終末ツーリング9話感想・考察 モビリティリゾートもてぎで目覚めた「機械たちの魂」

こんにちは!びわおちゃんブログ&アニオタWorld!へようこそ。

今日は『終末ツーリング』第9話「モビリティリゾートもてぎ」の感想と考察を、最初から最後まで通してじっくりお届けします。

8話「霞ヶ浦・もてぎ」で、僕たちはホタルの光と“魂”という少し不思議なテーマに触れました。霞ヶ浦の湖面に揺れる光と、夜のサーキットに沈む静けさ。その続きとして始まる9話は、ホンダの実在ミュージアム「ホンダコレクションホール」を舞台に、誰もいないはずのサーキットに残された“機械たちの記憶”と向き合う物語です。

見終わったあとで、「きれいだったけど、結局何が起きていたの?」と、胸の奥が少しざわざわした方もいるかもしれません。今回の記事では、

  • モビリティリゾートもてぎとホンダコレクションホールが、どんな“夢の舞台”なのか
  • 「待って!」とヨーコを呼び止めた声は、誰の、どんな想いだったのか
  • 夢に現れた姉チコとレーシングスーツが示している“もう一つの物語”
  • そしてラストで長尺で流れた特別エンディング「ハルジオン」が、なぜあの場面に選ばれたのか

ここを軸に、旅とロマンスと少しのサスペンスを絡めながら、一緒に紐解いていきたいと思います。
あなた自身の“答え”も、ぜひ心の中で用意しながら読んでみてくださいね。


目次

  1. 実在のサーキットとしてのモビリティリゾートもてぎ
  2. ホンダコレクションホールという“夢と歴史の箱庭”
  3. 「待って!」と囁いたのは誰? ホタルの光と電源室への導き
  4. 2001年型NSR500とS600が開いた、恋とスリルのサーキット
  5. 夢の中の姉チコ、レーシングスーツ、そして「僕たちのほかにも誰かいる?」
  6. 整備中に聞こえた囁きは、誰のものだったのか
  7. 「ありがとう」と「夢を」、そしてハルジオンというレクイエム
  8. ヨーコにしか見えなかった、最後のレース
  9. おわりに――9話は「機械たちの卒業式」であり、夢の巡礼の通過点
  10. 旅の思い出を、あなたの手元に。『終末ツーリング』の世界を深く味わうアイテムたち
  11. 作品情報

実在のサーキットとしてのモビリティリゾートもてぎ

まずは、今回の舞台になったモビリティリゾートもてぎという場所から、ゆっくり見ていきましょう。ここはアニメオリジナルではなく、栃木県に実在するサーキット&リゾート施設です。

もともとの名前は「ツインリンクもてぎ」。この“ツイン”という言葉どおり、ふたつの異なる性格を持ったコースを組み合わせた設計になっています。ひとつは、ヨーコが全開で走り抜けたロードコース。もうひとつは、その上をぐるりと回るオーバルコースです。

作品中でもヨーコが

「元々はツインリンクモテぎって名前だったみたいだね」

と、さらりと説明していましたね。 その背後には、高低差を含んだ立体的なコースレイアウトが映り、さらに

「見てアイリー。セロー向きのダートコースもあるよ。1日じゃ遊びきれないや。」

と笑うシーンも描かれていました。

ロード、オーバル、ダート。
それぞれ違う走り方ができるコースを一つのリゾートの中に抱え込んでいるあたり、「モビリティの遊園地」という表現がぴったりです。

ただ、9話で切り取られているのは、そんな賑やかな昼の顔ではありませんでした。

観客がひとりもいないスタンド。
音の消えたコース。
暗い空の下を、セローのヘッドライトだけが細く伸びていく。

ここは、かつて数えきれないほどの歓声とため息を飲み込んだステージの“跡地”です。
その静けさの中に、かつてここで交わされた約束や、果たしきれなかった夢の残り香が、まだかすかに漂っている――そんな気配を、9話は丁寧に描いていました。

ホンダコレクションホールという“夢と歴史の箱庭”

「待って!」という声に振り向き、ヨーコがセローを走らせて辿り着いたのが、ホンダコレクションホール。ここも現実のモビリティリゾートもてぎの敷地内に実在するミュージアムです。

公式サイトでは、このホールを

「ホンダの夢・情熱・歴史が詰まった世界唯一のミュージアム」

と紹介しています。

中に入ると、フロアは大きく時代ごとに分けられています。創業期から1970年代前後にかけて、世界に挑み始めた二輪たちが肩を並べているエリアがあり、そこから先には四輪レースで世界を沸かせたマシンたちが待っています。

さらにその奥には、発電機のようなパワープロダクト、農機具、ロボット、そして空さえも走るジェット機……と、ホンダが「人とモノを動かすこと」にかけてきた情熱が、さまざまな姿で展示されています。

興味深いのは、これほど充実した内容でありながら、ホンダコレクションホール単体の入館料は無料だということです(リゾートの入場料や駐車場代は別途必要ですが)。FAQにも

「ホンダコレクションホールへのご入館には別途料金は発生しません。」

と明記されていて、自分たちの歴史や夢を、できるだけ多くの人に、敷居を低くして見てもらおうという姿勢が伝わってきます。

そして、このホールの考え方の中でもうひとつ大事なのが、“動態保存”的な視点です。

「動態保存」というロマンと、ヨーコが押したスイッチ

アニメの中で、タキシード姿の案内ロボット・ISAAQ(アイザック)、通称アイちゃんが、ヨーコに向かってこう語る場面がありました。

「ホンダコレクションホールでは収蔵する車両に最新技術を施した『動態保存』を行っています。」

公式サイトには「動態保存」という単語自体は登場しないものの、ホールでは「Honda Sound Demonstration」という中庭デモンストレーションランが定期的に行われています。

これは、展示されている車両のエンジンを実際にかけて走らせ、その音や振動を来場者に体験してもらうイベントです。 単にガソリンを抜いてガラスケースに封じ込めた“標本”ではなく、今でもエンジンに火を入れれば走り出せる状態を維持している。

この運用そのものが、「動く状態で保存する=動態保存」の哲学を、そのまま実践している形だといえます。

終末世界のコレクションホールで、ヨーコが電源室のスイッチを押した瞬間。
長い年月をかけて守られてきた「動く歴史」が、最後の一夜だけ、その本来の姿を取り戻した。

あのワンシーンは、

  • 現実のホンダが「走れる形でマシンを残そう」としてきた努力と
  • 終末後の世界で、それを見届ける一人の少女の巡礼

この二つが交差する、象徴的な瞬間だったのだと思います。


「待って!」と囁いたのは誰? ホタルの光と電源室への導き

8話のホタルが“魂のナビゲーション”に変わるまで

9話の不思議さを理解するには、やはり8話「霞ヶ浦・もてぎ」を思い出す必要があります。

泥だらけのレンコン畑、カモの解体という、かなり生々しい“いのち”の現場を通り抜けたあと、ヨーコとアイリは夜の霞ヶ浦でホタルの光を眺めていました。その中で、

「魂って、何なんだろうね」

と、ヨーコがぽつりとこぼしたシーンがありましたよね。

あの時点では、ホタルの光はまだ、「生と死のあわいに浮かぶ、命の残り火」のようなイメージにとどまっていました。でも、9話まで観て振り返ると、ホタルの光はそれ以上の役割を果たしていたように見えてきます。

8話のラストで、ヨーコはホタルに誘われるように歩みを進め、その先にある部屋に自然と入っていきました。9話冒頭でアイリから

「ヨーコ、電気室の場所知ってたの?」

と聞かれ、

「なんで?」

と首をかしげる場面があります。本人には場所の記憶がないのに、足は迷わなかった。

ここに、「光=魂」というモチーフが一段階進んで、“魂の側からのナビゲーション”になっている感覚があるんですよね。

ホタルの光は、単に「きれいな終末世界の情景」ではなく、ヨーコを“何か大切なもの”へと導く導火線でもある。8話の時点ではまだその行き先はぼんやりしていましたが、9話でようやく、そのゴールがホンダコレクションホールの電源室として姿を現した、と僕は受け取りました。

あなたはどうでしょう?
あのホタルのシーンを、今あらためて思い出してみると、印象が少し変わってきませんか。

「待って!」と呼び止めた声の、僕なりの答え

サーキット走行を終えて、「また走りに来よう!」とセローにまたがったヨーコ。その背中に、突然飛び込んでくる複数の声。

「待って!」

この声は、アイリには一切聞こえていません。
ヨーコだけが、その声を振り返ってしまう。

声に導かれるようにセローを走らせたヨーコは、やがてホンダコレクションホールの前にたどり着きます。

ここで、「誰がヨーコを呼んだのか?」という問いが立ち上がります。

僕が最初に浮かべた答えは、とてもシンプルです。

「待って!」と叫んだのは、ホールに眠るマシンたちの“最後のお願い”

ではないか、ということ。

展示されているのは、かつて世界中のサーキットで戦ってきたマシンたちです。
彼らはレースのためにつくられ、レースのためにチューニングされ、レースの中で歓声と悔しさの両方を味わってきました。

そんなマシンたちが、終末世界の静まり返ったホールの中で、「もう一度だけサーキットを走りたい」と願ったとしても、それはとても自然な感情に思えます。

でも、自分たちには動き出すための“最初の一歩”がありません。
ドアノブに手をかける腕も、ブレーカーを上げる指も持っていない。

だからこそ、ホタルの光=魂の気配を感じ取れる一人の少女に向けて、

「待って。ここに、まだ終わっていない夢がある。」

と、必死に呼びかけたのではないか。

そう考えると、あの「待って!」が、ただの怪奇現象ではなく、とても切実なラブコールのように感じられてきます。

もうひとりの“声の主”、姉チコというガイド

そしてこの「待って!」の中には、もうひとり、別の気配も混ざっていると僕は感じています。それが、ヨーコの姉・チコです。

7話「つくば」以降、ヨーコの夢には何度もチコが現れ、「頑張って、でも無茶しないのよ」と声を掛けてくれます。 9話の夢でも、サーキットに出る直前のヨーコに、同じように言葉をかけ、スマホで写真を撮っていました。

ヨーコがレーシングスーツに袖を通したとき、

「お姉ちゃんも着てたやつだ!」

と笑顔を見せたのも、かなり決定的なセリフです。チコもまた、このサーキットを走ったことがある。ヨーコはその“背中”に、今ようやく追いつこうとしているわけです。

もし、姉もかつてここで走り、ホンダコレクションホールにも足を運んでいたのだとしたら――。

「妹がようやく同じ場所まで来てくれたのだから、ここで終わりにしないで」

という姉の想いも、「待って!」という声の中に重なっていたのではないか。

マシンたちの「走りたい」という欲求と、
姉の「見届けたい」という優しいわがまま。

そのどちらもを受け止める“媒介役”として、ヨーコはここに立っている。
そんな構図が、9話全体から強く感じられました。

あなたは、このあたり、どう受け取りましたか?
機械たちの声だけなのか、それとも姉のささやきも一緒に聞こえてきたのか。
ここはぜひ、あなた自身の答えを持ってほしい部分です。


2001年型NSR500とS600が開いた、恋とスリルのサーキット

ヨーコが一目惚れした“危険な相棒”NSR500

ホンダコレクションホールの中で、ヨーコの視線を真っ先に釘付けにしたのが、2001年型NSR500でした。案内ロボットのアイちゃんは、このマシンを

「当館の展示中で最も過激でアグレッシブな一台」

と紹介します。

世界の頂点を争った2ストロークGPマシンというだけで、もう十分に“危ない香り”が漂っていますが、ヨーコはそんなことを細かく理解しているわけではありません。ただ、あのフォルムと佇まいを目にした瞬間に、「この子に乗りたい」と心が決まってしまった。

スペック表を読む前に恋に落ちてしまったような出会い方です。

翌日、整備を終えたNSR500でサーキットに出たヨーコは、そこでようやく“恋のお相手の正体”を全身で知ることになります。

アクセルを少し開けただけで、空気を震わせるような爆音が響きます。
ガソリンが爆発するたびに、振動がハンドルから、シートから、足元から、ビリビリと伝わってくる。
スロットルをさらに開けた瞬間、後ろから蹴り飛ばされたみたいな加速に、思わず笑い声が漏れてしまう。

そしてコーナーでは、地面に擦れそうなほどバイクを寝かせて、ほんの一瞬でも気を抜いたら吹き飛ばされてしまいそうなスリルに包まれます。

「ガソリンが爆発するのがビリビリと伝わってくる。これがガソリンエンジン!」

電動セローしか知らなかったヨーコにとって、その感覚はまさに“別世界”への扉でした。
怖いのに、それでもアクセルを開けてしまう。
止まりたくないのに、どこかで終わりが来ることもわかっている。

NSR500は、ヨーコにとってそんな“危険で甘い相棒”として描かれていました。

そして、マシンたちの魂が走り去ったあと。
ヨーコがブレーキをかけると、NSR500はそれきり静かに動かなくなってしまいます。

壊れたというより、

「最後の一夜を一緒に走ってくれて、ありがとう」

とでも言うように、自分からそっとエンジンを閉じたようにも見えました。

ヨーコは重くなったバイクを押しながらピットへ戻っていきますが、その背中には、失恋の痛みというよりも、“ちゃんと見送れた相棒”への満足感がにじんでいた気がします。

アイリとS600、ゲームと現実の境界線

一方そのころ、ガレージからホンダS600のレーシング仕様車を引っぱり出していたアイリは、自分は運転席に座らず、専用のゴーグルとコントローラーを装着して、まるでレーシングゲームのように遠隔操縦を始めます。

ヨーコは風と匂いと振動を生身で浴びながらサーキットを走り、
アイリはセンサー情報と映像を通して、俯瞰的にコースを捉えながら走る。

同じコースを、まったく違う身体感覚で共有しているふたりの姿が、とても面白かったです。

S600が軽やかにNSR500を追い抜き、ヨーコが笑いながらアクセルを開けて追いかける。
抜きつ抜かれつを繰り返すうちに、ふたりの間には「勝ち負け」以上の、何か少し甘い空気が漂い始めます。

誰かを追いかけるために、もう一段ギアを上げたくなる。
追いついたとき、横に並んだとき、一瞬だけ視線が交錯する。

それは、恋愛という言葉をあえて持ち出さなくても、十分に“ロマン”と呼べる体験です。

サーキット上でのこの追いかけっこは、
ヨーコとアイリの関係が、ただの「一緒に旅をする相棒」から、

「同じ景色を違う感覚で共有できる、かけがえのない存在」

へと、少しだけ変わった瞬間だったのかもしれません。


夢の中の姉チコ、レーシングスーツ、そして「僕たちのほかにも誰かいる?」

整備中に聞こえた囁きは、誰のものだったのか

NSR500の整備作業を進めている途中で、ヨーコの耳に、誰かの囁き声のようなものが届く場面がありました。言葉としてははっきり聞き取れないものの、「ただの風の音」では済ませられない温度を持った声です。

ヨーコは思わず、

「ねえアイちゃん、僕たちのほかにも誰かいる?」

と尋ねます。

それに対してアイちゃんは、

「いえ、長い間誰もいらっしゃっておりません。」

と静かに答えます。

“誰もいない”と言われているのに、“誰かいる”という感覚だけは強く残る。
ここに、9話特有のサスペンスとロマンスが凝縮されています。

この声を、ホールに眠るマシンたちのざわめきとして受け取ることもできますし、姉チコのささやきが混じっていると読むこともできます。

長いあいだ動かされることのなかったボルトが、ようやくレンチで締め直されていく感触。
固まったオイルが少しずつ温度を取り戻していく予感。

もしマシンたちに心があるのだとしたら、その変化は“どきどき”に近いものとして伝わってくるはずです。
ヨーコは、その鼓動の一部を、耳の奥で拾ってしまったのかもしれません。

一方で、そこには姉の声も重なります。

「そこ、ちゃんと締めて」
「無茶はしないって約束でしょ」

そんなふうに、少し口うるさく、でも愛情をにじませながら見守るチコの姿が、目に浮かんでこないでしょうか。

夢の中で語りかける、「頑張って、でも無茶しないのよ」

作業の途中で、ヨーコはつい居眠りをしてしまいます。
そこで見た夢の中で、彼女はサーキットのスタート直前に立っていました。

その隣には、姉チコがいます。
そして、お決まりの言葉。

「頑張って、でも無茶しないのよ」

チコはそう言って、スマホでヨーコの写真を撮ります。

これは、ただの「もしも」の夢にも見えますが、僕にはもっと現実味のある“記憶の再上映”のように感じられました。

ヨーコがレーシングスーツに袖を通したときの

「お姉ちゃんも着てたやつだ!」

というひと言は、チコがかつて実際にこのサーキットを走ったことを示しています。
そして、ヨーコがいま見ている夢は、そのときの姉の記憶と、自分自身の願望が混ざり合ったものなのかもしれません。

このシーンを思い浮かべながら、もう一度あの「僕たちのほかにも誰かいる?」という台詞を考えてみてください。

ホールの中には、人間は長いあいだ来館していない。
でも、ヨーコのすぐそばには、機械たちの魂と、姉チコの面影が、確かに寄り添っている。

そう考えると、9話のホールはただの廃墟ではなく、“見えない同伴者”に満ちた、とても賑やかな場所として立ち上がってきます。


「ありがとう」と「夢を」、そしてハルジオンというレクイエム

ヨーコにしか見えなかった、最後のレース

クライマックスで描かれるサーキットの光景は、息をのむほど壮大でした。

ヨーコがNSR500で走り続けていると、背後から複数の爆音が迫ってきます。振り向くと、そこにはマシンたちの列があり、次々と彼女を追い抜いていきます。観客席には、スタンドを埋め尽くすほどのロボットたちが現れ、みんなが手を振りながら、「また、こんな日が来るなんて」「懐かしい」と口々に叫びます。

そして、どのマシンも、どのロボットも、ヨーコたちに向かって

「ありがとう」

と伝えていきます。

ここで描かれているのは、終末世界でただ一晩だけ復活した、“サーキットの記憶”そのものです。
観客の歓声も、エンジンの轟音も、タイヤの焼ける匂いも、そのすべてが一気に帰ってくる。

ところが、この壮観な光景は、ヨーコにしか見えていません。
ピットに戻って、さっきのレースのこと、スタンドのロボットたちのことを興奮気味に話しても、アイリには

「わかんない、何が起きたか全然わかんない」

と答えるしかできない。

倒れたアイちゃんは、内部が壊れたままの姿をさらしています。
展示されているマシンたちも、現実には朽ち果てたまま動いていない。

このギャップによって、僕たちはようやく理解します。
さっきまで見ていたあのレースは、

「魂の側から見たサーキットの復活」

だったのだ、と。

ホタルのような青白い光と、「夢を叶えてくれたのかもしれないね」

夕暮れのサーキットに、再びホタルのような青白い光が浮かび上がります。ヨーコが

「あ、またホタル?」

とつぶやいたとき、その光が展示されているバイクや車、ロボットたちからひとつずつ立ち上っていることがわかります。

倒れたアイちゃんからも、ひときわ大きな光が立ち上がり、ヨーコの周りをゆっくりと回ったあと、彼女の両手の間で静止します。

「アイちゃん……?」

呼びかけても、その光は言葉を返しません。
でも、「ありがとう」という感情だけは、はっきりと伝わってくる。

やがて、その光を合図にするように、他の光たちが一斉に空へ昇っていきます。
揺れながら、迷いなく、ひとつずつ夜空へと溶けていく姿は、まさに“卒業式の解散風景”のようでした。

その光景を見上げながら、ヨーコは小さな声でこう言います。

「けど、叶えてくれたのかもしれないね。夢を。」

この「夢」は、一体誰の夢だったのでしょうか。

もう一度サーキットを走りたかったマシンたちの夢。
ここに立ってみたかったヨーコの夢。
妹をこの景色に連れてきたかった姉チコの夢。
自分たちのマシンが、未来の誰かの心を動かし続けることを願ったホンダという企業の夢。

そのすべてが、あの一夜のサーキットの上で重なり合っていたように思えます。

ヨーコが振り返った先に見える、「夢」と刻まれたオブジェ。
本田宗一郎の言葉を象徴するこのオブジェは、ホンダコレクションホール全体のコンセプトを象徴する存在でもあります。

「魂って、人だけのものじゃないのかもしれない。」

そうつぶやいたヨーコの瞳に浮かんだ涙は、彼女自身が“誰かの夢”の一部になってしまったことへの実感からこぼれたものなのかもしれません。

そして、この光景に重なるように流れ出すのが、五阿弥ルナさんが歌う特別エンディング「ハルジオン」です。

ハルジオンという、小さくて、少し寂しげな花の名を冠したこの曲は、
誰もいなくなった世界で、それでも咲き続けるものたちへのレクイエムのように響きます。

通常のエンディングを切り替えて、ほぼフル尺に近い長さで「ハルジオン」を流したのは、

「9話そのものを、マシンたちの卒業式として見届けてほしい」

という制作側からのメッセージだったのではないか、と僕は感じました。

あなたは、あの長く静かなエンディングを、どんな気持ちで眺めていましたか?


おわりに――9話は「機械たちの卒業式」であり、夢の巡礼の通過点

モビリティリゾートもてぎという実在のサーキット。
ホンダコレクションホールという企業ミュージアム。
2001年型NSR500やS600といった、名前だけで胸が高鳴る実在マシンたち。

ここまで並べてみると、9話は確かに「ホンダ全面協力のタイアップ回」や「豪華な企業CM」のようにも見えます。

でも、その表層を一枚めくると、そこにはとても静かで、とてもロマンチックな物語が隠れていました。

8話で芽生えた「光=魂」というモチーフが、9話で「機械たちの魂」としてはっきりと形を持ちはじめたこと。
「魂って、人だけのものじゃないのかもしれない」と、ヨーコが涙ぐみながら言葉を探したこと。
ホンダという企業が掲げてきた「夢」が、終末世界を旅する一人の少女の歩みと重なり合ったこと。

誰もいないと思っていたサーキットには、実はたくさんの“目に見えない観客”がいた。
誰にも届かないと思っていた「ありがとう」は、確かに一人の少女の胸には届いていた。
そして、ずっと昔に終わってしまったはずのレースが、終末世界の夜に、もう一度だけ静かに幕を開けた。

ヨーコとアイリの旅は、これからも続いていきます。
次の目的地では、また別の誰かの想いが、二人を待っているはずです。

そのときヨーコは、今日見送ったホタルの光と青白い魂の行列のことを、ふと思い出すでしょう。

魂って、人だけのものじゃない。
だけど、その存在に気づいて、ちゃんと見送ってあげられるのは、
やっぱり、人間と、その隣を一緒に走ってくれる誰かだけなのかもしれない。

9話「モビリティリゾートもてぎ」は、そんなことをそっと教えてくれる、余韻の長い一編でした。

ここまで読んでくださったあなたは、この回をどんな「卒業式」だと感じましたか?
もしよかったら、その答えを、心の中でそっと言葉にしてみてください。

旅の思い出を、あなたの手元に。『終末ツーリング』の世界を深く味わうアイテムたち

物語の世界にどっぷりと浸かった後は、その余韻をもっと長く、深く楽しみたくなりませんか?ここでは、ヨーコとアイリの旅をいつでも追体験できる、珠玉の関連アイテムをご紹介します。アニメだけでは味わいきれない魅力を、ぜひあなたのコレクションに加えてください。

物語の原点へ―活字と絵で旅する、もうひとつの『終末ツーリング』

アニメで描かれた旅の続きや、あのシーンの裏側が気になっているあなたへ。さいとー栄先生による原作コミックスは、まさに旅の原点です。アニメでは省略された細やかな風景描写や、ヨーコとアイリの心の機微が、静かで美しい筆致で丁寧に綴られています。ページをめくるたびに、乾いた風の匂いや、セローのエンジン音が聞こえてくるかのよう。アニメで感動したあの場面も、原作で読むと新たな発見があるはずです。現在、最新8巻まで発売されており、物語はさらに奥深く、世界の謎へと迫っていきます。二人の旅の始まりから最新の展開まで、あなたのペースでじっくりと追体験してみませんか?活字と絵が織りなす、もうひとつの終末世界があなたを待っています。

ヨーコとアイリが、いつもあなたのそばに。旅の風景を切り取るアクリルスタンド

「あの旅の風景を、いつでも眺めていたい」。そんな願いを叶えてくれるのが、ヨーコとアイリをかたどったアクリルスタンドです。ゲーマーズの記念ストアなどで販売されているアイテムには、二人が仲良く並んだ描き下ろしイラストを使用した大型のものから、旅のワンシーンをSNS風に切り取ったユニークなキーホルダーまで、様々な種類があります。机の上や本棚に飾れば、そこがたちまち終末世界の絶景スポットに。ふとした瞬間に彼女たちの姿が目に入るたび、旅の思い出が蘇り、日々の生活に彩りを与えてくれるでしょう。また、Blu-ray&DVDの完全生産限定版には、原作者・さいとー栄先生描き下ろしのアクリルスタンドが特典として付属するものも。ここでしか手に入らない特別な二人を、ぜひお迎えしてください。

旅の瞬間を、一枚のアートに。集める楽しみが広がる特典イラストカード

一枚一枚に、旅の記憶が凝縮されたイラストカードは、ファンにとって見逃せないコレクションアイテムです。これらの多くは、コミックスの店舗別購入特典や、ポップアップストアなどのイベント限定で配布される非売品。つまり、その時に、その場所でしか手に入らない、非常に希少価値の高い逸品なのです。描き下ろしの美麗なイラストは、ヨーコとアイリの何気ない日常や、旅の途中で見せた特別な表情を切り取っており、見るたびに胸が熱くなります。コンプリートを目指して各店舗を巡るのも、コレクターとしての醍醐味。ファイルに収めて自分だけの画集を作るもよし、お気に入りの一枚を額に入れて飾るもよし。旅の断片を集めるように、あなただけの『終末ツーリング』の思い出を集めてみてはいかがでしょうか。

あの感動を、何度でも。旅情を彩る珠玉のサウンドトラック

『終末ツーリング』の静謐で美しい世界観を語る上で欠かせないのが、心に深く染み渡る劇伴音楽です。音楽を担当するのは、『Re:ゼロから始める異世界生活』や『キングダム』など数々の大ヒット作を手掛けてきた末廣健一郎氏。彼の作り出す音楽は、世界の終わりがもたらす寂寥感と、それでも旅を続けるヨーコとアイリの温かい心の交流を見事に表現しています。2025年12月3日に発売されるオリジナル・サウンドトラックは、その珠玉の劇伴全43曲を収録した豪華CD2枚組。これを聴けば、アニメの名シーンが鮮やかに蘇ります。ドライブのお供にすれば、いつもの道が終末世界のツーリングコースに変わるかもしれません。読書や作業用のBGMとしても最適。耳から旅する『終末ツーリング』を、ぜひ体験してください。

最高の画質と音響で旅を追体験!永久保存版Blu-ray&DVD

アニメ『終末ツーリング』の美しい映像と音楽を最高のクオリティで永久に保存したいなら、Blu-ray&DVDは必須アイテムです。高精細な映像は、廃墟と化した街並みのディテールや、雄大な自然の色彩を余すことなく描き出し、まるで自分がその場にいるかのような没入感を与えてくれます。特に、全4巻で発売される完全生産限定版はファン垂涎の豪華仕様。原作者・さいとー栄先生描き下ろしの全巻収納BOXやアクリルスタンド、さらにはヨーコとアイリが歌うツーリングソングカバーを収録した特典CDなど、ここでしか手に入らないお宝が満載です。お気に入りのシーンを何度でも繰り返し観たり、一時停止して細部をチェックしたりと、配信では味わえない楽しみ方ができます。ヨーコとアイリの旅の記録を、ぜひあなたのライブラリの特等席に加えてください。

作品情報

最後に、放送・配信情報をまとめておきます。お住まいの地域や利用しているサービスに合わせて、視聴計画を立ててくださいね!

テレビ放送日程

2025年10月4日(土)より、順次放送しています。

  • TOKYO MX: 10月4日(土)より 毎週土曜23:30~
  • とちぎテレビ: 10月4日(土)より 毎週土曜23:30~
  • BS11: 10月4日(土)より 毎週土曜23:30~
  • 群馬テレビ: 10月4日(土)より 毎週土曜23:30~
  • メ~テレ: 10月4日(土)より 毎週土曜26:30~
  • 読売テレビ: 10月6日(月)より 毎週月曜25:59~
  • AT-X: 10月6日(月)より 毎週月曜23:00~
    • ※リピート放送:毎週水曜11:00~、毎週金曜17:00~

※放送日時は編成の都合等により変更となる場合もございますので、視聴の際は各局の番組表をご確認ください。

VOD配信日程

地上波放送を見逃してしまっても安心です。本作は各種動画配信サービスでの配信も非常に充実しています。特に一部サービスでは地上波と同時に最速配信が行われるため、いち早く物語を追いたい方には見逃せません。

  • 地上波同時・最速配信(10月4日(土) 23:30~)
    • ABEMA
    • dアニメストア
  • 10月7日(火) 23:30より順次配信開始
    • niconico
    • U-NEXT
    • アニメ放題
    • Lemino
    • DMM TV
    • FOD
    • バンダイチャンネル
    • Hulu
    • TELASA(見放題プラン)
    • J STREAM
    • milplus 見放題パックプライム
    • Prime Video
    • アニメフェスタ
    • TVer
    • ytv MyDo!
    • HAPPY!動画
    • RAKUTEN TV

これだけ多くのプラットフォームで配信されれば、ご自身のライフスタイルに合わせて視聴しやすいですね。見放題サービスに加入している方は、ぜひマイリスト登録をお忘れなく!

※配信日時も変更になる場合がございますので、詳細は各配信サービスの公式サイトにてご確認ください。

自分のペースでじっくり観たい方は

自分のペースでじっくり観たい方は、動画配信サービス(VOD)が便利です。特にABEMAでは地上波同時・最速配信(10月4日(土) 23:30~)です。加入していない方はこの機会にいかがですか?


☆☆☆☆☆今回はここまで。

👉使用した画像および一部の記述はアニメ公式サイトから転用しました。

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