注意:この解説記事は、TVアニメ『鬼人幻燈抄』第15話「妖刀夜話~飛刃~」の重大なネタバレを含みます。未視聴の方はご注意ください。
舞台は江戸、文久二年。第2クールが本格的に始動し、甚夜の長く孤独な旅は、日本の歴史が大きく揺れ動く幕末の動乱期へとその歩みを進めました。
一見すると、今回の第15話は妖刀を巡る一つの事件が解決する単発のエピソードのように映るかもしれません。しかし、その水面下では、今後の物語を根底から揺るがすであろう無数の伏線が、まるで蜘蛛の巣のように巧妙に張り巡らされています。
時代の奔流に翻弄される人々の思惑、鬼と人の新たな関係性、そして甚夜と固い友情で結ばれているはずの直次の心に芽生えた、小さな、しかし見過ごすことのできない変化の兆し。
今回は、妖刀「夜刀守兼臣」が紡いだ一夜の怪異譚の裏に隠された、登場人物たちの複雑な心情と、この先に待ち受けるであろう過酷な運命の序章を、丁寧に読み解いていきたいと思います。ミステリーとロマンス、そして時代の哀しみが交錯する物語の深淵へ、ご案内しましょう。
前話(第14話)のふりかえり:過去と未来を繋ぐ「妬心」の記憶
前回の第14話「妬心の現身」では、物語の時間が突如として天保十年(1839年)に遡り、甚夜がまだ葛野の巫女守「甚太」であった頃の、甘くも切ない過去が描かれました。想い人である巫女・白雪と、その護衛に新たに加わった村長の息子・清正。三人の間で揺れ動く繊細な感情と、甚太の心に芽生えた嫉妬という「心の隙」を突く妖との戦いは、彼の精神的な成長、そして「守り刀」としての覚悟を固める重要な儀式となりました。未来を知る私たちにとって、今は亡き白雪との穏やかな日常はあまりにも尊く、胸を締め付ける光景でしたね。しかし物語は過去の追憶だけでは終わりません。ラストシーンで再び時は流れ、文久二年の江戸へ。甚夜の旧友・三浦直次が「夜兎の守兼臣(やとのもりかねおみ)」という、いわくつきの妖刀の存在を知ったところで幕を閉じ、新たなミステリーの始まりを強く予感させました。過去の記憶が、未来の事件へとどう繋がっていくのか。その巧みな構成に、期待が高まる回でした。
第15話「妖刀夜話~飛刃~」に登場した人物紹介
甚夜(じんや / CV: 八代拓)

鬼を喰らい、その力を糧に170年以上を生き続ける「鬼喰いの鬼」。鬼と化した最愛の妹・鈴音を討つという唯一の目的のためだけに生きています。幕末の動乱や思想の対立には一切興味を示さず、己の信念のみを貫こうとします。今回は、妖刀「夜刀守兼臣」に興味を持ったことから、時代の大きなうねりの中に否応なく巻き込まれ、刀に宿された悲しい記憶と対峙することになります。
三浦直次(みうら なおつぐ / CV: 上村祐翔)

甚夜の数少ない人間の友人。幕府の役人(御徒目付)として江戸の治安を守る立場にあります。妻「きぬ」を娶り、ささやかな幸せを手に入れていますが、その一方で傾きゆく幕府の現状と時代の変化に深い苦悩を抱いています。15話の終盤、彼の口から語られた決意は、今後の甚夜との関係に大きな影を落とすことになりそうです。
畠山康秀(はたけやま やすひで / CV: 小西克幸)

会津藩の武士で、江戸にある中屋敷に住まう切れ者。柔らかな物腰とは裏腹に、鋭い眼光と底知れぬ野心を秘めています。鬼である甚夜の素性を一目で見抜き、自らの陣営に引き入れようと画策します。「鬼と武士は時代の遺物、いわば同胞」と語る彼の思想は、佐幕派としての強い危機感の表れであり、目的のためには手段を選ばない冷徹さを感じさせます。
土浦(つちうら / CV: 白熊寛嗣)

畠山康秀に仕える、大男の「鬼」。かつて人に裏切られた過去を持ち、その失意の底から救ってくれた康秀に絶対の忠誠を誓っています。同じ鬼でありながら人に仕えるという全く異なる生き方を選んだ存在として、甚夜に己の在り方を問いかけます。
杉野又六(すぎの またろく / CV: 坂田将吾)

畠山家の屋敷で御坊主(雑用係)を務める男。突如として妖刀「夜刀守兼臣」を買い求め、その刀で妻を斬殺し行方をくらまします。彼の凶行が今回の事件の発端となりますが、その背景には、妖刀の力だけでは説明できない、人間の心の弱さと闇が深く関わっていました。
きぬ
直次が新たに娶った妻。15話では名前のみの登場ですが、甚夜との間に何らかの因縁があることを匂わせるセリフがありました。彼女の存在は、直次の今後の選択に大きな影響を与える可能性を秘めた、謎多き女性です。
やと

妖刀「夜刀守兼臣」に宿っていた記憶の中に登場する、美しい女の鬼。刀鍛冶である人間の夫・兼臣を深く愛し、「鬼と人はともに生きられる」という夫の願いを叶えるため、自らの血を刀に捧げました。彼女の純粋な想いと悲しい運命は、甚夜の心に静かな波紋を広げます。
あらすじ:妖刀が結ぶ、幕末の闇と人の業
時は文久二年(1862年)。黒船来航から始まった動乱の気配は、江戸の町を色濃く覆っていました。ある日、甚夜は旧友の直次から、鬼を妻に持った男が打ったという妖刀「夜刀守兼臣」の噂を聞きつけます。その刀は三日前、会津畠山家の中屋敷で御坊主を務める杉野又六という男の手に渡ったといいます。

一介の雑用係がなぜ高価ないわくつきの刀を求めるのか。腑に落ちないながらも、甚夜は直次と共に畠山家を訪れます。しかし、当の又六は、その日の朝方に妻を斬り殺し、屋敷から姿を消した後でした。
屋敷の主である畠山康秀は、甚夜が鬼狩りであることを知っており、あまつさえ彼が「鬼」であることまで見抜いていました。康秀は「この国と武士の誇りを守るため、力を貸してほしい」と甚夜をスカウトしますが、甚夜は「思想を曲げて何かを斬るのは堕落だ」と一蹴します。
康秀が残した「杉野は富善という料理屋に興味を持っていた」という言葉を頼りに、甚夜と直次は調査を続けます。富善は、武市瑞山率いる「土佐勤王党」の会合場所でした。佐幕派の畠山家に仕える杉野が、敵対するはずの土佐勤王党に何の用があるのか。直次は、杉野の目的が土佐勤王党の中心人物、武市瑞山の暗殺ではないかと推理します。
その夜、甚夜はついに妖刀を手にした杉野又六と対峙します。「この刀で勤王の阿呆どもを皆殺しにする」と狂気に満ちた言葉を吐く杉野。妖刀が放つ斬撃をかわし、甚夜は一撃で杉野を無力化します。

そして、甚夜は妖刀に触れ、その記憶を「同化」します。脳裏に流れ込んできたのは、刀鍛冶の兼臣とその妻である鬼「やと」の、愛に満ちた日々。「鬼と人は共に生きられる」――その願いが込められた刀が、なぜ悲劇を生んだのか。記憶は、杉野が自らの手で妻を斬り殺す場面へと繋がり、途絶えます。

甚夜は、事件の真相を看破します。妖刀は人を操ってなどいなかった。杉野は自らの意思で妻を殺し、その罪の意識から逃れるために「刀のせい」にしたに過ぎないのだと。そして、その心の弱さに畠山康秀が付け込んだのだと。
全てが終わり、帰り道を歩く二人。しかし、直次は突如、甚夜の前に立ちふさがり、決然とした表情で告げます。「私もまた、生き方を決めねばならないのかもしれません」――。その言葉は、二人の間に横たわる、埋めがたい溝の始まりを予感させるのでした。
第15話の深掘り解説:張り巡らされた伏線と交差する思惑
ここからは、物語の裏に隠された伏線や、登場人物たちの心情をさらに深く読み解いていきましょう。一見、静かに進んだように見えたこのエピソードには、未来の嵐を予感させる重要な種がいくつも蒔かれていました。

直次の妻「きぬ」の正体とは?元夜鷹が選んだ新たな人生と甚夜との因縁
今回のエピソードで、直次が「きぬ」という女性と結婚したことが明らかになりました。注目すべきは、直次の家への誘いに対して甚夜が口にした「あれが私の顔を見て喜ぶとは到底思えんが」というセリフです。これは、甚夜ときぬの間に、我々がまだ知らない過去の因縁が存在することを強く示唆しています。
ここで思い出されるのが、第11話に登場した情報屋の「夜鷹」です。彼女は直次と浅からぬ縁があることが示唆されており、甚夜が彼女に「お前に何かあれば直次に恨まれる」と冗談めかして言うシーンがありました。このことから、直次の妻「きぬ」の正体は、かつて情報屋「夜鷹」として江戸の裏社会を生きていた女性である可能性が極めて高いのです。
では、なぜ幕府の役人である直次が、元夜鷹の彼女と結ばれたのでしょうか。そこには、身分や過去に囚われず、一人の人間として彼女を愛した直次の誠実な人柄がうかがえます。そして甚夜のセリフの真意。これは、彼女が過去に甚夜と何か揉め事を起こしたというよりは、甚夜の不器用な優しさの表れと見るべきでしょう。鬼狩りである甚夜の存在は、江戸の闇を思い出させるもの。せっかく手に入れた「きぬ」としての平穏な日常を、自分の顔を見ることで乱してしまいたくない。そんな配慮から出た言葉ではないでしょうか。きぬの過去、そして甚夜との関係は、今後の直次の行動や心情にも大きく影響を与える、非常に重要な伏線と言えるでしょう。
幕末の動乱、「土佐勤王党」とは何か?歴史の渦が物語を動かす
物語の背景として色濃く描かれたのが、幕末の動乱です。嘉永六年(1853年)の黒船来航をきっかけに、日本は「開国」か「攘夷(じょうい)」かで国論が二分されます。直次のセリフにあったように、これまでの「主君のために刀を振るう」という武士の価値観は揺らぎ、「自らの思想のために刀を振るう」者たちが現れ始めます。
その象徴として登場したのが、武市瑞山(たけち ずいざん)が率いる「土佐勤王党(とさきんのうとう)」です。
史実における土佐勤王党は、土佐藩の下級武士たちを中心に結成された、過激な尊王攘夷思想を持つ政治結社です。「尊王攘夷」とは、「天皇を尊び、外国勢力を打ち払う」という思想のこと。彼らは、頼りない幕府(公儀)に代わり、天皇を中心とした新しい国づくりを目指しました。その活動は、時には「天誅」と称した暗殺も辞さない過激なもので、京や江戸の政治を震撼させました。この物語の舞台である文久二年は、まさに土佐勤王党が最も勢力を誇っていた時期にあたります。彼らの存在が、この時代の不穏な空気を象徴しているのです。
時代の遺物が見る夢は―畠山康秀の思想と野望
土佐勤王党とは真逆の立場にいるのが、会津藩の畠山康秀です。彼は自らを**「佐幕派(さばくは)」**、つまり徳川幕府を補佐し、現在の体制を守ろうとする側に位置づけています。
彼の思想の根幹にあるのは、「このままでは日本は諸外国に侵され、武士という存在も消え失せてしまう」という強い危機感です。そして、彼は甚夜にこう語りかけます。「鬼と武士は同じく時代に打ち捨てられし旧世代の遺物、いわば同胞。ならば共に手を取り合うことができるはずだ」と。

これは、非常に興味深い視点です。時代の変化によって「不要なもの」とされつつある武士と、古来より人に忌み嫌われてきた鬼。両者を「同胞」と捉え、手を組むことで現状を打破しようというのです。
では、彼が鬼である甚夜に求めたものは何だったのでしょうか。それは、甚夜が持つ「思想に染まらない純粋な暴力」です。思想を持つ者は、時に迷い、躊躇する。しかし、甚夜はただ「斬るべきものを斬る」というシンプルな原理で動いています。康秀は、その純粋な力を、自らの政治的野望、すなわち敵対勢力である土佐勤王党のような尊王攘夷派を排除するための「刃」として利用しようとしたのです。彼の物腰の柔らかさの裏には、自らの理想のためなら鬼すらも手駒にする、恐ろしいほどの冷徹さと覚悟が隠されています。
「昔、似たようなことをいう鬼がいた」―甚夜の過去と謎の鬼の正体
畠山康秀の誘いを、甚夜は「開国だ攘夷だと言われてもさほど興味はない」と一蹴します。そして、かつて出会ったある鬼の言葉を回想します。

「昔、似たようなことをいう鬼がいた。この国はいずれ外からの文明を受け入れ発達していく。だが速すぎる時代の流れに鬼は淘汰され、我らはいつか昔話の中だけで語られる存在になるのだと」
この言葉を語った鬼は一体誰なのでしょうか。170年という長い時を生きてきた甚夜は、数えきれないほどの鬼と出会い、戦ってきたはずです。その中には、鈴音のようにただ破壊を望む鬼だけでなく、時代の流れを憂い、自らの種族の行く末を案じるような、知性的な鬼もいたのでしょう。
この鬼は、甚夜にとっての師のような存在だったのかもしれません。あるいは、敵として対峙しながらも、その思想にどこか共感できる部分があったのかもしれません。重要なのは、甚夜がこの言葉を「似たようなこと」と捉えた点です。康秀の「武士が消える」という憂いと、謎の鬼の「鬼が淘汰される」という予言。甚夜は、両者の言葉に「時代から取り残される者たちの悲哀」という共通項を見出したのです。しかし、それでも彼は与しない。なぜなら、今の甚夜にとっての全ては、鈴音を討つこと。それ以外の思想のために己の刃を汚すことは、彼が最も嫌う「堕落」に他ならないからです。このセリフは、甚夜の達観した視点と、揺るぎない信念の強さを物語っています。
尊王攘夷派 vs 佐幕派 ― 対立の構図を読み解く
このエピソードを理解する上で欠かせないのが、**「尊王攘夷派」と「佐幕派」**の対立です。物語の中で直次が解説してくれたように、この二つの派閥は、幕末の日本を真っ二つに引き裂きました。
派閥 | 主な思想 | 代表的な勢力(作中) |
---|---|---|
尊王攘夷派 | 天皇を国の中心に据え、外国勢力を打ち払うべき。幕府は頼りにならない。 | 武市瑞山率いる土佐勤王党 |
佐幕派 | 徳川幕府を補佐し、現在の幕藩体制を維持することで国難を乗り切るべき。 | 会津藩の畠山康秀 |
物語は、この対立構造を巧みに利用しています。佐幕派である畠山家に仕える杉野又六が、なぜ敵対するはずの尊王攘夷派の巣窟「富善」に向かおうとしたのか。その目的は、直次の推理通り、土佐勤王党のリーダーである武市瑞山の暗殺でした。しかし、その動機は「国のため」という高尚なものではなく、もっと個人的なものでした。その心の隙を、佐幕派の畠山康秀に利用されたというのが、事件の構図です。歴史の大きな流れと、個人の小さな思惑が交錯する、まさに『鬼人幻燈抄』らしいミステリーと言えるでしょう。
妖刀に宿る願い―刀鍛冶・兼臣と鬼の妻「やと」の悲恋
甚夜が妖刀「夜刀守兼臣」を同化したことで、我々はその刀が生まれた背景を知ることになります。そこに宿っていたのは、刀鍛冶の夫・兼臣と、その妻である鬼「やと」の、愛に満ちた記憶でした。

「俺とお前の名を持つ刀が百年後どうなるのか、残念ながら俺には見ることは叶わん。だからやと、代わりにお前が見てきてくれねえか?そしてもしこいつが力を得られたなら、疑わないで欲しい。…それでも俺たちは、鬼と人はともに生きられるのだと」
兼臣は、人と鬼の共存という、あまりにも純粋で美しい願いを刀に込めました。そして、鬼である妻のやとも、その夫の想いを叶えるために、自らの血を刀に捧げたのです。この刀は「妖刀」などではなく、本来は人と鬼の愛の結晶であり、未来への希望そのものでした。

この記憶は、甚夜の心にどう響いたのでしょうか。彼の目的は、鬼となった妹を討つこと。彼の旅は、人と鬼が決して共存できないという悲劇から始まっています。兼臣とやとが紡いだ「鬼と人は、ともに生きられる」という理想は、甚夜が向き合い続けなければならない根源的なテーマであり、彼の孤独な魂に、静かでありながらも確かな波紋を広げたはずです。
「手近に妻がいたから斬った」―甚夜が看破した人間の心の闇

直次は「妖刀に心を惑わされ、妻を斬り殺してしまうなど」と恐怖しますが、甚夜はその見方を静かに否定します。

いや、それは少し違う。…あの男は手近に妻がいたから斬った、それだけだ。だがそれに耐えきれず、刀に操られて殺したのだと思い込んだ。畠山はそこに付け込んだのかもしれん」
この甚夜の言葉は、事件の核心を冷徹に、しかし正確に射抜いています。彼は、杉野又六という人間の心の奥底に潜む、醜くも哀れな本質を見抜いたのです。
杉野は、おそらく日々の生活に何らかの不満や鬱屈を抱えていたのでしょう。雑用係という立場、変わらない毎日。そんな中で、彼は「何か大きなことを成し遂げたい」「自分の存在を証明したい」という漠然とした渇望を抱いていたのかもしれません。しかし、彼にはそれを実行する勇気も具体的な計画もありませんでした。
そこへ現れたのが、畠山康秀という扇動者と、「夜刀守兼臣」という大義名分を与えてくれる道具でした。杉野は「国のため」という目的を与えられ、妖刀の力を手にしたことで、万能感に酔いしれたのです。彼は「武市瑞山を斬る」という大義名分を手に入れる前に、まず「斬る」という行為そのものの快感と衝動に駆られてしまいました。そして、その最初の犠牲者が、何の罪もなく、おそらくは彼の身を案じていたであろう、一番身近な妻だったのです。
自らの衝動で妻を手にかけた後、彼はその罪の重さに耐えられなかった。だからこそ、「妖刀に操られた」という都合の良い物語に縋り、自分は被害者なのだと思い込もうとした。甚夜が看破したのは、超常的な力による悲劇ではなく、ごくありふれた人間の弱さが引き起こした、あまりにも救いのない悲劇の真相でした。この冷徹なまでの人間観察眼こそ、甚夜が170年という長き時を生きてきた証なのかもしれません。

総括と次回への期待:友の決別が意味するもの
第15話「妖刀夜話~飛刃~」は、妖刀を巡る一つのミステリーを通して、幕末という時代の混沌、そしてその中で生きる人々の交錯する思惑を鮮やかに描き出しました。
「鬼と人は共に生きられる」――刀鍛冶・兼臣が遺した切なる願いが込められた刀は、皮肉にも人間の心の弱さによって「妖刀」へと堕とされ、悲劇を生みました。その背景には、自らの思想のために鬼すらも利用しようとする畠山康秀の野望と、時代の流れに取り残されまいと足掻く者たちの哀しみが渦巻いていました。
しかし、今回の物語で最も私たちの胸に深く突き刺さったのは、エンディングで描かれた甚夜と直次の静かな、しかし決定的な亀裂でしょう。
事件が解決し、いつものように並んで歩く二人。しかし、直次は突如として甚夜の前に立ちふさがり、決然とした表情でこう告げます。

「甚殿はよく、生き方を曲げられないと仰っていましたね。私もまた、生き方を決めねばならないのかもしれません」
このセリフは、これまでの二人の関係性が根底から覆る可能性を示唆する、あまりにも重い言葉です。甚夜は、何があっても「鈴音を討つ」という己の生き方を曲げられない男。一方、直次は幕府の役人として、そして「きぬ」という守るべき者を得た男として、激動の時代の中で自らの立ち位置を「決めなければならない」岐路に立たされています。
彼が決める「生き方」とは、一体何を意味するのでしょうか。それは、佐幕派として幕府のために尽くす道なのか。それとも、また別の道なのか。いずれにせよ、その道は、個人の情や友情よりも「公」や「思想」を優先させる、過酷なものであるに違いありません。そしてその道は、おそらく甚夜の生き方とは相容れないものになるのでしょう。
固い友情で結ばれていたはずの二人の道が、これから分かたれていく。その予感が、胸を締め付けます。友との決別は、甚夜にとって鈴音を失って以来の、新たな孤独の始まりとなるのでしょうか。
次回、物語はさらに大きく動き出すはずです。妖刀が残した波紋、そして直次の決意が、二人の運命をどこへ導くのか。幕末の闇が深まる中、私たちはただ固唾をのんで見守るしかありません。
今回はここまで。それでは、また次回お会いしましょう。
『鬼人幻燈抄』関連書籍とBlue-layの紹介
江戸編 幸福の庭 (双葉文庫) L文庫小説
百七十年後に現れる鬼神と対峙するため、甚太は甚夜と改名し、第二の故郷・葛野を後にした。幕末、不穏な空気が漂い始める江戸に居を構えた甚夜は、鬼退治の仕事を生活の糧に日々を過ごす。人々に紛れて暮らす鬼、神隠しにあった兄を探す武士……人々との出会いと別れを経験しながら、甚夜は自らの刀を振るう意味を探し続ける――鬼と人、それぞれの家族愛の形を描くシリーズ第2巻!
✨ 「和風ファンタジー『鬼人幻燈抄(コミック): 』(Kindle版) がついに登場!~
「切なく美しい」「心に響く」と話題沸騰!鬼才・里見有が描く、和風ファンタジー『鬼人幻燈抄(コミック) : 1』(Kindle版) がついに登場しました!
舞台は江戸時代の山深い集落・葛野。巫女「いつきひめ」を守る青年・甚太は、未来を語る不思議な鬼と出会い、運命の歯車が回り始めます。墨絵のような美しい描写、胸を締め付ける切ない物語が、あなたの心を掴んで離しません。
愛と憎しみ、生と死が交錯する世界で、甚太は刀を振るう意味を問い続けます。江戸から平成へ、170年という途方もない時間を旅する鬼人の壮大な物語が、今、幕を開けるのです。原作小説の重厚な世界観を、美麗な作画で見事に再現。原作ファンも納得の完成度です。
2025年3月31日からは、待望のTVアニメ放送も決定!アニメ化でさらに注目が集まること間違いなし。今すぐKindle版で『鬼人幻燈抄』の世界に浸りませんか? 読めばきっと、あなたの心に深く刻まれる、忘れられない物語となるでしょう。
『鬼人幻燈抄 葛野編 水泡の日々【電子版特別短編付き】』発売開始!
心を揺さぶる和風ファンタジー、ついにKindle版で登場! 江戸時代の山村を舞台に、巫女の護衛を務める青年・甚太と、遥か未来を語る不思議な鬼との出会いから物語は始まります。刀を振るう意味を問いながら、時代を超えて旅する鬼人の姿は、読む者の魂を強く揺さぶるでしょう。
「何度読んでも号泣必至」「人生観が変わった」と絶賛されたWEB小説が、ついに書籍化! 全編改稿に加え、書籍版番外編も収録された充実の内容です。さらに、電子版には特別短編「暗夜」が付属!
緻密に練られた世界観と、切なくも美しい物語が織りなす感動を、ぜひご自身の目で確かめてください。歴史ファンタジー好きはもちろん、心に響く物語を求めるすべての人におすすめです。今すぐリンクをクリックして、壮大な物語の第一歩を踏み出しましょう!
VODの紹介
2025年春アニメは深夜枠が多い(別に今回に限るわけではないけどね)のでVODで見るのがおすすめ。
僕が紹介するアニメは以下のVODで見れるので加入してない人はどれかに加入するといいですよ。
配信サービス | 月額料金(税込) | 無料期間 | 特徴 |
---|---|---|---|
U-NEXT | 2,189円 | 31日間 | 豊富なコンテンツ数。ラノベやマンガも楽しめ、利用料金の40%がポイント還元。 |
Amazonプライム | 600円 | 30日間 | 独占配信や話題作が充実。Amazon利用者におすすめ。 |
ABEMAプレミアム | 960円 | 2週間 | 地上波放送中の作品や恋愛番組のオリジナルコンテンツが豊富。 |
おすすめポイント
- U-NEXT: アニメ以外にもラノベやマンガが楽しめる。ポイント還元で実質的なコストを抑えられる。
- Amazonプライム: コストパフォーマンスが高く、独占配信が魅力。Amazon利用者には特に便利。
- ABEMAプレミアム: 地上波作品の視聴やオリジナルコンテンツが充実。テレビ番組やニュースも楽しめる。
特にABEMAをおススメ!月額料金は960円。
無料放送も多く、コンテンツも充実しています。VODだけじゃなくテレビ番組やニュースも豊富なんでおススメです。
☟アニメ見るならここがおすすめ

☆☆☆☆☆今回はここまで。
👉使用した画像および一部の記述はアニメ公式サイトから転用しました。
【アニメ関連はこっちから】

