完璧聖女5話感想：黄色のフリージアが照らす光 – 魂の承認と愛の萌芽

アニメ『完璧すぎて可愛げがないと婚約破棄された聖女は隣国に売られる』（完璧聖女）第5話「黄色のフリージア」。今回は、フィリアの心に大きな変化が訪れる、非常に感動的で重要なエピソードでした。新たな出会い、過去との向き合い、そして心からの「承認」。フィリアが長年抱えてきた心の氷が、温かい光に照らされて溶け出していく様子が丁寧に描かれています。特に、フィリアが経験する感情の解放と自己肯定感の回復プロセスの場面はあなたの深く心に響いたのではないでしょうか。今回も『完璧聖女』フィリアが歩む軌跡を辿りながら、感想と考察をお届けします。

「完璧聖女」の概要
1. 原作について
2. アニメ化に至る経緯
登場人物
第5話あらすじ：新たな風、聖女グレイスの来訪
見どころポイント：第5話の注目点解説
深い考察：私たちの心に響くメッセージ
託された想い：ヒマリのメモ「配達完了」の意味
黄色のフリージアに秘められたライハルトの愛と喪失感
古代術式の閃き：フィリアの決意と新たな使命
第5話「黄色のフリージア」まとめと次回への期待
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「完璧聖女」の概要

原作について

『完璧すぎて可愛げがないと婚約破棄された聖女は隣国に売られる』（以下、「完璧聖女」）は、冬月光輝先生によるライトノベルを原作としたファンタジー・ロマンス作品です。原作小説はオーバーラップノベルスfから刊行されており、シリーズ累計発行部数は150万部を突破しています。また、綾北まご先生によるコミカライズ版が「コミックガルド」にて連載中です。物語は、完璧すぎる聖女フィリアが理不尽な婚約破棄の末に隣国へ売られ、そこで新たな仲間たちと出会い、自身の能力を活かして幸福を掴んでいく姿を描いています。

アニメ化に至る経緯

この作品がアニメ化に至った経緯としては、シリーズ累計150万部突破という人気に加え、「笑わない聖女が売られた先で心を開き笑顔を咲かせる奇跡のファンタジーストーリー」というテーマ性が多くの読者の心を掴んだことが大きな要因と考えられます。読者からの熱い支持がアニメ化プロジェクトを後押ししたことは間違いないでしょう。待望のアニメ化であり、原作ファンを中心に大きな期待が寄せられています。

登場人物

フィリア・アデナウアー (CV：石川由依)

代々聖女を輩出するアデナウアー家に生まれ、「歴代最高の聖女」と評されるほど優秀な女性です。幼少の頃から叔母ヒルデガルトによる厳しい教育を受けて育ち、完璧に聖女としての務めを果たしますが、その完璧さゆえに周囲からは「可愛げがない」と疎まれ、婚約者であったジルトニア王国第二王子ユリウスに婚約破棄されます。さらに、父ゲオルグと母コルネリア、ユリウスらの策略により、聖女不在で困窮する隣国パルナコルタ王国へ莫大な金銭と資源と引き換えに売られてしまいます。当初は感情を表に出しませんでしたが、パルナコルタ王国での第二王子オスヴァルトや侍女リーナ、執事レオナルドといった温かい人々に触れ合うことで、徐々に人間らしさを取り戻し、笑顔を見せるようになります。聖女としての能力を遺憾なく発揮し、様々な問題を解決していく中で周囲からの信頼を得ていきます。唯一の心の支えである妹のミアを非常に大切に思っています。

ミア・アデナウアー (CV：本渡楓)

フィリアの妹で、同じくジルトニア王国の聖女です。わずか1年で聖女修行を終えるほどの才能を持ち、術の発動速度は姉をも凌ぐと言われています。天真爛漫で明るい性格から国民の人気も高く、「ジルトニアの宝」と愛されています。姉であるフィリアのことを聖女としても姉としても深く尊敬しており、彼女の婚約破棄と隣国への売却には心を痛めています。姉を陥れた者たちへの復讐を画策するなど、見た目の明るさとは裏腹に、計算高く行動的な一面も持っています。

オスヴァルト・パルナコルタ (CV：佐藤拓也)

パルナコルタ王国の第二王子です。フィリアを金銭で購入したことに負い目を感じており、彼女に対して常に気遣いを見せます。気さくで人情に厚い性格で、国民からの信頼も厚いですが、本人は王位継承には全く興味がなく、城内で農作業に勤しむことを好みます。フィリアの完璧さの裏にある孤独や努力を理解し、彼女が心を開くきっかけとなる重要な人物です。第5話では、フィリアのこれまでの努力を認め、彼女の心を大きく救済する言葉をかけました。

ユリウス・ジルトニア (CV：天﨑滉平)

ジルトニア王国の第二王子で、フィリアの元婚約者です。プライドが高く嫉妬深い性格で、完璧すぎるフィリアを疎ましく思い、「可愛げがない」という理由で一方的に婚約を破棄します。フィリアの妹であるミアに心酔しており、彼女と婚約するためにフィリアを隣国へ追いやる計画に加担しました。物語序盤におけるフィリアの境遇を作り出した張本人の一人です。

ライハルト・パルナコルタ (CV：立花慎之介)

パルナコルタ王国の第一王子で、オスヴァルトの兄です。物腰が柔らかく穏やかな性格ですが、国の繁栄を第一に考える合理主義者としての一面も持ち合わせています。3ヶ月前に亡くなった先代聖女エリザベスは彼の婚約者でした。エリザベスを深く愛しており、彼女の死後、その悲しみを紛らわすように公務に没頭しています。第5話ではエリザベスの墓前でフィリアやグレイスと遭遇しました。

リーナ (CV：徳井青空)

パルナコルタ王国でフィリアに仕えるメイド兼護衛です。元気で明るい性格で、何でも一人でこなそうとするフィリアを甘やかし、積極的に世話を焼きます。フィリアにとっては良き話し相手であり、彼女が心を許せる存在の一人です。護衛としての能力も備えています。

レオナルド (CV：成田剣)

パルナコルタ王国でフィリアに仕える執事兼護衛です。元々はパルナコルタ騎士団に所属していた実力者です。寡黙ですが忠誠心は厚く、フィリアの身辺を静かに守っています。料理が得意で、フィリアの食事を担当しており、その料理はフィリアの心を癒す一助となっています。

ヒマリ (CV：中村カンナ)

パルナコルタ王国でフィリアに仕えるメイド兼護衛です。大陸北東の島国・ムラサメ王国の出身で、隠密や諜報活動に長けています。普段は影からフィリアを守っており、口数は少ないですが、確実に任務を遂行します。第5話ではフィリアの依頼で故郷への「配達」を完了させたことが示唆されました。

グレイス・マーティラス (CV：内田秀)

ボルメルン王国の聖女で、聖女の名家マーティラス家の四女です。第5話で、フィリアから破邪術を学ぶためにパルナコルタ王国を訪れました。フィリアが過去に執筆した「聖女論」を心のバイブルとしており、フィリアに対して深い尊敬と憧れを抱いています。明るく素直な性格ですが、聖女としての悩みも抱えている様子がうかがえます。

フェルナンド・ジルトニア (CV：興津和幸)

ジルトニア王国の第一王子で、ユリウスの兄です。生まれつき病弱で、公務にもあまり出ずに自室に引きこもりがちです。穏やかな性格で、弟とは対照的に理性的です。フィリアの境遇に同情的な様子も見られ、今後の動向が注目される人物です。

ヒルデガルト・アデナウアー (CV：伊藤美紀)

フィリアとミアの伯母（父ゲオルグの姉）であり、ジルトニアの先代聖女です。フィリアの聖女としての師匠であり、「何があっても跳ね返せるように」と非常に厳しい修行を課しました。その厳しさの裏には、フィリアの将来を案じる深い愛情がありました。

ゲオルグ・アデナウアー (CV：伊藤健太郎)

フィリアとミアの父親で、アデナウアー家の当主です。権力欲が非常に強く、娘たちのことよりも家の利益や自身の地位向上を優先します。ユリウスと結託し、フィリアを隣国に売り渡す計画の中心人物の一人です。

コルネリア・アデナウアー (CV：大原さやか)

フィリアとミアの母親です。夫ゲオルグと同様に強い権力欲を持ち、家の地位向上を常に考えています。フィリアに対しては冷淡な態度を取り、溺愛するミアとユリウス王子との婚約を望み、フィリア追放計画に加担しました。

ピエール (CV：村上裕哉)

ジルトニア王国の騎士で、ミアの護衛を務めています。忠誠心は高いですが、第一王子であるフェルナンド派に属しており、引きこもりがちなフェルナンドのことも気にかけています。王宮内のパワーバランスに関わる立場にいる人物です。

第5話あらすじ：新たな風、聖女グレイスの来訪

隣国パルナコルタでの生活にも少しずつ慣れてきたフィリアの元に、第二王子オスヴァルトから新たな依頼が舞い込みます。それは、遠いボルメルン王国から留学してくる聖女、グレイス・マーティラスの家庭教師を務めること。

フィリアを「歴代最高の聖女」と心から尊敬し、熱烈な憧れの眼差しを向けるグレイス。その純粋な好意に、これまで「完璧」であるがゆえに敬遠されがちだったフィリアは戸惑いを隠せません。しかし、この出会いが、フィリアの心をさらに開いていくきっかけとなるのです。

見どころポイント：第5話の注目点解説

聖女グレイスの登場と「聖女論」

太陽のような明るさを持つボルメルン王国の聖女グレイス。彼女の存在は、感情を押し殺してきたフィリアにとって、ある種の鏡のような役割を果たします。特に印象的だったのは、グレイスがフィリアの著書「聖女論」を心のバイブルだと語る場面。

故郷ジルトニアでは両親や元婚約者から酷評され、フィリア自身も書いたことを後悔していたこの本。しかし、遠い国で、グレイスのような純粋な魂を支え、励ましていたという事実は、フィリアにとって計り知れない衝撃と癒やしをもたらします。誰にも理解されないと思っていた真摯な想いが、グレイスによって的確に言語化され、称賛された瞬間、フィリアの長年の心の傷が少しだけ浄化されたように感じられました。「私は貴女に救われました」というグレイスの言葉は、フィリアの自己肯定感を静かに、しかし確実に満たしていくのです。

師である叔母との記憶、厳しさの奥にあった愛

グレイスとの会話の中で、フィリアは自身の師であり叔母でもあるフィルデファルト・アデナウアーとの過去を回想します。冬の雪山に放置されるような厳しい修行の日々。しかし、それはフィリアが両親に疎まれることを見越した叔母が、「何があっても跳ね返せるように」と、フィリアを強く鍛えるための、不器用ながらも深い愛情表現だったことに気づきます。

辛い記憶として封印していた過去が、温かい愛情の記憶へと昇華される瞬間。これもまた、フィリアが他者の感情や意図をより深く理解し、過去の呪縛から解放されていくための重要なステップと言えるでしょう。大人になってから過去の出来事の意味を捉え直し、感謝の念を抱く。そんな普遍的な心の動きが描かれていました。

オスヴァルト王子による「魂の承認」

今回のハイライトと言っても過言ではないのが、オスヴァルトとの昼食シーンです。リーナの計らい（？）で訪れた農園で、オスヴァルトは自身の本心をフィリアに打ち明けます。王位継承への無関心、貴族社会への嫌気、そして「人が喜んでくれること」をしたいという純粋な動機。

その飾らない言葉に心を開いたフィリアもまた、自身の過去を告白します。両親からの承認を切望し、それが得られなければ自分の存在価値はないとまで思い詰めていたこと。しかし、パルナコルタで出会った人々の温かさに触れ、新たな喜びを見出し始めていること。

その痛切な告白に対し、オスヴァルトが与えた「よく頑張ったな。君の今までの全てのことを、君の両親に代わって俺が認めてしまおう」という言葉。これは、フィリアが人生で最も渇望していた、無条件の肯定と承認です。両親から与えられなかったその言葉を、オスヴァルトが温かく、真摯に与えてくれた瞬間、フィリアの魂は深いレベルで救済されたように見えました。頬を染め、はにかみながらも深い安堵と喜びを滲ませる表情は、彼女が初めて見せる、鎧を脱いだ素顔。この出来事は、フィリアの自己肯定感を大きく育み、今後の彼女の生き方を変えるターニングポイントとなるでしょう。

深い考察：私たちの心に響くメッセージ

第5話は、私たちが共感し、感動できる要素が多く散りばめられていました。フィリアの変化を通して、私たち自身の心にも響くメッセージを探ってみましょう。

承認欲求からの解放：オスヴァルトの言葉がもたらしたもの

「誰かに認めてほしい」「自分の頑張りを分かってほしい」――程度の差こそあれ、多くの人が抱える承認欲求。特に、家庭や社会の中で様々な役割をこなし、目に見えにくい努力を重ねている女性にとって、フィリアが抱えていた「両親に認められたい」という渇望は、他人事とは思えないかもしれません。

どれだけ完璧に務めを果たしても、一番認めてほしい人からは評価されない。その苦しみは、フィリアの心を深く蝕んでいました。しかし、オスヴァルトの「俺が認めてあげる」という言葉は、特定の誰かからの評価ではなく、「あなたの存在そのもの、これまでの努力すべてが尊い」という、もっと根源的な肯定でした。

これは、特定の役割や成果に対する評価ではなく、「魂」レベルでの承認です。この経験を通して、フィリアは「誰かのため」だけでなく、「自分のため」に、そして「純粋な喜び」のために行動する自由を得ていくのではないでしょうか。私たちもまた、他者からの評価に一喜一憂するのではなく、自分自身の価値を内側から認め、肯定することの大切さを、フィリアの姿から教えられる気がします。

「愛されること」と「愛すること」：フィリアの成長と自己探求

これまでのフィリアは、両親に「愛されること」を強く求め、そのために聖女としての務めに邁進してきました。しかし、ライハルト王子の深い悲しみと愛に触れ、オスヴァルトの無償の優しさ（承認）を受け取ったことで、彼女の中に新たな問いが生まれます。「自分は愛されることばかり求めてきたけれど、誰かを愛そうとしたことがあっただろうか」。

これは、フィリアが自己の内面と向き合い、より成熟した感情を獲得していくプロセスを示唆しています。受け身的に愛を求める段階から、能動的に他者と関わり、心を寄せ、あるいは愛を与えるという段階へ。パルナコルタでの温かい人間関係の中で、フィリアは「愛される」喜びだけでなく、「愛する」ことの意味や豊かさをも学んでいくのかもしれません。恋愛だけでなく、友情や隣人愛も含めた広い意味での「愛」について、フィリアがこれからどのように理解を深めていくのか、見守りたい気持ちになります。

聖女という役割と個人の幸せ

「完璧な聖女」という役割は、フィリアにとって誇りであると同時に、重い枷でもありました。感情を抑え、自己を犠牲にし、国のために尽くす。それが当然とされ、個人の感情や欲求は「可愛げがない」と切り捨てられてきました。

しかし、パルナコルタでは、聖女である前に一人の人間としてのフィリアが受け入れられています。オスヴァルトからの承認を受け、「私も、よくしてくれるこの国の皆さんのために何かしたい」とフィリアが考えた時、それは義務感からではなく、心からの感謝と貢献意欲から生まれたものでした。

これは、与えられた役割をこなすだけでなく、その中で自分自身の喜びや幸せを見つけていこうとする、フィリアの主体性の表れと言えるでしょう。「聖女」という役割と、「フィリア」という一人の女性としての幸せ。その二つをどのように両立させていくのか、あるいは統合していくのか。これもまた、多くの女性が人生で直面するテーマと重なります。フィリアが自分らしい幸せの形を見つけていく過程は、私たちにとっても勇気を与えてくれるはずです。

託された想い：ヒマリのメモ「配達完了」の意味

TVアニメ『完璧すぎて可愛げがないと婚約破棄された聖女は隣国に売られる』第5話「黄色のフリージア」では、物語の今後の展開を示唆する、いくつかの印象的な場面が描かれました。ここからは特に注目すべき3つの場面を取り上げ、そこに隠された伏線とその意味、そして次回以降、フィリアを取り巻く運命がどのように動いていくのかを推理・考察します。

深まる謎：フィリアの「配達完了」での安堵の理由

執事レオナルドが、密偵である忍者ひまりからの「配達完了」と記されたメモをフィリアに届けます。その短い報告に、フィリアは明らかに安堵した表情を見せました。この安堵は、彼女が何か重要な、そしておそらくは危険を伴う依頼をひまりに託していたことを示唆します。一体何を「配達」させたのでしょうか？フィリアがこれほどまでに安堵するということは、それが成功するか否かが、彼女にとって、あるいは彼女が大切に思う誰かにとって、極めて重要な意味を持っていたと考えられます。単なる物品の受け渡しではない、特別な意味合いがこの「配達」には込められているはずです。

妹への願い：「聖女論」と古代術式

最も有力な推測として、フィリアが自身の著書「聖女論」を妹ミアに届けさせた可能性が挙げられます。この本は、フィリアの聖女としての知識、特に古代術式に関する研究成果が記されていますが、故郷ジルトニアでは父や元婚約者ユリウスによって「出しゃばっている」と否定され、回収されてしまった曰く付きの書物です。しかし第5話で、グレイスによってその価値を再認識させられたフィリア。彼女はミアに古代語だけでも教えておけばよかったと後悔していました。ジルトニアに残してきた、たった一人の愛する妹。今、ミアは聖女として一人で国を守る重責を担っているかもしれません。会うことのできない姉として、せめて自分の知識を役立ててほしい、古代術式を習得し、いずれ来るであろう脅威から国と民を守る力となってほしい――そんな切なる願いを込めて、禁書同然の「聖女論」を極秘裏に届けさせたのではないでしょうか。ひまりの「配達完了」は、その願いが無事に妹の元へ届いたことへの安堵だったのかもしれません。

もう一つの可能性：ジルトニアへの布石

「聖女論」以外にも、考えられる可能性はあります。例えば、ジルトニア国内の不穏な動きを探るための指示や、姉を陥れた者たちへの復讐を計画するミアへの協力、あるいは重要な情報伝達などが考えられます。フィリアは単に売られた聖女ではなく、高い知性と行動力を持つ女性です。パルナコルタにいながらも、故郷の状況を静かに見守り、来るべき時に備えて布石を打っている可能性も否定できません。いずれにせよ、この「配達完了」は、フィリアが故郷や妹に対して深い愛情と責任感を持ち続けている証であり、彼女が今後の物語で、国境を越えて大きな役割を果たす可能性を示唆する重要な伏線と言えるでしょう。

黄色のフリージアに秘められたライハルトの愛と喪失感

ライハルトの悲しみとエリザベスの面影

グレイスの希望で訪れた墓地で、フィリアたちはパルナコルタ王国第一王子ライハルトと遭遇します。彼は、3ヶ月前に亡くなった婚約者エリザベス（グレイスの従姉）の墓前に、彼女が好きだったという黄色のフリージアを供えていました。グレイスの姿を一瞬エリザベスと見間違え、「リズ…」と呟くライハルト。その一言に、彼の深い悲しみと、今もなおエリザベスを深く愛し続けている想いが凝縮されています。公務に没頭することで悲しみを紛らわそうとしているという彼の姿は、愛する人を失った者の痛々しいまでの現実を映し出します。

香りに託された想い：エリザベスとライハルトの関係性

ライハルトは、エリザベスが黄色のフリージアを好み、「この花の香りが、あなたのようだ」と語っていたことを明かします。黄色のフリージアの花言葉には「無邪気」「親愛の情」「期待」などがあります。エリザベスは、ライハルトの中に、フリージアの香りと同じような、純粋さ、温かさ、そして未来への希望を感じ取っていたのではないでしょうか。香りは記憶と感情を強く結びつけるもの。エリザベスにとって、フリージアの香りはライハルトそのものであり、二人の愛の象徴だったのかもしれません。なぜ彼女が黄色を選んだのか、そしてその香りをライハルトと重ねたのか。それは、二人の間にだけ通じる、深く、そしておそらくは無邪気で純粋な愛情の形があったことを物語っています。このエピソードは、単なる悲劇の回想ではなく、失われた愛の記憶がいかに深く人の心に刻まれるかを、繊細に描き出しています。

フィリアの心の変化と共感

「感情に疎い私でもわかる。きっと彼は今でもエリザベスさんを愛している」――フィリアのこのモノローグは、彼女の著しい心の成長を示しています。以前のフィリアであれば、他者のこれほど深い感情の機微を捉えることは難しかったかもしれません。しかし、パルナコルタでの温かい人々との交流、そしてオスヴァルトからの承認を経て、彼女は他者の痛みや愛情を理解し、共感する心を育み始めています。ライハルトの揺るぎない愛を目の当たりにしたことで、フィリアは「自分は愛されることばかり求めてきたけれど、誰かを愛そうとしたことがあっただろうか」と自問します。これは、彼女が自己の内面と向き合い、「愛」という感情について、より深く、能動的に探求し始めるきっかけとなる重要な伏線です。ライハルトとエリザベスの物語は、フィリア自身の愛の物語が始まる予兆なのかもしれません。

古代術式の閃き：フィリアの決意と新たな使命

決意の瞬間：「この国のために」

オスヴァルトからの心温まる承認を受け、満たされた気持ちでグレイスの訓練に戻ったフィリア。彼女の心には、これまでとは異なる感情が芽生えていました。「私も、よくしてくれるこの国の皆さんのために何かしたいわ」。これは、義務感や承認欲求からではなく、純粋な感謝と貢献意欲から生まれた、自発的な想いです。聖女としての役割を果たすことだけが自分の存在意義だと信じてきた彼女が、他者への感謝を原動力に行動しようとしている。これは、フィリアの価値観における大きな転換点であり、彼女が新たな一歩を踏み出す決意の瞬間です。

古代術式の可能性：フィリアが思い出したこと

「待って、確か古代術式には…」。フィリアは、古代術式の知識の中に、今の自分の想いを形にする方法があることを思い出します。具体的に何を思い出したのかはまだ明かされていませんが、それはおそらく、単なる魔物討伐の術ではなく、パルナコルタ王国の人々の生活を豊かにしたり、国全体を守護したりするような、より広範で根源的な力を持つ術ではないでしょうか。例えば、オスヴァルトが大切にする農園に関連するような、土地を豊かにする術。あるいは、国全体を覆うような大規模な守護結界、病を癒やす広範囲治癒術などが考えられます。彼女が中断してまで始めようとしたことは、個人的な鍛錬ではなく、公のための、そして感謝の気持ちを形にするための、聖女としての新たな試みであるはずです。

未来への布石：始まる新たな試み

このフィリアの閃きと行動は、彼女がパルナコルタ王国で新たな役割と使命を見出し、その類まれなる知識と能力を、この国のために役立てていく未来を示唆しています。ジルトニアでは「完璧すぎる」と疎まれた彼女の力が、パルナコルタでは人々の幸福のために活かされ、感謝される。それはフィリア自身の魂の救済にも繋がるでしょう。しかし、その直後にジルトニアからの「返還要求」という衝撃的な知らせが届きます。フィリアが新たな決意を固めた矢先に突きつけられる、過酷な現実。彼女が始めようとしたこの新たな試みは、迫りくる困難に立ち向かうための力となるのか、それとも新たな争いの火種となるのか。フィリアの古代術式に関する知識と、それをパルナコルタのために使おうとする決意は、今後の物語の展開を大きく左右する、極めて重要な伏線となるでしょう。

第5話「黄色のフリージア」まとめと次回への期待

聖女グレイスとの出会い、過去の肯定、そしてオスヴァルトによる魂の承認。第5話で、フィリアは精神的に大きな飛躍を遂げました。ようやく見つけた心の安息と、自己肯定感の萌芽。しかし、物語は安穏とした日々を許してはくれません。ラストシーンで突きつけられた、ジルトニア王国からの「フィリア返還要求」。

せっかく掴みかけた幸せが、再び脅かされようとしています。フィリアはどうなってしまうのか？不安が募る一方で、エンディング後の次回予告では、妹ミアが元婚約者ユリウスを相手に何かを画策しているような姿も。タイトルは「理性と感情」。姉を救うため、ミアが動き出すのでしょうか。フィリア自身の心の葛藤と、ジルトニアでの新たな動きが交錯するであろう次回から、ますます目が離せません。

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