江戸編スタート
第1話の葛野編で愛する白雪を愛しい妹の鈴音によって殺害されるという凄惨な一夜を過ごした甚太は甚夜と名を変え、江戸に出ます。時は嘉永三年。
嘉永三年(1850年)という時代背景は、江戸時代末期の重要な転換点です。この年は黒船来航(嘉永6年)の数年前で、社会情勢が不安定になりつつあった時期でした。歴史的には佐藤信淵、小泉八雲、星亨が生まれ、高野長英と国定忠治が亡くなった年でもあります。
作品がこの時代を舞台に選んだ理由は、幕末の動乱を前にした社会の不安や変化を描き出すためと考えられます。特に「鬼が出る」という噂が立ち始めていた時期であり、諸外国の影がちらつき、幕府の対応のまずさから民衆の不安が増大していました。この社会不安と怪異が身近に感じられる時代背景が、鬼と人間の物語に深みを与えています。
👇第1話:葛野編はこちら
(ネタバレ注意)本ブログは「鬼人幻燈抄」の理解を促進するためにアニメの放送内容、原作の記述等、ネタバレになる部分を多く含みます。例えば甚太(甚夜)が何故鬼狩りをするのか、鈴音の正体は?など、アニメ放送時点で明らかになっていない点についても言及していますので、ネタバレを嫌う方にはおすすめできません。
しかし、本ブログを読んだ後、アニメを見直すと、鬼人幻燈抄をより深く楽しめるはずです。
江戸編の登場人物
第1話の葛野編から江戸編へと舞台が変わり、新たな登場人物も出てきました。主人公の甚太=甚夜も含めて登場人物の紹介を改めて行います。
甚夜(じんや):CV 八代 拓
鬼退治を生活の糧にする浪人。自らの正体も鬼で、170年後、野の地に現れる鬼神と対峙するべく力をつけている。葛野での悲劇から十年を経て、自らも鬼でありながら鬼退治を生業とする浪人となった。

奈津(なつ):CV 会沢紗弥
商家「須賀屋」の一人娘。重蔵と血はつながっていないが溺愛されている。商家のお嬢様ではあるがお淑やかとは言い難く、ほんの少し口が悪い。幼い頃に両親を亡くし、以降重蔵のもとで育てられてきた。

善二(ぜんじ):CV 峯田大夢
「須賀屋」の手代。小僧として使い走りや雑役に従事し、二十歳になり手代を任せられた。人懐っこい性格と、問屋や顧客の覚えも良いことから、次の番頭にと期待されている。

重蔵(じゅうぞう):CV 相沢まさき
日本橋の商家「須賀屋」の主。須賀屋を一代で築き上げ、五十に届こうという歳でありながら、表に立って働く根っからの商人。生まれて間もない頃に天涯孤独となった奈津を引き取り、溺愛している。甚夜の実父でもある。

夜鷹(よたか):CV 生天目仁美
吉原近くの路上で客を引く街娼の一人。整った顔立ちをしており、街娼にありがちな引け目や媚びを感じさせない不思議な女。甚夜は娼婦同士のネットワークを頼って、情報屋として交流している。後に直次と結婚し、自身の半生を記した手記「雨夜鷹」を著す。

秋津染吾郎(あきつ そめごろう):CV 遊佐浩二
付喪神使いの名跡「秋津染吾郎」の三代目。犬神をはじめ、多種多様な付喪神を使役する。甚夜が京都に移って以降は甚夜の営む「鬼そば」の常連となり、甚夜と親友のような関係を築く。

鈴音(すずね):CV 上田麗奈
甚夜の実の妹。正体は鬼で、甚夜の最愛の人・白雪の命を奪う。葛野での悲劇の後、行方知れず。嫉妬に狂い鬼の力を開放したことで大人の姿となった。

喜兵衛の店主【きへえのてんしゅ】(CV:上田燿司)
甚夜が足繫く通う、深川にある蕎麦屋「喜兵衛」の店主。一人娘のおふうと店を切り盛りするおおらかな性格の持ち主。

おふう(CV:茅野愛衣)
深川にある蕎麦屋「喜兵衛」の看板娘。季節の花を愛でることを好む。 幼い頃に明暦の大火で家族を失い、時の流れが異なる結界を作る能力〈夢殿〉を得た鬼で、甚夜よりも年上。甚夜を年下の男の子のように扱う。

三浦直次【みうらなおつぐ】(CV:山下誠一郎)
旗本・三浦家の嫡男。朱印状や判物の作成、幕臣の名簿管理といった文書の整理を役目とする表右筆として登城している。姿を消した兄・定長を探すため甚夜に協力を求める。

冒頭の手毬唄に隠された意味とは?切なくも美しい情景描写
アニメ『鬼人幻燈抄』、毎週目が離せない展開が続きますね!
これまでの感想はこちらからどうぞ。
第5話のタイトルは「幸福の庭・前編」。今回は、これまでのアクション中心の展開とは少し趣を変え、怪異譚の色合いが濃い、じっくりと物語が紡がれる回でした。一体どんな謎が私たちを待ち受けているのでしょうか? 早速、感想と考察を深めていきましょう。
ひとつ ひかんを なかぬれば
ふたつ ふるさと はやとおく
みっつ みなれぬ ふぼのかお
よっつ よみちを たどりゆく
いつつ いつかは とおくなり
むっつ むかしを なつかしむ
ななつ なみだは かれはてて
やっつ やがては…
冒頭、薄暗い中に響く少女の無垢な手毬唄。しかし、その歌詞はどこか物悲しく、不穏な響きを帯びています。一つ、二つと数えるごとに、彼岸(あの世)で泣く、故郷や父母との別離、暗い夜道、遠くなる過去、枯れた涙…と、失われていくもの、悲しい運命を暗示するような言葉が続きます。そして、「やっつ やがては」で唄はぷつりと途切れ、「つづきはないよ」と少女は呟きます。

この手毬唄は、どこか物悲しい響きを持っていますね。子供の遊び歌でありながら、その内容はとてもシリアス。数え歌の形式を取りながら、一つずつ大切なものを失っていく過程を描いているように聞こえます。「彼岸」という言葉からは、死や、この世ならざる世界を連想させられますし、「見慣れぬ父母の顔」や「遠くなる故郷」は、戻れない場所、失われた繋がりを示唆しているかのようです。私たち女性にとって、家族や故郷との繋がりは心の拠り所であることが多いだけに、この歌詞は胸に迫るものがあります。

特に「ななつ なみだは かれはてて」という部分。悲しみを通り越して、感情すら枯渇してしまったような、深い孤独と諦念が感じられます。そして「やっつ やがては…」と途切れる終わり方。その先に待つ運命を語ることすらできない、あるいは語ることを拒否しているような、重い余韻を残します。

映像に映し出される水仙と金魚も、美しさの中に儚さや、どこか閉塞感を漂わせています。水仙は、時に自己愛や叶わぬ恋の象徴ともされますし、水槽の金魚は、限られた世界で生きるしかない存在のメタファーのようにも見えます。顔の見えない少女の姿と相まって、この歌と情景が、今回の物語の核心にある悲劇性や、登場人物(特に女性かもしれない)の満たされない想いを象徴しているように感じられてなりません。この唄が誰の心を歌っているのか、物語が進むにつれて明らかになるのでしょうか。
第5話「幸福の庭・前編」あらすじ:存在しない兄を追う者
時は嘉永六年(1853年)、秋。蕎麦屋「喜兵衛」の馴染み客である武士・三浦直次在衛(みうら なおつぐ ありもり)には、奇妙な悩みがありました。彼には三浦定永(さだなが)という名の兄がいるはずなのに、父や母、周囲の誰もが「お前に兄などいない」と言い、その存在すら覚えていないのです。

直次は、自分だけが覚えている兄の行方をずっと探し続けていました。夜道で偶然ぶつかった奈津を気遣う優しさを見せる一方で、その悩みは深く、蕎麦屋の店主・喜兵衛に打ち明けます。そんな彼を見かねたおふうは、怪異に詳しい人物として甚夜を紹介。ちょうど店にやってきた甚夜に、直次は兄の記憶を取り巻く怪異の解明を依頼します。
最初は「自分の領分ではない」と断る甚夜でしたが、店主とおふうの強い願いもあり、協力することに。おふうと甚夜は、以前にも増して打ち解けた様子。「秋は木犀の頃だ」「今度は花にまつわる説話をお教えしますね」といった会話から、二人の距離が縮まっていることが伺えます。厳しい顔ばかり見てきた甚夜が、おふうの前では少し柔らかい表情を見せるのが印象的です。花の名前を覚え、季節の移ろいに目を向けるようになった甚夜の変化は、おふうという存在が彼にとって癒しになっている証拠かもしれませんね。

一方、茶屋で磯部餅を食べる甚夜の前に、偶然奈津が現れます。甚夜から手代の善二との祝言について尋ねられると、奈津は全力で否定。さらに、自分を「奈津殿」と呼ぶ甚夜に対し、「他人行儀でしょ?」と、今後は呼び捨てにするよう釘を刺します。甚夜にだけ見せる、素直じゃないけれど甘えたい気持ち。奈津の複雑な乙女心が垣間見えます。(奈津はまだ甚夜が父・重蔵の実の子とは知りません)。

その夜、再び兄探しに出かけようとする直次を、母が「ありもり」と呼び止めます。「三浦家の嫡男はあなたです。兄などいません」と諭されますが、直次は家を出ます。(「ありもり」は直次の諱(実名)の一部「在衛」でしょう。武家では通常諱で呼ぶことは少ないですが、母が息子を強く諭す場面だからでしょうか)。すると、どこからか兄・定永の声が。「家があって人がいるんじゃない、人がいて家があるんだ」。そこに甚夜が現れ、直次の決意を確かめます。

蕎麦屋で甚夜は直次から詳しい話を聞きます。直次は刀剣への造詣が深く、甚夜の出身地が「たたら(製鉄)」で有名な角野(かどの)であることまで見抜きます。兄・定永が消えたのは今年の春先、1月の終わり頃。失踪直前に「娘に会いに行く」と直次に告げ、部屋には季節外れの水仙の花が残されていたと言います。花を愛でるような人ではなかった兄の部屋にあった水仙。直次はそのことが妙に気になっていました。甚夜は翌日、三浦家の屋敷へ案内してもらう約束をします。

翌日、蕎麦屋を訪れた甚夜は、先にいた奈津に「甚夜」と呼び捨てにされ、戸惑いながらも「奈津」と言い直します。その様子をおふうが微笑ましげに見守ります。話題は直次のことへ。店主は、直次から譲り受けたという「笄(こうがい)」を甚夜に渡そうとします。これは刀装具の一つで、髪を整えるなどに使われたものです。直次は「もう自分には必要ない」と言っていたとのこと。甚夜は一度断りますが、店主に押し切られ、「預かっておこう」と受け取ります。

その後、甚夜はおふうに、直次が言っていた花が水仙かどうか尋ねます。おふうは、少し苦しそうな表情で「うん」と頷きます。甚夜は「だが小さい、か。できれば水仙でないほうがいいが」と意味深な言葉を呟きます。

場面は変わり、霧のような空間で手毬をつく冒頭の少女。「ここは幸福の庭、幼い私が過ごしたひだまり」。縁側には両親らしき男女がいて、少女に手を振ります。しかし、少女が「でも、帰る道はなくなった」と手毬を止めると、両親も少女自身も消え、手毬だけが庭に転がるのでした…。


散りばめられた4つの謎:あなたの考察は?
今回のエピソードでは、今後の展開の鍵となりそうな謎がいくつか提示されました。皆さんと一緒に考察していきましょう。
謎1:なぜ兄・定永の部屋に「水仙」の花が残されていたのか?
兄・定永が失踪した部屋に残されていた一輪の水仙。花に興味のなかった兄の部屋になぜ? しかも失踪したのは1月の終わり頃、まさに水仙が咲く季節です。

- 兄自身の意思?:誰かへのメッセージとして、あるいは自身の決意の表れとして置いたのでしょうか。水仙の花言葉には「自己愛」「うぬぼれ」といった意味もありますが、一方で「希望」「再生」といったポジティブな意味も。彼が抱えていた想いはどちらだったのでしょう。
- 「娘」との関連?:彼が会いに行ったという「娘」に関連する花だったのかもしれません。娘が好きだった花、あるいは二人の関係性を象徴する花だったとか?
- 怪異の痕跡?:事件を引き起こした存在、例えば鬼などが残したマーキングのようなものかもしれません。水仙が、その怪異の性質や、定永を待ち受けていた運命を暗示している可能性も考えられます。
一輪の花に込められた意味。これが解き明かされる時、兄の失踪の真相に近づけるのかもしれません。
謎2:おふうが見せた苦悶の表情の理由
甚夜に水仙について問われた時、おふうが見せた一瞬の曇った表情。普段、花について語る時は生き生きとしている彼女が、なぜ水仙に対しては苦しそうな反応を見せたのでしょうか。

- 水仙の持つ二面性?:美しい花ですが、球根には毒があり、花言葉も「自己愛」などネガティブな側面を持ちます。おふうは、その花の持つ影の部分、あるいはそれによって引き起こされる悲劇を直感的に感じ取ったのかもしれません。女性ならではの繊細な感性が、不吉な予感を捉えたのでしょうか。
- 過去の記憶との繋がり?:おふう自身の過去に、水仙にまつわる辛い出来事があった可能性も考えられます。あるいは、彼女が知る誰かの悲しい運命と水仙が結びついているのかもしれません。彼女の反応は、単なる知識を超えた、個人的な感情の表れのように見えました。
- 甚夜への気遣い?:甚夜が水仙を嫌っている(謎3)ことを察し、彼を気遣って言い淀んだのかもしれません。二人の間に芽生えつつある信頼関係ゆえの反応とも取れます。
おふうのこの表情は、物語の不穏さを増幅させるとともに、彼女自身の秘めた背景を感じさせます。
謎3:甚夜が水仙を嫌う理由「できれば水仙でないほうがいいが」

おふうの反応を受け、甚夜が漏らした「できれば水仙でないほうがいいが」という言葉。鬼退治を生業とする彼が、なぜ特定の「花」に対してこのような反応を示すのでしょうか。
- 鬼との因縁?:甚夜の長い経験の中で、水仙が関わる忌まわしい事件や、特定の鬼との遭遇があったのかもしれません。水仙が鬼を呼び寄せたり、鬼の力を増幅させたりするような、特殊な性質を持つ可能性も?。
- 花言葉からの連想?:「自己愛」「うぬぼれ」といった花言葉が、今回の依頼者・直次の兄や、事件の根源にある人間の業、あるいは鬼の本質と重なり、嫌悪感を抱いているのかもしれません。甚夜は多くの人間の、そして鬼の業を見てきましたから。
- 過去のトラウマ?:彼の故郷・葛野での出来事や、それ以前の失われた記憶の中に、水仙が悲劇の象徴として刻まれている可能性もあります。彼にとって触れたくない過去と結びついているのかもしれません。
甚夜のこの一言は、単なる個人的な好き嫌いではなく、事件の核心に繋がる重要な伏線であることは間違いなさそうです。
謎4:「幸福の庭」で手毬をつく少女の正体
物語の最後に現れた、霧に包まれた「幸福の庭」。そこで手毬をつく少女は、一体何者なのでしょうか?
- 失われた幸福の幻影?:「幼い私が過ごしたひだまり」という言葉通り、彼女が最も幸せだった時の記憶が作り出した、閉じた世界なのかもしれません。しかし、「帰る道はなくなった」という言葉が示すように、それはもう戻れない、実体のない幸福。手毬をつきながら歌う姿は、永遠に続くかのような、しかしどこにも行き着けない子供時代の終わりを象徴しているようで、切なくなります。
- 鬼と化した魂?:原作情報や他の感想ブログなどによると、この少女は火事で家族を亡くし、その悲しみと執着から鬼となった存在である可能性が高いようです。幸福だった記憶の中に囚われ、現世と常世の狭間で留まり続けているのかもしれません。手毬唄の歌詞が、彼女自身の境遇を歌っているのだとしたら、あまりにも悲しい運命です。
- 定永の「娘」?:兄・定永が会いに行ったという「娘」が、この少女である可能性も考えられます。もしそうなら、なぜ彼女はこのような場所にいるのか? 定永の失踪とどう関わっているのか?
![鬼人幻燈抄第5話より手毬をつく少女と両親<span class="footnote-wrapper">[113]</span>” style=”width:342px;height:auto”></figure>
<p>タイトルにもなっている「幸福の庭」。一見穏やかに見えて、実は悲しみと執着に満ちたこの場所の謎が、後編でどのように解き明かされるのか、目が離せません。</p>
<h2 class=](https://i0.wp.com/kijin-anime.com/wp/wp-content/uploads/2025/04/5-6.jpg?w=880&ssl=1)
提示された謎を踏まえ、さらに核心に迫る3つのポイントについて考察を深めてみましょう。
兄・定永の言葉「娘に会いに行く」の意味を探る
失踪前に兄・定永が弟・直次に残した「娘に会いに行く」という言葉。これが今回の事件の大きな鍵を握っています。武家の嫡男である彼に、表沙汰にできない娘がいたのでしょうか?

- 文字通りの「娘」の存在: もしかしたら、身分違いの恋など、何らかの事情で世間に知られていない娘がいたのかもしれません。その娘に会いに行った先で事件に巻き込まれた? あるいは、その娘自身が人間ではない存在だった…? 定永の「家があって人がいるんじゃない、人がいて家があるんだ」という言葉からは、家柄や立場よりも個人の想いを大切にする人物像がうかがえます。彼が守りたかった「娘」がいたとしても不思議ではありません。
- 「娘」が象徴するもの: 「娘」という言葉が、必ずしも実の娘を指すとは限りません。彼が救おうとしていた誰か、あるいは追い求めていた理想や目的の比喩である可能性も考えられます。例えば、虐げられている存在、あるいは失われた何かを取り戻そうとしていたのかもしれません。
- 「幸福の庭」の少女との関連: やはり最も気になるのは、最後に登場した手毬の少女との関連です。定永が会いに行った「娘」とは、あの少女のことではないでしょうか? もしそうなら、彼はなぜ、そしてどのようにして彼女に会いに行ったのか。彼女を救おうとしたのか、それとも彼女のいる世界に引き込まれてしまったのか…。
この言葉の真意が、兄の失踪と人々の記憶喪失という怪異の核心に繋がっているはずです。
兄・三浦定永はなぜ消えたのか?
周囲の誰もが、父や母でさえその存在を忘れてしまった兄・定永。これは単なる行方不明ではなく、人の記憶に干渉するほどの強力な怪異が働いていることを示唆しています。
- 鬼による記憶操作・神隠し: 人々の記憶から特定の存在を消し去る、あるいは異界へ連れ去る。これは鬼の仕業として考えられる典型的な怪異です。定永を消し去ることで、誰が得をするのか? 三浦家に隠された秘密でもあるのでしょうか? それとも、定永自身が何らかの理由で鬼の領域に踏み入り、その結果として存在を抹消された?
- 「幸福の庭」への囚われ: 彼自身が、あの「幸福の庭」と呼ばれる異界に囚われてしまった可能性も否定できません。彼が会いに行った「娘」とされる少女と共に、過去の幸福(あるいは不幸)の記憶の中に閉じ込められているのかもしれません。人々が彼を忘れてしまったのは、彼が現世から完全に切り離されてしまった結果なのかもしれません。
- 水仙の花の役割: 部屋に残された水仙が、彼が消えた理由や方法の手がかりとなっている可能性。水仙が咲く場所、あるいは水仙にまつわる伝承などが、彼が向かった先を示しているのかもしれません。あるいは、水仙の持つ「自己愛」などの花言葉が、彼自身の心の闇や、事件の引き金となった感情を暗示しているとも考えられます。
なぜ彼だけが忘れられなければならなかったのか。その理由こそが、この怪異の本質なのでしょう。
手毬をつく少女に隠された意味とは?

冒頭と最後に印象的に登場した手毬をつく少女。彼女の存在と、物悲しい手毬唄は、この「幸福の庭」のエピソードを象徴しています。
- 叶わなかった幸福への執着: 手毬は子供時代の無邪気な遊びの象徴ですが、彼女がつく手毬は、どこか虚しく、終わりがないように見えます。唄われる歌詞と共に、それは失われた家族との時間、もう二度と戻らない「ひだまり」への強い執着を表しているのかもしれません。幸福だった記憶だけを繰り返しなぞることでしか、彼女は存在を保てないのでしょうか。その姿は痛々しくもあります。
- 現世への未練と異界の住人: 手毬唄の「ひとつ ひがんを なかぬれば」は、死んで彼岸へ渡ることもできず、現世に留まって泣いている魂、という意味にも解釈できます。彼女は、強い未練によって現世と常世の狭間に囚われた、鬼、あるいはそれに近い存在なのかもしれません。「幸福の庭」は、彼女の魂を縛り付ける檻のような場所なのでしょう。
- 物語の核心を握る鍵: 彼女が定永の「娘」であるかどうかにかかわらず、彼女の存在自体が、今回の怪異の中心にあることは間違いありません。なぜ彼女は鬼となったのか(あるいは鬼のような存在になったのか)? 彼女の過去に何があったのか? そして、なぜ定永は彼女に会おうとしたのか? 彼女の物語を解き明かすことが、全ての謎を解くことに繋がるでしょう。
少女の無垢さと、彼女を取り巻く悲劇性のギャップが、見る者の心を強く揺さぶります。彼女の瞳に映るものは、幸福の記憶なのか、それとも絶望なのでしょうか。
今回は、物語の導入として多くの謎と伏線が丁寧に描かれました。兄を思う直次の真摯な気持ち、少しずつ変化していく甚夜とおふう、奈津の関係、そして「幸福の庭」を巡る怪異。静かながらも、登場人物たちの心の機微が深く描かれた回だったと思います。後編で、これらの謎がどのように解き明かされ、どんな真実が待っているのか。そして、甚夜はこの怪異にどう立ち向かうのか。期待して待ちたいと思います!
皆さんの考察もぜひコメントで教えてくださいね!
それでは、また次回の感想でお会いしましょう。
『鬼人幻燈抄』関連書籍とBlue-layの紹介
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☆☆☆☆☆今回はここまで。
👉使用した画像および一部の記述はアニメ公式サイトから転用しました。
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