レプリカだって恋をする第7話考察|森すずみの正体と、ナオが本当に探したもの

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「ビラを撒いたのは、森先輩なんですね」――。

その一言が告げられた瞬間、第7話が何を「探していた」のかが、ようやく見えてくる気がしました。犯人探しという外側の物語の裏に、もう一つの「探す」が静かに走っていた回。今回の結論を先にお伝えするとすれば、ナオは犯人を探しながら、「自分と同じ存在」を探していた、ということです。そしてその探索の果てに出会ったのは、同じ孤独を抱えた、もう一人のレプリカでした。全シーンを台本レベルで精緻に追いながら、じっくり考察していきましょう


目次

  1. 第7話「レプリカは、探す。」あらすじ|静かな日常の裏で、何かが動き始めた
  2. 第7話全体構造考察|「探す」は二重構造になっている
  3. 佐藤梢考察|女子グループという「借り物の居場所」で
  4. 律子×ナオ考察|秘密の共有が生む、静かな連帯
  5. 望月隼考察|「二番手」の男が見せた、本物の弱さ
  6. 森すずみ考察|ビラを撒いた理由と、もう一人のレプリカ
  7. クライマックス考察|「あなたが代わりに死ねば」という問いの残酷さ
  8. 第8話への伏線整理|「探す」が終わった後に来るもの
  9. まとめ|探すことは、存在を証明することだ

第7話「レプリカは、探す。」あらすじ|静かな日常の裏で、何かが動き始めた

まずは今回のあらすじを整理しておきましょう。

アキと水族館デートをした翌朝、素直がナオに「誰と行ったの?」と問いかけるところから第7話は始まります。それは決して叱責ではありませんでした。

ナオが「アキくん」と答えると、素直は「大丈夫? 調子悪い?」と言いながらも、どこか複雑な表情を見せる。二人の間に流れる、言葉にならない何かが、この回の通奏低音になっていきます。

学校では、クラスメイトの佐藤梢がナオを女子グループのお弁当に誘います。初めて「素直」としてではなく、「愛川さん」として輪の中に入るナオ。しかしそこで飛び出した「消すってどんな感じなの?」という無邪気な問いが、ナオの内側に小さな波紋を立てます。

その後、図書室で律子が「このままじゃ事件は迷宮入りしてしまう」と独り言を漏らしているのをナオが発見。
「この学校にはドッペルゲンガーがいる」と書かれたビラ撒き犯を探していた律子と、ナオは「秘密の捜査」を始めることになります。アキには内緒で、廊下に並んでバケツを持つ覚悟で(笑)。

並行して、望月隼と森すずみの口論を目撃したナオは、望月から告白保留中の恋愛相談を受けます。呼吸法を教えながら、ナオは望月の「のたうち回って死にかけてる」という言葉を静かに受け止める。

そして捜査の末、ビラ撒き犯は元生徒会長の森すずみだと判明。しかし森すずみはただの「犯人」ではありませんでした。彼女もまた、レプリカだったのです。「あなたが代わりに死ねばオリジナルを助けられたりするの?」――その問いを前に、ナオは初めて、自分と同じ孤独を持つ存在と向き合うことになります。


第7話全体構造考察|「探す」は二重構造になっている

表の「探す」:ビラ撒き犯捜索という、小さな学園ミステリー

少し立ち止まってみましょう。

今回の「探す」の表の顔は、律子が主導するビラ撒き犯の捜索です。律子の推理は実に丁寧に積み上げられていました。屋上から撒かれたと仮定した場合、放課後に屋上に入るには鍵が必要。しかし10月1日に限って、給水設備の点検作業があり、業者が入っていた。点検に立ち合った教師が鍵を締め忘れた可能性がある――。

「それだと、ビラを撒き終えた後、屋上から脱出できなくなっちゃいます」

この一言で自分の仮説を即座に修正する律子の思考の速さ。そして「犯人は現場に戻るって言いますからね」という決め台詞。思わず笑ってしまいながらも、律子の推理が着実に核心へ近づいていく過程は、小さなミステリーとして十分に機能していたのではないでしょうか。

「なんか、探偵みたいで、ちょっと楽しいね」とナオが言い、「自分も今、同じ事思ってました」と律子が返す。この二人の並走感が、この回の空気を柔らかく支えていました。

裏の「探す」:ナオが本当に探していたもの

ここで違和感を覚えた方もいるかもしれません。

タイトルは「律子は、探す。」ではなく、「レプリカは、探す。」です。

律子の推理が主軸に見えながら、このタイトルはナオ自身の探索を指している、と考えます。ナオが本当に探していたのは犯人ではなく、「自分と同じ存在」ではなかったでしょうか。

「もし私たち以外にも、レプリカがいるなら」

アキに謝りながら、ナオが最後に漏らしたこの言葉。これが第7話の核心だったのではないでしょうか。レプリカとして生まれ、素直の代わりとして存在し、恋をしてしまったナオにとって、「自分と同じ存在がいる」という事実は、孤独の輪郭を初めて変えるものだったはずです。

「探す」という動詞が、これほど重い回があっただろうか――と思わずにはいられません。


佐藤梢考察|女子グループという「借り物の居場所」で

「愛川さん、お弁当一緒に食べない?」という一言の二重性

「愛川さんのお弁当美味しそう」「うち冷凍ばっかだよー」「サナダくんてさ、ちょっといいよね」――。

女子グループの昼食シーンは、軽やかで温かく、どこか懐かしい空気に満ちていました。しかし私たちは知っています。ナオがここにいるのは「愛川素直」として、つまり借り物の名前と顔で輪の中にいるということを。

そこへ飛んできた「消すってどんな感じなの?」という問い。

グループ内の恋愛話の流れで出てきた、他意のない言葉です。でもナオにとって「消える」という言葉は、存在論的な問いと直結している。顔が熱くなり、動揺するナオの内側を、私たちだけが知っている。この非対称性が、このシーンを単なる日常描写以上のものにしていたのではないでしょうか。

佐藤梢というキャラクターの解像度|ホームアンドアウェーの哲学

「私ってさ、根本的にアウトローなのよ」

佐藤梢というキャラクターが、この回で一気に解像度を上げてきました。グループでもめると他のグループへ転々として、しばらくして戻ると「なかったことになって仲直りされる」という処世術。彼女はそれを「ホームアンドアウェー」と呼びます。

笑えるようで、少し切ない。

「一人でいても、愛川さんは全然みじめじゃないよね。でも時々、本当に時々、寂しそうに見えたりする」

この観察眼の鋭さ。佐藤は「素直」ではなく「ナオ」を見ていた、と言えるかもしれません。そして「こんなだからあんまり女子に慣れないんだよね」という自己開示に対して、ナオが「でもそれは、その人たちに見る目がないだけだよ」と返す。

「お、愛川さん、それ口説いてる?」「え、ちょっとドキドキしちゃった」

この軽やかな交換が、ナオが「素直」の仮面を少し外せた瞬間だったのではないでしょうか。佐藤梢、今後も目が離せないキャラクターです。


律子×ナオ考察|秘密の共有が生む、静かな連帯

廊下に並ぼう、バケツ持って|この約束の重さ

「心配させちゃうから、秋くんにはないしょにしよう。これは私とリッちゃんだけの秘密ってことで」

「バレたら?」

「その時は一緒に怒られて、廊下に並ぼう」

「バケツ持ってですか?」

「そうそう、しっかり両手に」

――このやりとりを読んで、くすっと笑いながらも、胸のどこかが温かくなった方も多いのではないでしょうか。

律子はナオがレプリカであることを知った上で、ナオのために一人でビラ撒き犯を追っていました。「だって、心配なんですもん、あのビラ、素直先輩と秋先輩のこと言ってるのかもしれないし」という言葉の中に、律子の誠実さが凝縮されています。

秘密を共有するということは、「あなたを信頼している」という宣言でもある。ナオにとって、アキ以外の人間と「秘密」を持つのは、初めてのことだったのではないでしょうか。

律子の「おばあさん目線の竹取物語」|血の繋がりを超えた「いとおしさ」

「リッちゃんが書いたのは、おばあさん目線の竹取物語。おばあさんとおじいさんにとって、どれほどかぐや姫がかわいくて、宝物のように大切だったのか。血は繋がっていなくても、いとおしい娘だったのか」

この原稿の内容が、ナオの存在と重なって見えるのは、私だけでしょうか。

血の繋がりがなくても、「いとおしい」と思える存在がいる。それは素直とナオの関係にも、アキとナオの関係にも、そして律子とナオの関係にも通じる視点です。律子は意識していたのか、していなかったのか。「なんかうまく言えないけど、すごく良くて、この話、竹取物語の本編より好きかも」というナオの言葉が、どれほどの重さを持っていたか――。

「原典では語られることのない3人の日々について、おばあさんがとつとつと語っていく景色」。この描写が、第7話全体の優しさの底流になっていたのではないか、と感じます。


望月隼考察|「二番手」の男が見せた、本物の弱さ

点数という数字が暴いたもの|怒りの正体は心配だった

「なんだよ、この点数」

望月隼が森すずみの答案を見て怒鳴るシーン。正直に言えば、最初は「それは言い方ってものがあるでしょ」と思いました。きっと私たちの多くも同じだったのではないでしょうか。

でも少し立ち止まってみると、望月の怒りの正体が見えてきます。森すずみは「東京の大学に行きたい」と言っていた。学年で3本指に入るほど頭がいい。それなのに、こんな点数。望月は「なぜ」を問いたかったのではないか、と考えます。不器用な心配が、最悪の言い方で出てしまった。

「盛りは頭もよくてな、学年で3本指に入るくらい。勉強頑張って、東京の大学に生きたいって言ってた。まぁ、それもあって保留なのかなって」

告白を保留にされながらも、相手の夢を尊重しようとしている。この男、なかなか複雑です。

安倍川の花火大会と保留という名の宙吊り

「こっちは毎日、心の中でのたうち回って死にかけてるっていうのに」

この表現、笑えるのに笑えない。

夏休みの間、何も連絡してこない森すずみ。明けてからも顔色ひとつ変えず話しかけてくる森すずみ。「あいつすごいよ」という言葉に、恨みと尊敬が同居しているのが伝わってきます。

「もっと多忙になりたいくらいだ。そうすれば、なるべく余計なこと考えずに済む」

この言葉を聞いて、ナオが「望月先輩、鼻から息を吸ってください」と呼吸法を教えるシーン。アキに教えてもらった呼吸法を、今度は自分が誰かに渡す。この「受け取ったものを渡す」という連鎖が、ナオの成長を静かに示していたのではないでしょうか。

「私がこんなのは、文芸部のみんなといる時だけです」

3年生の間では「謎の美少女」「クールビューティー」と言われているナオが、望月にだけ見せた素顔。この一言が、ナオにとっての文芸部という場所の意味を、改めて教えてくれます。


森すずみ考察|ビラを撒いた理由と、もう一人のレプリカ

「相変わらずさんの、ドッペルちゃん」という呼びかけの衝撃

「じゃなくて、相変わらずさんの、ドッペルちゃん」

この一言で、第7話は一気に別の顔を見せました。

森すずみはナオがレプリカであることを、最初から知っていた。「ドッペルゲンガーは、私でもあるから」という告白。彼女もまた、レプリカだったのです。

「素直のオリジナルは私のことをそう呼んだから。レプリカにオリジナルか」「なるほど、あなたたちはそういう呼び方をしているんだ」

この短い交換の中に、二つの「レプリカ」の世界観の違いが凝縮されています。ナオたちは「レプリカ」「オリジナル」と呼ぶ。森すずみたちは「ドッペルゲンガー」と呼ぶ。同じ存在でも、呼び方が違う。それはそれぞれのオリジナルとの関係性の違いを映しているのではないか、と考えます。

ビラを撒いた本当の理由|叫びは誰にも届かなかった

「あの日、点検作業に付き合ってた先生が生徒会室にやってきて、手洗いに行くから生徒会室だけ頼むって鍵を渡されたの。それで、とっさに思いついた」

突発的な行動。計画的ではなく、衝動的に。

「この学校にはドッペルゲンガーがいる」というビラの内容は、「私はここにいる」という叫びだったのではないでしょうか。壊れたオリジナルを抱えながら、誰にも言えない秘密を持ちながら、それでも学校に来て、絵を描いて、生徒会の仕事をしている。その孤独が、あの日の衝動になったのではないか、と考えます。

竹取物語のポスターと森すずみ|消える宿命を描く手

「どんな場面を描こうか悩んだんだけど、やっぱり今回の竹取物語は家族のお話だと思う。だからこの絵にしたの」

森すずみが描いたポスター。彼女はかぐや姫役を演じる立場でもあります。

ここで少し立ち止まってみましょう。かぐや姫は最終的に月へ帰る、つまり「消える」存在です。森すずみがかぐや姫を演じながら、「家族のお話」としてこの物語を捉えている。それは、壊れたオリジナルとの関係を「家族」として見ているからではないでしょうか。

律子の「おばあさん目線の竹取物語」が「血の繋がりを超えた愛」を描いたとすれば、森すずみのポスターは「消えることが決まっている者の、それでも残したいもの」を描いていたのかもしれません。この二つが同じ舞台の上に並ぶ文化祭が、今から楽しみでもあり、怖くもあります。


クライマックス考察|「あなたが代わりに死ねば」という問いの残酷さ

レプリカは死んでも戻りがある|この答えの二重性

「教えてよ、レプリカさん。あなたが代わりに死ねばオリジナルを助けられたりするの?」

この問いを聞いた瞬間、画面の前で息が止まった方もいたのではないでしょうか。

「レプリカは、死んでもオリジナルが呼べば、戻りがあります」

ナオの答えは静かで、淡々としていました。しかしこの答えの中に、どれほどの重さが含まれているか。「オリジナルが呼べば」という条件。それはつまり、死においてさえ、ナオは素直に支配されているということです。

「オリジナルが無傷であれば……それって、逆はダメなの? オリジナル自身は死んじゃったら、それまでってこと?」

森すずみの問いは、彼女のオリジナルが「無傷ではない」状態にあることを示唆しています。植物状態、あるいはそれに近い状態にある森すずみのオリジナル。「身代わりになったりはできる? 例えば素直さんが死ぬ時、レプリカのあなたが代わりに死ぬことは」――この問いが、ナオ自身の宿命と直結していることに、私たちは気づかずにはいられません。

アキの介入|「俺もレプリカです」という宣言の意味

「秋か、なんで?」

「俺もレプリカです。聞きたいことがあるなら、俺に聞いてください」

アキの登場は、単なる「守り」ではありませんでした。「俺もレプリカです」という宣言は、ナオの隣に「同じ立場として立つ」ための言葉です。ナオを守るのではなく、ナオと並ぶ。この違いが、アキというキャラクターの本質を表しているのではないでしょうか。

「バカ。広中に聞いたよ、こんな危険な真似して。俺、やめろって言ったのに」

「バカ」という言葉が、これほど優しく聞こえる場面が、これまであったでしょうか。怒りの中に、心配と安堵が混ざり合っている。ナオが「ごめんなさい。でも、会って話してみたかった」と答える時、その声の中に何があったか――。

「もし私たち以外にも、レプリカがいるなら」

この言葉の続きを、ナオは言えませんでした。でも私たちには、その続きが聞こえる気がします。自分は一人じゃないかもしれない、と。


第8話への伏線整理|「探す」が終わった後に来るもの

三つの未回収の問い

第7話が終わった今、三つの問いが宙に浮いています。

一つ目は、森すずみのオリジナルは今どこにいるのか。「壊れたオリジナルを直す方法」を探していた森すずみ。そのオリジナルの状態と、素直の「学校より大事なこと」がどこかで接続する可能性はないでしょうか。

二つ目は、「死んでも戻れる」という事実の使われ方。ナオが語ったこの情報は、第8話以降の物語で必ず回収されるはずです。それが希望として使われるのか、それとも別の形で私たちの前に現れるのか。

三つ目は、文化祭という舞台の上でナオは何を見るか。かぐや姫を演じる森すずみ。律子の「おばあさん目線の竹取物語」。そしてナオ自身の役割。「消える宿命」を持つ者たちが、同じ舞台に立つ時、何が起きるのでしょうか。

文化祭という舞台|竹取物語の鏡の前でナオは何を見るか

「来週末、頑張ろうな」という望月の言葉が、静かな切迫感を持って響きます。

文化祭は、ナオにとって「素直」として過ごす時間の中で、最も「ナオ」として輝ける場所になるかもしれません。同時に、それは「素直」との関係が最も揺れる場所にもなり得る。

竹取物語という物語の中で、かぐや姫は最終的に月へ帰ります。でも律子が書いた「おばあさん目線の竹取物語」は、その「帰る」という結末の前に、どれほどの日々があったかを語るものでした。

ナオの「帰る」場所は、どこでしょうか。素直のもとへ帰るのか。それとも――。


まとめ|探すことは、存在を証明することだ

「レプリカは、探す。」

このタイトルを、最後にもう一度噛み締めてみましょう。

律子が犯人を探した。ナオが同じ存在を探した。森すずみがオリジナルを直す方法を探した。望月が森すずみの心を探した。佐藤がナオの本当の顔を、無意識に探した。

第7話は、「探す」という行為を通じて、すべてのキャラクターが自分の存在を証明しようとした回だったのではないか、と考えます。

そして探すことは、孤独の中でしかできない行為です。誰かに代わってもらえない、自分だけの旅。ナオが「もし私たち以外にも、レプリカがいるなら」と言った時、その言葉の中には、孤独の中で探し続けてきた者だけが持てる、静かな切実さがありました。

レプリカだって、探す。レプリカだって、存在を証明したい。レプリカだって――恋をする。

第8話も、一緒に見届けましょう。


©榛名丼/KADOKAWA/レプリカだって、恋をする。

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