとなります。この新しい環境で、フィリアがどのように心を開き、自己肯定感を取り戻し、幸せを見つけていくのかが、物語の大きな魅力となるでしょう。

今後の展開への期待～「異世界わた婚？」

実は、この展開を見て、私は昨年10月から今年の3月までブログを書いていた「わたしの幸せな結婚」を思い出しました。あちらの作品でも、主人公の斎森美世は異能を受け継がなかったことで家族から虐げられ、異母妹の香耶と比較され続けました。そして美世もまた、望まぬ形で斎森家を追い出され、「冷酷無慈悲」と噂される久堂清霞のもとへ嫁がされることになります。さらに驚いたことに、「完璧聖女」のオープニング主題歌を担当しているのは、「わたしの幸せな結婚」と同じりりあ。さんなんです。境遇や世界観は異なりますが、虐げられたヒロインが新たな場所へ送られるという導入、そして同じアーティストが物語の始まりを彩るという共通点から、第1話を見ている間、まるで「異世界わた婚」を見ているような感覚に陥りました。

「わたしの幸せな結婚」では、美世が清霞と出会ってからも、しばらくは辛い状況や心の葛藤が続きました。そのため、「完璧聖女」も、隣国でさらに過酷な運命が待ち受けているのではないかと、少し不安な気持ちで見ていたのです。しかし、第1話のラストシーン。隣国パルナコルタ王国に到着したフィリアを迎えに来た第二王子オスヴァルトが、彼女に優しく手を差し伸べる姿を見て、ホッと胸をなでおろしました。彼の温かな眼差しと差し出された手は、フィリアにとって、そして私たち視聴者にとっても、一条の光のように感じられました。少なくとも、第2話からいきなり絶望的な鬱展開、ということにはならなそうです。むしろ、ここからフィリアが新しい場所で幸せを掴んでいく、希望に満ちた物語が始まるのではないかと、大いに期待しています。