「さっきの人はその……特別な人なので」――。
この一言で、第3話は始まりました。
チェックの全項目に引っかかりそうな美しいギャルを、桜大門くんが素通りさせた。そしてポエムちゃんには、いつも通りスカート丈を注意する。怒るポエムちゃん。でもその怒りの正体は、果たして「不公平」への憤りだけだったのでしょうか。第3話は、笑えるギャグの皮をかぶった、実はかなり「いい話」が二本立てで届いた回でした。生徒会長・大和撫子の登場、そして副会長・小堀薫との募金対決――
この作品が「良き時代のギャグアニメ」を再現している理由が、この一話に凝縮されています。
大和撫子登場|「特別な人なので」という一言が、ポエムちゃんの何かに火をつけた
生徒会長考察|ギャルに変装した理由が、実はめちゃくちゃ真面目だった件
「単純に服装を規制するのは簡単だが……そもそもなぜ服を着崩すのか知りたくなってな……今日はこんな格好をしてみた」
タピオカ店の前で、大和撫子がポエムちゃんにそう打ち明けたとき、少し立ち止まってみてください。
この人、ギャルの格好をして校門に現れた理由が、「女子生徒の気持ちを理解するため」だったのです。

規制する前に、理解しようとした。上から禁止するのではなく、自分がその立場に立ってみようとした。それが生徒会長・大和撫子という人物の本質です。ギャルの格好をしているから「やんちゃな人」に見える。でも実は、誰よりも真面目に「人を理解しようとしている」人だった。
この作品の登場人物たちは、みんなそういう構造をしています。外側と内側が、ちょうど逆になっている。桜大門くんもそうでした。真面目そうに見えてポンコツ。ポエムちゃんも、ガサツに見えて紫陽花のルートを選ぶ人。そして撫子は、ギャルに見えて、誰よりも生徒のことを考えている生徒会長だった。
「外見で判断するな」というメッセージを、この作品はギャグの形で、毎回丁寧に届けてくれています。
ポエムちゃんの怒り考察|「不公平」への憤りか、それとも別の何かか
「さっきの女はええんか。さっきの女は良くて私はあかんのかー!」
ポエムちゃんが怒った理由、みなさんはどう受け取りましたか。

表面上は「不公平だ」という怒りです。あのギャルはスルーして、なぜ私だけ注意されるのか。それは確かに理不尽です。でも、ここで少し意地悪な問いかけをさせてください。
ポエムちゃんは毎朝、桜大門くんに注意されています。それが日常です。ある意味で、「毎朝桜大門くんと話せる時間」でもある。そこに突然、「特別な人」が現れた。桜大門くんが、ポエムちゃん以外の誰かを「特別」と呼んだ。
その怒りの中に、ほんの少しだけ、「不公平」とは別の感情が混じっていなかったでしょうか。
「女ったらしっつうんだ!」というポエムちゃんの言葉が、その答えを少しだけ示しているような気がします。「不公平」への怒りなら、「女ったらし」という言葉は出てこない。「女ったらし」という言葉が出てくるのは、もう少し別の場所が痛いときではないでしょうか。
桜大門くんの告白考察|「ポエムさんだけに言うようにしますね」の破壊力
「女性に魅力的だと伝えたのは、ポエムさんが初めてですし……素敵な人だと伝えたのは、ポエムさんだけです。これはセーフでしょうか?」
セーフかどうかを本人に聞く桜大門くん、もはや一つのジャンルです(笑)。
でもこのセリフ、笑いながらも受け取ってしまった方が多いのではないでしょうか。
「ポエムさんだけ」という言葉の重さ。本人はまったく意識していない。ただ事実を報告しているだけです。でもその「事実」が、ポエムちゃんの胸のどこかに、確かに刺さっている。
「まあ、いいんじゃねえの?」というポエムちゃんの返しが、また絶妙です。怒りが溶けている。「言わんでいい!」と言いながら、でも「まあ、いいんじゃねえの?」と言ってしまっている。この矛盾した感情の正直さが、ポエムちゃんというキャラクターの一番の魅力ではないかと思います。

「よかった。これからもポエムさんだけに言うようにしますね」
――桜大門くん、あなたは本当に、何もわかっていないのに、全部正解を言ってしまうのですね。
撫子とポエムちゃんの対話|タピオカ店で交わされた、おしゃれの本質
撫子の問いかけ考察|「異性を誘惑しようとしてるのかね」という直球の質問
「小日向ポエム君……君はずいぶんスカートが短いが……それで異性を誘惑しようとしてるのかね?」

撫子の質問は、直球でした。遠回しにしない。でも責めてもいない。ただ、純粋に知りたいから聞いている。
「なわけねえっつの! これはその……おしゃれっつーか……かわいいからだよ……別に男に見せようと思ってねえ……わかるっしょ……」
ポエムちゃんの答えも、直球でした。「かわいいから」。それだけ。男性のためでも、誰かに見せるためでもない。自分が「かわいい」と思うから選ぶ。その感覚を、ポエムちゃんは言葉にするのが少し苦手そうでしたが、でもちゃんと言えた。
「うむわかる。私も今日は久々におしゃれを楽しんだよ」
撫子がそう言ったとき、この二人の間に、何か静かなものが通じ合った気がしました。立場も性格も違う。でも「おしゃれは自分のためにする」という感覚は、同じだった。
私たちも、誰かのためではなく、自分のために選んだ服を着た朝が、あったでしょうか。その感覚を、ポエムちゃんと撫子が、タピオカ片手に共有していた。このシーンが、Aパートで一番好きな場面です。

撫子の結論考察|「だからほどほどにな」という、絶妙な着地点
「だからほどほどにな」
撫子の結論は、禁止でも推奨でもありませんでした。「ほどほどに」。
この言葉の絶妙さ、気づいていただけたでしょうか。規制するのではなく、理解した上で「ほどほどに」と言う。相手の気持ちを受け取った上で、でも現実も伝える。これが、大和撫子という人物の「人の上に立つ者」としての本質ではないかと思います。
Bパートで描かれる募金対決の場面でも、撫子は同じことをしています。小堀副会長の「正しさ」を否定せず、でも自分のやり方で動かしていく。「禁止」ではなく「理解」から入る人。それが撫子です。
Aパートのタピオカ店のシーンは、実はBパートへの伏線でもあったのかもしれません。

生徒会長vs副会長|募金対決という名の、幼馴染の意地の張り合い
撫子と小堀の募金対決考察|手のひらの上で転がされながら、それでも誠実だった男
「自分の財布の中身を入れるよりマシだと思っただけだ……」
――小堀薫が、そう呟いたとき。
この一言の意味を、最初に聞いたとき、どう受け取りましたか。
小堀は最初、手持ちのお金で募金を水増しするという方法を取ろうとしていました。「ギャフンと凹ませてやる」という気持ちが先走って、とにかく数字で勝とうとした。でも、途中でやめた。自分のお金をそのまま入れることを、やめた。
そして代わりに選んだのが、深夜の交通整理のアルバイトでした。
自分で稼いだお金を、募金する。それだけのことです。でもその「それだけ」の重さが、目の下のクマになって、翌朝の小堀の顔に刻まれていた。

撫子の視線考察|「知っていた」という言葉の、静かな破壊力
「苦労知らずのボンボンは撤回するよ」
撫子がそう言えたのは、見ていたからです。深夜に交通整理をする小堀を、歩道橋の上からじっと見ていた。

ここで少し意地悪な問いかけをさせてください。
撫子は、小堀が「手持ちのお金で水増しする」という最初の方法を取らないことを、最初から読んでいたのではないでしょうか。「手段は問わない、各々が最善を尽くせ」という言葉で小堀に火をつけながら、その小堀がどういう人間かを、誰よりもよく知っていた。
だから「ボンボン」という言葉を使った。あえて、刺さる言葉を選んだ。

小堀が「操り人形に過ぎなかった」と廊下でクラッとしながら嘆いていたのは、あながち間違いではないのかもしれません(笑)。でも、ここで視点を少しだけ変えてみると、見え方が変わってきます。
撫子が小堀を「動かせた」のは、小堀の弱点を知っていたからではなく、小堀の誠実さを信頼していたからではないか、と考えます。
「この人は、ズルをしない」と知っていたから、動かした。
信頼していなければ、動かそうとしない。それが、長い付き合いというものではないでしょうか。
幼馴染考察|「負け続けている」という小堀の言葉が、実は勲章だった件
「一度も勝てたことがない」
小堀がそう言ったとき、それは敗北の告白のように聞こえます。でも、少し立ち止まってみてください。
撫子の手のひらの上で転がされながら、それでも小堀は毎回、誠実な方法で動いている。ズルをしない。近道を選ばない。深夜にバイトをして、自分で稼いだお金を入れる。
「負け続けている」のに、やり方を曲げない。

これは、ある意味で、小堀という人間の一番の強さではないかと思います。撫子に操られていると知りながら、それでも誠実に動いてしまう。その不器用な真面目さが、撫子に「よくやった」と言わせる理由なのではないでしょうか。
私たちも、思い当たることがあるかもしれません。
誰かに「うまく使われているな」と薄々気づきながら、でもそのやり方が自分の信念と一致していたから、結局動いてしまった経験が。
それは、操られているのではなく、自分の意志で選んでいるのだと、私は思います。小堀が毎回負けるのは、撫子が賢いからではなく、小堀が自分の誠実さを裏切れないからではないでしょうか。
「カオルくん」「ナデシコ」という呼び方が示すもの
「カオルくん」「下の名で呼ぶな、ナデシコ」「ナデシコ……」
このやり取りで、牧島くんが「エッ……エッ……」となっていたのは、視聴者全員の代弁だったと思います(笑)。
二人は幼馴染でした。「いつからの付き合いだと思っている」という小堀の言葉が、その長さを示しています。ずっと対立していて、ずっと言い合っていて、でもずっと隣にいた。
撫子が夜中に小堀を待っていたのは、ねぎらうためでした。勝った側が、負けた側を待っていた。タピオカ緑茶を用意して。「甘くなかろう?」と言いながら。

「いつからの付き合いだと思っている」という小堀の言葉が、ここで別の意味を持ちます。長い付き合いだから、好みを知っている。長い付き合いだから、夜中のバイトも見ていた。長い付き合いだから、待っていられた。
ネット上でも「もうこの二人が主人公でいいんじゃない?」「既にデキてんのか」という声が上がっていましたが、それも納得です。この二人の関係性は、ポエムちゃんと桜大門くんとはまた違う温度を持っている。長い時間をかけて積み上げてきた、もう少し複雑な何かが、あの「カオルくん」「ナデシコ」という呼び合いの中に詰まっていました。
月島聖一・再登場|簡易図書室でも「眠り姫」を量産する男
月島の屋外活動考察|図書室の外でも詩人だった、という衝撃の事実
「この50円玉は差し伸べ天使のこぼした一滴の慈悲の涙……」「ああ、なんて尊い……君は差し伸べ、僕の前に舞い降りた虹の女神……」
月島くん、屋外でも詩人でした。
2話では「図書室の外に出ると本来の姿に戻る」という設定が示されていましたが、今回は「簡易図書室」という抜け穴を使って、屋外でも完璧なキザ男として機能していた。この設定の使い方、地味に面白いと思いませんか。

「それにしたって簡易図書室だなんて人をバカにしてるよ」という月島くんの自虐ネタっぽい突っ込みが笑えます。でも「それでどうにかなってるお前もなんなのよ」というポエムちゃんの返しも、正論すぎて笑えます。
月島くんというキャラクターは、「場所」ではなく「空気」を作る人なのかもしれません。図書室という物理的な空間ではなく、自分が作り出す「詩的な空気」の中でだけ、彼は「なりたい自分」でいられる。簡易図書室でも、その空気は作れた。
それはある意味で、どこにいても自分の世界を持っている人の強さではないでしょうか。
撫子の巻き込み力考察|「異常な巻き込み力」という言葉の正体
「会長すごい……あっという間に生徒会以外の協力者を得てしまいましたよ!」「あの女のいつもの手を……異常な巻き込み力により、味方を増やすのだ!」
牧島くんの感嘆と、小堀の悔しそうな分析が、同時に撫子という人物の本質を示しています。
撫子の「巻き込み力」の正体は何でしょうか。

桜大門くんを巻き込んだのは、「500円玉を募金できないなら手伝え」という論理でした。出淵くんを巻き込んだのは、「過去をバラす」という脅し(笑)。ポエムちゃんたちを巻き込んだのは、気づいたら一緒にいた、という自然な流れ。月島くんを巻き込んだのは、撫子が「引きずり出せ」と言ったから。
それぞれに違うアプローチで、でも全員が動いた。
「人を使うことに長けている」という小堀の分析は正しい。でも撫子が人を動かせるのは、相手のことをちゃんと見ているからではないでしょうか。桜大門くんの「昼食代への執着」も、出淵くんの「弱点」も、ポエムちゃんの「面倒見の良さ」も、全部把握した上で動かしている。
人を動かす力は、人を観察する力から来ている。撫子が「人の上に立つ者」である理由が、この募金対決の一日に、丁寧に描かれていました。
3話が示したもの|「こんなんでいいんだよ」という、良き時代のギャグアニメの答え
作品考察|ギャグとして笑わせておいて、いい話をぶっこんでくる構造の巧みさ
第3話を見終わって、最初に思ったのは「こんなんでいいんだよ」という言葉でした。

Aパートは、ギャルに変装した生徒会長が校門に現れるというギャグから始まります。桜大門くんが「特別な人なので」と言い淀む場面は笑えます。ポエムちゃんが怒る場面も笑えます。でもその笑いの奥に、「人を理解しようとする撫子の誠実さ」と「ポエムちゃんの複雑な感情」が、静かに埋め込まれていた。
Bパートは、生徒会長vs副会長の募金対決というギャグ構造です。「ギャフンと凹ませてやる!」という小堀の宣言も、月島くんの「簡易図書室」も、出淵くんへの脅しも、全部笑えます。でもその笑いの奥に、夜中にバイトをした小堀の誠実さと、それを見ていた撫子の優しさが、ちゃんとあった。
笑わせておいて、いい話をぶっこんでくる。
この構造が、この作品の本質だと思います。「頭空っぽにして見るアニメ」という声もありますが、頭空っぽで笑いながら、でも気づいたら胸が温かくなっている。それが「良き時代のギャグアニメ」の真骨頂ではないでしょうか。
ポエムちゃんの変化考察|3話で静かに積み上がったもの
第3話のポエムちゃんを振り返ると、彼女は一度も「桜大門くんのことが好き」とは言っていません。
でも、「特別な人なので」という言葉に怒り、「女ったらしっつうんだ!」と言い、「まあ、いいんじゃねえの?」と怒りを溶かし、「言わんでいい!」と照れを隠した。

言葉にしていないのに、全部見えてしまう。
2話の「いつか桜大門くんの特別な人になれたらいいな」という素子の代弁を、ポエムちゃんは否定しませんでした。そして3話では、桜大門くんが「特別な人」という言葉を別の誰かに使ったことに、反応してしまった。
「特別」という言葉への敏感さが、3話で静かに示されています。
ポエムちゃんは、自分の気持ちに気づいているのでしょうか。それとも、まだ気づいていないのでしょうか。この問いかけが、次話への静かな伏線として機能しています。
第3話は、「特別な人なので」という一言で始まり、「カオルくん」「ナデシコ」という余韻で終わりました。
笑えるギャグの中に、人を理解しようとする誠実さが埋め込まれていて、募金対決という馬鹿馬鹿しい構造の中に、夜中のバイト代という重さが隠されていた。ポエムちゃんの怒りの中に、言葉にできない何かが滲んでいて、桜大門くんの「ポエムさんだけ」という言葉が、本人の知らないところで確実に届いていた。
「こんなんでいいんだよ」と思いながら見ていたら、気づいたら「いい話だった」になっている。
この作品は、そういうアニメです。
第4話で、撫子と小堀の関係性はどう動くのでしょうか。そしてポエムちゃんは、「特別な人」という言葉の意味に、いつ気づくのでしょうか。
一緒に見届けましょう――。
©横田卓馬・講談社/ポンコツ風紀委員とスカート丈が不適切なJKの話製作委員会
👉使用した画像および一部の記述はアニメ公式サイトから転用しました。

【アニメ関連はこっちから】
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