タコピーの原罪 3話『タコピーの告解』 罪の共有と交わらない正義、共犯者たちの残酷な日常

こんにちは!びわおちゃんブログ&アニオタWorld!へようこそ。今回もこの残酷な物語の続きを語ります。
第2話のラスト、雲母坂まりなの血だまりの中で、無邪気に「タコピー、すごい…!」と微笑む久世しずかの姿は、我々視聴者の倫理観を根底から揺さぶりました。ハッピーを願う純粋な宇宙人が、最もアンハッピーな「殺人」という結果を引き起こしてしまったこの瞬間から、『タコピーの原罪』は後戻りのできない領域へと足を踏み入れました。

そして迎えた第3話『タコピーの告解』。このエピソードは、まりな殺害という「罪」の後始末を巡る、息の詰まるようなサスペンス劇です。しかし、その本質は単なる隠蔽工作の顛末ではありません。それは、罪という極限状況に置かれた子供たちの価値観が、いかに異なり、いかに交わらないかという、コミュニケーションの絶望的な断絶を描く物語です。

特に、この悲劇の新たな目撃者として登場するクラスメイト・東直樹の存在は、物語に「社会の常識」という視点を持ち込み、しずかとタコピーが作り出した閉鎖的な世界に亀裂を入れます。彼の正論、しずかの現実、そしてタコピーの純粋さが衝突し、混ざり合うことなく、ただただ悲劇を深化させていく様は、本作の真骨頂と言えるでしょう。

本稿では、この第3話で描かれた東直樹としずかの絶望的な対立、承認欲求が生んだ歪な共犯関係、そしてタイトル『タコピーの告解』に込められた真の意味を解き明かしていきます。

※注意:本記事は、アニメ『タコピーの原罪』第3話までの感想・考察だけでなく重大なネタバレを含みます。未視聴の方は必ず本編をご覧になった後にお読みください。

👇前回はこちら

タコピーの原罪 2話感想|チャッピーの死が招く悲劇と衝撃のラストを徹底考察

共犯者たちの誕生 – 交わらない正義と絶望的な「おはなし」

まりなの死体を前に、3人の子供たちの間に生まれたのは、悲しみの共有ではなく、価値観の激しい衝突でした。この衝突こそが、第3話の物語を駆動させるエンジンとなります。

「常識」を語る東直樹 vs 「現実」を生きる久世しずか

偶然、殺人現場に居合わせてしまった東直樹。彼は、我々視聴者の感覚に最も近い「常識人」として、この異常事態に介入します。彼が真っ先に口にしたのは、「自首しよう」という、法治国家に生きる人間として至極真っ当な提案でした。

まりなの死

「宇宙人がやりましたなんて通用しないよ」

このセリフは、東が現実的な思考の持ち主であることを端的に示しています。彼は、タコピーという超常的な存在を認識しつつも、それが社会的な免罪符にはならないことを理解しています。彼の正義は、社会のルールや法律に基づいた、普遍的な「正しさ」です。

しかし、その正論は、久世しずかには全く届きません。彼女が返したのは、あまりにも現実的で、自己中心的な恐怖でした。

「少年院に入りたくない」

「少年院に入りたくない」

長年のいじめとネグレクトにより、大人や社会への信頼を完全に失っているしずかにとって、「警察に話せば分かってくれる」という東の言葉は、何の慰めにもなりません。彼女の世界では、誰も自分を守ってはくれない。信じられるのは、自分を苦しめる存在が「いなくなった」という事実だけです。彼女にとっての正義とは、社会的な規範ではなく、自らがこれ以上傷つかないための、生存本能に基づいた自己防衛なのです。

ここにあるのは、「社会の中で守られて生きてきた者」の正義と、「社会から見捨てられて生きてきた者」の正義の、絶望的なまでの断絶です。二人の会話は、同じ日本語を話しているはずなのに、互いの言葉の意味するところが全くかみ合わない。それは、本作の根幹テーマである「おはなし」が、いかに困難であるかを示す、象徴的なシーンと言えるでしょう。

「僕なら、できる」- 承認欲求が生んだ歪な協力関係

議論が平行線を辿る中、しずかは切り札を切ります。彼女は、東の目を見て、か細い声でこう告げるのです。

「東君しかいないの」

「東君しかいないの」

この言葉は、東直樹という少年の最も脆い部分を的確に突き刺しました。彼は、優秀な兄と常に比較され、母親からは「キミ」と呼ばれ、「なぜできないの?」と叱責され続けてきた、自己肯定感の低い少年です。誰からも期待されず、認められることのなかった彼にとって、しずかからの「あなたしかいない」という言葉は、抗いがたい魅力を持つ、甘美な毒でした。

思わず彼の口から漏れた「僕なら、できる」という返答。それは、しずかを助けたいという善意からではなく、「自分は無力ではない」「自分にもできることがある」と証明したいという、彼の屈折した自己顕示欲、承認欲求の爆発でした。

こうして、東は自らのコンプレックスを起因として、殺人事件の隠蔽という、最も「正しくない」行為に加担することを決意します。しずかは、無意識にか、あるいは意識的にか、東の心の弱さを利用し、彼を「目撃者」から「共犯者」へと引きずり込んだのです。ここに、友情でも信頼でもない、「罪の共有」を絆とした、歪で危険な共同体が誕生した瞬間でした。

罪を隠すためのハッピー道具 – 善意の暴走と倫理の崩壊

東という「知恵」を得た彼らは、具体的な隠蔽工作に着手します。そして、その手段として使われるのが、皮肉にもタコピーの「ハッピー道具」でした。

「思い出ボックス」と「変身パレット」の皮肉な転用

東の計画は、まず死体を隠し、タコピーがまりなになりすまして失踪を偽装するというものでした。

  • 思い出ボックス: 本来は、大切な思い出の品を永遠にそのままの状態で保存するための道具。しかし、ここではまりなの死体を一時的に保管するための「棺桶」として使われます。
  • 変身パレット: 本来は、楽しい変身ごっこで笑顔を生み出すための道具。しかし、ここではまりなになりすまし、家族や社会を欺くための「犯罪ツール」として使われます。

しずかをハッピーにするはずだった善意の道具が、殺人、死体遺棄、なりすましという、最もアンハッピーな犯罪を助長するために転用されていく。この描写は、道具そのものに善悪はなく、使う者の意図や状況によってその価値が反転してしまうという、恐ろしい現実を突きつけます。タコピーの純粋な善意が、地球の複雑な因果に触れた結果、最もグロテスクな形で悪用されていく様は、本作のテーマである「原罪」――すなわち、善意から始まった行為が、意図せず最悪の罪を生んでしまうこと――を強烈に象徴しています。

「本当にこれでいいんだっぴーね?」- タコピーと人間の絶望的なすれ違い

変身パレットでまりなの姿になったタコピー。しかし、その中身はタコピーのまま。挙動はぎこちなく、何より言葉の語尾に「ピー」がついてしまいます。この状況に、タコピーは根源的な問いを投げかけます。

タコピー:「本当にこれでいいんだっぴーね?」

この問いは、単になりすましがうまくいくかどうかの確認ではありません。それは、「人を殺し、死体を隠し、別人になりすます」という行為そのものに対する、倫理的・根源的な是非を問う、タコピーなりの警鐘でした。

しかし、しずかの返答は、その問いの本質を無情にもすり抜けていきます。

しずか:「その話し方だとばれちゃう」

しずかにとって、問題は「人としてやってはいけないことをしている」という倫理観ではなく、「語尾の『ピー』で計画が失敗するかもしれない」という技術的な問題でしかないのです。ここでもまた、絶望的なまでの「ずれ」が生じています。タコピーが鳴らした最後の警鐘は、感情を失ったしずかの耳には届きませんでした。このすれ違いを前に、タコピーは「しずかちゃんのために」まりなになりきることを決意し、自らさらなる地獄の扉を開けてしまうのです。

それぞれの地獄 – 三人の子供たちが抱える「残酷な日常」

第3話は、隠蔽工作のサスペンスと並行して、登場人物一人ひとりが抱える「日常」という名の地獄を克明に描き出します。

まりな(タコピー)が見た雲母坂家の修羅場

まりなになりすましたタコピー(まりピー)が、雲母坂家のドアを開けると、そこは安らぎの家庭とは程遠い、修羅場でした。リビングでは、まりなの両親が互いを罵り合っています。

「この寄生虫が!」

父:「この寄生虫が!」
母:「キャバクラ通いのあなたはどうなんです」

父親の不倫(しかも相手はしずかの母親)と、それによって崩壊した夫婦関係。視聴者は、まりピーの視点を通して、この不気味な光景を目の当たりにします。この演出は、「加害者」として描かれてきたまりな自身が、家庭内不和という深刻な問題の渦中にいた「被害者」でもあったことを、強烈に印象付けます。

しかし、人間の複雑な感情を理解できないタコピーは、この状況をこう解釈します。

とっても仲良しだっぴーよ

「まりなちゃんのパパとママは、まいにちたーくさんお話ししてとっても仲良しだっぴーよ」

この純粋すぎる感想は、あまりにも残酷なコントラストを生み出し、タコピーという存在の異質さと、人間社会の根深い闇を同時に浮かび上がらせます。

東直樹の屈折と涙 – 決して食べられないパンケーキ

一方、東直樹の地獄もまた、静かに進行していました。しずかとの共犯関係は、彼の心の歪みをさらに増幅させます。しずかとの会話の中で、バイトで彼女とのペアリングを買った兄の話をすると、しずかは残忍な表情でこう囁きます。

「その指輪取っちゃえばいい」

「その指輪取っちゃえばいい」

兄を困らせたいという心の奥底の欲求を刺激され、東は実行に移そうとします。しかし、兄が帰宅したことで未遂に終わり、自らの情けない行動に涙するのです。

彼の脳裏に蘇るのは、母親との記憶。母親はいつも、テストで満点を取ったらご褒美にパンケーキをあげると言っていました。兄はいつも満点。しかし、東は95点までは取れても、あと一歩が届かない。そのたびに、目の前に置かれたパンケーキは、無言で下げられてしまうのです。それは、「条件付きの愛」しか与えられず、決して満たされることのない承認欲求の象徴でした。

タコピーを連れて夜道を歩く東の前に、しずかが現れます。ボロボロの彼を見て、彼女は無遠慮に大笑いします。その笑い声が引き金となり、抑えつけていた東の感情の糸が切れ、彼は大号泣するのでした。それは、彼の抱える孤独と劣等感、そして自己嫌悪が溢れ出した、痛々しい心の叫びでした。

感情を失った少女、久世しずかの無垢なる狂気

この一連の出来事を通して、久世しずかの変貌もまた、恐ろしいほどに際立ちます。彼女は、東の兄への悪意に満ちた提案を平然と行い、号泣する東を無遠慮に笑い飛ばします。彼女の中からは、他者への共感や思いやりといった感情が、完全に抜け落ちてしまっているかのようです。

甲斐甲斐しく給食の世話

学校では、まりピーが甲斐甲斐しく給食の世話をするのを、無表情で受け入れています。クラスメイトがその異様な光景に呆気にとられる中、彼女だけが平然としている。長年のいじめは、彼女から感情を奪い、自分を苦しめる存在がいなくなること、そして自分の身の安全が確保されることだけを至上命題とする、ある種の「怪物」へと変えてしまったのかもしれません。彼女の無垢な表情の裏に潜む狂気は、東の人間臭い苦悩とは対照的に、底知れない不気味さを感じさせます。

『タコピーの告解』- 罪の自覚と連鎖する悲劇

物語の終盤、タイトルである『タコピーの告解』の真の意味が、多層的に明かされていきます。それは単なる罪の告白ではなく、罪の自覚と、それによって生まれる新たな悲劇の始まりでした。

「まりなを返してください」- 加害者の母の涙とタコピーの気づき

まりなの父親が家を出て行った翌日、まりなの母親は豹変します。語尾に「ピー」をつけて話すまりピーに対し、「はしたない」と激しくビンタを繰り返すのです。

「まりちゃん変わっちゃったね。前はママの見方でいい子でいたのに」
「こんな子はまりちゃんじゃない」
「お願いします。まりなを返してください」

そう言って泣き崩れる母親の姿を前に、タコピーは初めて理解します。自分が殺してしまったまりなという少女にも、歪んではいても確かに母親からの愛があり、彼女自身の人生があったのだと。しずかにひどいことをしていたまりなの心の闇、そして彼女を殺してしまったことの取り返しのつかない重大さに、タコピーはようやく気づき、涙を流すのです。

「お願いします。まりなを返してください」

「考えなきゃ、僕は何をしちゃったのか、どうすれば良かったのか、これからどうすればいいのか」

この自問自答こそが、タコピーにとっての本当の意味での「告解」の始まりでした。無垢ゆえに犯した罪の意味を、彼は今、痛みと共に理解し始めたのです。

「ありがとう、殺してくれて」- 善悪の天秤と新たな決意

しかし、罪の重大さに気づく一方で、タコピーの脳裏には、傷だらけの姿で心から感謝するしずかの「ありがとうタコピー、殺してくれて」という言葉が浮かびます。

  • しずかを救うという「善」
  • まりなを殺したという「悪」

この二つの間で、タコピーの心は激しく揺れ動きます。どちらが正しくて、どちらが間違っているのか。単純な善悪二元論では到底割り切れない、人間の世界の複雑さを突きつけられます。そして彼は、このねじれた状況を解きほぐすために、もう一度原点に戻ることを決意します。

「しずかちゃんともう一度お話ししなきゃ」

この決意は、これまでの安易な道具頼りではなく、対話によって問題を解決しようとする、タコピーの成長の証でもあります。しかし、その道がさらなる悲劇を呼び込むことを、彼はまだ知りません。

明かされる因果と、終わらない地獄

物語のラスト、衝撃の事実が明かされます。まりながしずかをいじめていた根本的な原因は、まりなの父親としずかの母親の不倫関係にあったのです。子供たちの世界で起きていた悲劇は、実は大人たちの身勝手な関係がもたらした、連鎖の果てでした。

まりなの死体が入ったカプセル

誰が悪いのか。その問いはもはや単純な犯人捜しでは意味をなさず、複雑に絡み合った因果の糸をたどる、巨大な迷宮へと視聴者を誘います。そして、そんな絶望的な構造が明かされた矢先、偶然にも地質調査員が、地中に埋められた「思い出ボックス」――まりなの死体が入ったカプセル――を発見してしまうのです。

隠蔽工作は破綻し、罪は白日の下に晒されようとしています。一つの地獄を終わらせるための行いが、関わった全員を巻き込む、さらに巨大な地獄の釜を開けてしまった。この最悪のクリフハンガーで、第3話は幕を閉じます。

まとめ:断絶された世界で、罪は連鎖する

アニメ『タコピーの原罪』第3話『タコピーの告解』は、まりな殺害という衝撃の展開を受け、物語を新たな次元へと引き上げた、極めて密度の濃いエピソードでした。

「告解」というタイトルは、単にタコピーが罪を打ち明けることだけを意味してはいませんでした。それは、東を「共犯者」へと引き込むための儀式であり、まりなという人間の背景を知ることで自らの「原罪」を自覚する過程であり、そして、しずかとの「おはなし」を再び決意する、再生への誓いでもありました。

しかし、その全てが裏目に出ます。交わることのない東としずかの正義、承認欲求に駆られて罪に加担する東の悲劇、そしてまりな自身の家庭という新たな地獄。問題は解決されるどころか、より複雑に、より深刻に連鎖していきます。

地質調査員によって死体が発見された今、彼らの歪な日常は終わりを告げ、社会という巨大なシステムとの対峙を余儀なくされるでしょう。子供たちだけの閉じた世界で完結するはずだった罪は、果たしてどのような結末を迎えるのか。我々は、この息の詰まるような地獄の連鎖を、ただ見守ることしかできないのです。

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※使用した写真および文章の一部はアニメ公式サイトより転載しました。

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