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水族館の青い光のなかで、山田は西を「奈津美ちゃん」と呼びました。桜の下では、谷が鈴木へ「変わらない」と約束します。そして新学期、平は東に「どうせ俺ら放課後会うし」と言うのです。第19話「グラデーション」が描いたのは、正反対の二人が同じ性格になる話ではありません。違いを残したまま、相手の世界へ少しずつ色を重ねていくこと。恋人になった二人も、未来を約束する二人も、まだ関係に名前をつけられない二人も、それぞれの形で「一人では見られなかった景色」を見つけ始めています。
第19話「グラデーション」あらすじ|春休みと新学期、3組に訪れた小さな変化
春休み、晴れて恋人同士になった山田と西は、水族館へ出かけます。
第17話「バレンタイン」で「好きです」が届き、第18話では教室に交際報告が広がった二人。けれど、恋人になったからといって、急にすべてが自然に進むわけではありません。
どこへ行くか。
どんなふうに時間を使うか。
どう呼び合えばいいのか。
山田と西は、まだ少し照れながら、二人にとっての「恋人らしさ」を探していました。
一方、谷と鈴木は、鈴木の誕生日とお花見の時間を過ごします。柔らかな空気が流れるなかで、話題は新学期のクラス替え、さらに受験という未来へ移っていきました。
今が楽しいからこそ、その時間が変わってしまうかもしれない。
鈴木の不安に対して谷は、「大丈夫だよ」「変わらないよ」と返します。しかし、その頼もしい言葉の奥には、谷自身の揺れも静かに残されていました。
そして新学期。東と平は別々のクラスになります。
第18話で東は、「まだ帰りたくない」と平を誘いました。平もまた「分かる」と返し、二人は次に会う理由を作ったはずです。
それでも、「同じ教室ではない」という現実は、東のなかに言葉にならない引っかかりを残します。
平はそんな東へ、あまりにも自然に言いました。
「どうせ俺ら放課後会うし」
この一言が、東の心のなかにあった「寂しい」や「悲しい」とは少し違う感情を、そっと揺らしていきます。
タイトル「グラデーション」考察|正反対の二人が混ざるのではなく、色を増やすとき
「グラデーション」とは、ある色が別の色へなめらかに移り変わることです。
赤と青なら、そのあいだに紫が生まれる。白と黒なら、無数の灰色がある。境目が完全になくなるわけではなく、異なる色のあいだに、新しい色合いが増えていく。
第19話のタイトルは、まさに3組の関係を表しているように見えます。
「正反対」は、相手を変えるための設定ではない
山田と西は、物事の楽しみ方が違います。
山田は大きな流れをつかみ、その場の空気を楽しむ人です。西は目の前にあるものを丁寧に見つめ、細部へ深く入り込む人です。
谷と鈴木も違います。
鈴木は不安を言葉にし、相手と一緒に抱えようとします。谷はまず相手を安心させ、自分の不安は内側にしまい込もうとする。
東と平もまた、同じ出来事の受け取り方が違いました。
東はクラス替えによって、日常のなかにあった平との距離が変わることを怖がる。平は、教室が変わっても放課後に会えるなら関係は続くと、ごく自然に考えている。
けれど本作は、どちらかが相手に合わせて変わることを「成長」としていません。
西が山田のように大ざっぱになる必要はない。
谷が今すぐ全部の不安を口にできる必要もない。
東が平のように平然としていなければならないわけでもありません。
違いを消すのではなく、違いがある相手の世界を覗いてみる。そのとき、二人のあいだには、以前にはなかった色が生まれるのではないでしょうか。
境目が消えるのではなく、境目がやわらぐ
ここで少し立ち止まってみましょう。
「恋人」「友達」「特別な人」――私たちは関係に名前をつけると、少し安心します。どこまで近づいてよいのか、何を期待してよいのかが分かる気がするからです。
しかし第19話は、名前で分けられない部分を丁寧に描いています。
山田と西は恋人です。それでも呼び方一つに照れ、相手をどう楽しませればよいかを迷っています。
谷と鈴木も恋人ですが、未来が変わっていくかもしれない不安から自由ではありません。
東と平は、まだ恋人ではありません。それでも「放課後会う」という前提は、ただのクラスメイトという言葉だけでは説明しきれないでしょう。
グラデーションとは、はっきりしないから曖昧なのではありません。
相手との関係が、まだ一つの言葉に固定されないほど、静かに動いている状態なのではないか、と考えます。
第19話「グラデーション」|3組の関係性マップ
第19話で描かれたのは、正反対の二人が同じ色になる物語ではありません。違いを持ったまま隣にいることで、それぞれの間に新しい色が生まれ始めています。
1 山田 × 西
違いを楽しむ恋人
水族館で見えた、二人の異なる視線
山田:展示をざっくり眺め、全体の空気を楽しむ
西:生き物や細部をじっくり見つめ、深く入り込む
違う見方を、正そうとしない
二人の間に生まれた色相手が楽しそうなら、自分も楽しいという受容
2 谷 × 鈴木
不安を抱えて交わす約束
誕生日とお花見で触れた、変化への怖さ
鈴木:クラス替えや受験の先にある寂しさを言葉にする
谷:鈴木を安心させようとしながら、自分の不安も隠している
「大丈夫」に、本音と見栄が重なる
二人の間に生まれた色変化を恐れながらも、離れないと願う約束
3 東 × 平
未命名の特別
クラス替えが映した、「会うこと」の温度差
東:同じ教室を失い、今までの距離も消えるようで揺れる
平:放課後に会う未来を、疑う必要のない当たり前としている
「どうせ俺ら放課後会うし」
二人の間に生まれた色名前より先に、互いを日常へ置く特別さ
第19話「グラデーション」の結論正反対の二人が同じ色になるのではない。違いを消さずに重ねることで、二人だけの新しい色が増えていく。
図解:第19話「グラデーション」における、山田と西、谷と鈴木、東と平の関係性の現在地
山田と西の水族館デート考察|違う見方を持ち寄れた、恋人になって初めての休日
水槽のなかを魚が泳ぎ、青い光が二人の表情をゆっくり照らしていく。
山田と西の水族館デートは、派手な事件が起きるわけではありません。それでも、恋人になったばかりの二人が、相手との違いをどう受け止めるかという大切な時間になっていました。
西の「見すぎ」と山田の「ざっくり」は、どちらも間違いではない

西は、水族館の展示に夢中になります。
生き物を観察すること。展示の説明を読むこと。目の前にあるものを細かく見つめること。西にとって水族館は、ただ歩いて通り過ぎる場所ではありません。
けれど途中で、西は不安になります。
自分だけが一つの場所に留まりすぎているのではないか。
山田を退屈させてしまっているのではないか。
西は、相手と一緒にいるときほど、自分の「好き」を小さく畳もうとするところがあります。相手を大切にしたいからこそ、自分が楽しみすぎることを少し怖がってしまうのでしょう。
対して山田は、展示をざっくり見ていました。
細部まで見ていないから、デートを楽しんでいないわけではありません。山田は山田の速度で、水族館全体の空気を味わい、そして何より西が楽しそうにしていることを見ています。
二人の視線は正反対です。
西は一点を深く見る。
山田は全体をゆるやかに見る。
けれど、その違いは「合わない」の証明にはなりませんでした。
「奈津美ちゃん楽しそうだったら俺も楽しい」にある受容

西が「見すぎてしまった」と気にしたとき、山田は自分の見方を恥じることも、西の楽しみ方を否定することもありません。
むしろ、山田は西が楽しそうなら自分も楽しいという意味の言葉を返します。
ここで山田が見ていたのは、水槽のなかの魚だけではなかったのでしょう。
西が何に目を輝かせるのか。
どんなときに言葉を忘れるのか。
何を見つけたとき、少しだけ表情がほどけるのか。
恋人同士だから、同じ展示を同じ時間だけ見なければならないわけではありません。
好きな人と一緒にいる時間は、同じ感想を言い合うためだけにあるのではない。相手が自分とは違うものに夢中になっている姿を、「その人らしい景色」として受け取る時間でもあるのかもしれません。
西が水族館を深く見ることで、山田の世界が狭くなるわけではない。
むしろ山田は、西が見つけた小さな面白さを通じて、自分だけでは立ち止まらなかった景色に触れています。
「西さん」から「奈津美ちゃん」へ、呼び方を探す二人

そして第19話で印象的だったのが、山田が西を「奈津美ちゃん」と呼ぶ場面です。
恋人になったら、すぐに下の名前で呼び合えるのか。
そんな問いには、たぶん正解がありません。呼び捨てが自然な二人もいれば、ずっと苗字や敬称のまま距離を育てる二人もいます。
山田と西は、そのちょうどよさをまだ見つけている途中です。
山田は呼び方を変えようとして、少し照れる。西もまた、その音をどう受け取ればよいのか、すぐには平静でいられない。
けれど、このぎこちなさこそが二人らしいところです。
「奈津美ちゃん」と呼ぶことは、恋人らしく振る舞うための記号ではありません。山田が西の隣へ、これまでよりほんの少しだけ近づこうとした行為です。
そして西にとって大切なのは、呼び名の完成度よりも、山田が自分との距離を考えてくれたことだったのではないでしょうか。
山田と西の水族館デート|違う見方が重なった瞬間
同じ水族館にいても、二人が見ていたものは少し違っていました。けれど第19話は、その違いを埋めるのではなく、二人で持ち寄る時間として描いています。
観察する視線
西
一つの展示を、細部までじっくり見つめる
生き物の姿や展示の面白さへ深く入り込むぶん、自分ばかり時間を使いすぎていないかと不安にもなります。
感じ取る視線
山田
展示をざっくり眺め、全体の時間を楽しむ
一つひとつを深掘りするより、その場の空気や一緒にいる人の表情を自然に受け取っています。
正反対の二人が選んだこと相手を自分と同じ楽しみ方へ変えない。
違う見方のまま、同じ時間を過ごす。
山田が受け止めた本音奈津美ちゃん楽しそうだったら、俺も楽しい。
二人は同じ展示を同じように見ていません。それでも、西が夢中になる時間を山田が喜べるなら、その違いは距離ではなく、二人の景色を広げる色になるのではないか、と考えます。
図解:第19話「グラデーション」における、山田と西の異なる楽しみ方と受容の関係
谷と鈴木の誕生日デート考察|「変わらない」の約束に隠れた谷の見栄と不安
桜の下で、鈴木の誕生日を祝う谷。
春は始まりの季節ですが、同時に、今までの形が終わっていく季節でもあります。クラス替えがあり、受験が近づき、毎日同じ教室で会える時間はいつまでも続きません。
谷と鈴木のパートは、そんな「変化の手前」に立つ二人の会話でした。

お花見と誕生日プレゼントが置いた、これからの日常
谷が鈴木へ贈ったものは、ただその場で消費されるものではなく、これからの日常のなかで使われる贈り物でした。
誕生日プレゼントは、相手を喜ばせるためのものです。
けれど日常に残る品には、もう一つの意味があるようにも見えます。毎日手に取るたびに、贈ってくれた人を思い出せる。会えない時間があったとしても、相手とのつながりを生活のなかに置いておける。
谷は意識していたでしょうか。それは分かりません。
ただ、クラス替えや受験という「会えないかもしれない未来」が会話に出てくる回で、日常へ残る贈り物が選ばれたことには、静かな意味があるように思えます。

「大丈夫」は鈴木への言葉であり、谷自身への願い
鈴木は、未来への不安を言葉にします。
クラスが違ったらどうしよう。
すれ違うことが増えたらどうしよう。
今までのように会えなくなったら、寂しくなるかもしれない。
不安を話すことは、弱さを見せることでもあります。しかし鈴木は、谷の前でその不安を隠しません。
対して谷は言います。
「大丈夫だよ」
「気持ちが離れたりしないし、変わらないよ」
頼もしい言葉です。
もしここで谷が「僕も不安だ」と返していたら、鈴木はもっと心細くなったかもしれません。谷はまず、鈴木が今欲しがっている安心を差し出そうとしたのでしょう。
しかし谷のモノローグは、その言葉がすべてではないと教えてくれます。
谷もまた不安なのです。
離れがたいのです。
変わらないと願っているのは、鈴木だけではありません。
「大丈夫」は鈴木を支える言葉であると同時に、谷自身が自分へ言い聞かせた言葉でもあったのではないか、と考えます。
見栄を自覚した谷は、本音から遠くない

谷は、自分が「見栄を張っている」と理解しています。
ここで違和感を覚えた方もいるかもしれません。
本音を隠して相手を安心させることは、本当に優しさなのでしょうか。
頼れる彼氏でいようとすることは、いつか二人のあいだに壁を作ってしまわないでしょうか。
確かに、谷がずっと不安を隠し続けたなら、鈴木は谷の本当の気持ちを知らないままになるかもしれません。
ただ、第19話の谷は、本音を完全に見失っているわけではありません。自分の「大丈夫」のなかに、格好つけたい気持ちが混ざっていると気づいています。
この自覚は、小さくないでしょう。
見栄を張っていることを知らないまま、相手に強さだけを見せ続けるよりも、「自分も不安なのかもしれない」と立ち止まれる人は、いつか本音へたどり着けます。
谷と鈴木に必要なのは、未来が絶対に変わらないという保証ではないはずです。
環境が変わっても、不安になったときに話せること。
安心させる側と、安心する側を固定しないこと。
その積み重ねがあれば、二人は変化のなかでも、少しずつ同じ場所へ戻ってこられるのではないでしょうか。
谷と鈴木の誕生日デート|「大丈夫」に重なった二つの本音
お花見と誕生日を過ごす穏やかな時間のなかで、二人はクラス替えや受験という未来を見つめます。鈴木が不安を口にし、谷は「変わらない」と答えました。
二人の前にある変化クラス替え、受験、会える時間の変化。
今の距離が、この先も同じとは限らない。
言葉にできる不安
鈴木
同じクラスになれなかったら。
すれ違って、寂しくなったら。
未来が変わるかもしれないことを、鈴木は相手に隠さず伝えます。不安を口にすることは、谷と一緒に受け止めたいという信頼でもあります。
安心させようとする言葉
谷
大丈夫だよ。
気持ちが離れたりしないし、変わらないよ。
谷は鈴木を安心させようとします。しかし、その言葉の奥には、自分も同じように離れがたさや不安を抱えている気持ちが残っています。
谷の「大丈夫」は、二つの層を持っている
表に出た言葉鈴木を安心させたい。これからも変わらずそばにいると伝えたい。
モノローグに残った本音離れがたいのも、不安なのも、本当は自分の方かもしれない。
谷の「見栄」は、鈴木を欺くための嘘ではありません。好きな人の前で頼れる存在でいたいという願いと、自分も不安だと認めきれない弱さが重なったものではないか、と考えます。
図解:第19話「グラデーション」における、谷と鈴木が変化の前で交わした「大丈夫」の構造
東と平のクラス替え考察|「放課後会うし」が、東の心を揺らした理由
――「どうせ俺ら放課後会うし」
第19話で最も静かに、しかし大きく関係を動かした言葉は、平のこの一言だったように思います。
前回、東と平は「また話を聞く」「また話を聞いてもらう」という約束を作りました。
その約束があったからこそ、クラス替えは乗り越えられるはずだったのかもしれません。
けれど人の心は、約束があるだけで不安にならなくなるわけではないのです。
同じ教室を失った東と、関係が続くと信じる平

東にとって同じクラスであることは、平と話す理由を毎日与えてくれる仕組みでした。
隣の席かもしれない。
休み時間に話せるかもしれない。
教室で目が合うかもしれない。
「会う」と決めなくても、そこに平がいる。
しかしクラスが離れれば、その偶然は消えます。会うためには、会う理由が必要になるかもしれない。相手も同じように会いたいと思ってくれなければ、今までの距離は続かないかもしれない。
東は、そんな不安を抱えたのでしょう。
一方の平は、少し違います。
平にとって、東と放課後に会うことは特別なイベントではありません。これからも会うものとして、すでに予定表へ書かれない日常になっている。
だから平は言えたのです。
「どうせ俺ら放課後会うし」
この言葉は、東を励まそうとして出たものではないでしょう。平はただ、自分にとって当たり前のことを言っただけです。
けれど、誰かにとっての当たり前に自分が入っていると知ることは、ときに励ましより深く心へ届きます。
「寂しい」より先に出た「悔しい」は、何への感情なのか

東は、自分の感情に名前をつけようとします。
悲しい。
寂しい。
でも、何か違う。
そして東のなかに残ったのが、「悔しい」でした。
悔しいとは不思議な言葉です。
クラスが離れたことが悔しいのか。
平があっさりしているように見えたことが悔しいのか。
自分だけが関係の変化を怖がっているようで悔しいのか。
それとも、平の一言に救われてしまう自分が悔しいのか。
おそらく、どれか一つではないのでしょう。
東は平を心配してきました。話を聞こうとし、平の傷に怒り、平が自分を責めるときには隣にいようとしました。
しかし第18話の終わりには、東自身も平へ「また話聞いてもらっていい?」と頼っています。
東はもう、平を助ける側だけではありません。
平の生活のなかに、自分も必要とされたい。
平にとって、自分との時間も当たり前であってほしい。
そう願っているからこそ、平が平然として見えたとき、東は少し置いていかれたように感じたのではないでしょうか。
「悔しい」は、寂しさを認めるより先に出てきた、東なりの独占欲だったのかもしれません。
「そう思ってたん俺だけ?」に隠れた平の確認

東が平の言葉に動揺すると、平は気づきます。
「そう思ってたん俺だけ?」
平は、東と放課後に会うことを一人で前提にしていたのかもしれないと、一瞬だけ不安になります。
ここが大切です。
平は東を縛ろうとしていません。
「絶対に毎日会おう」と約束させたいわけでもありません。
ただ、自分が当たり前だと思っていた未来を、東も同じように思っていたのか確かめたかった。
平は一見するとドライです。感情を大きく表に出すタイプでもありません。
けれど、東との放課後を「あってもなくてもいい時間」としては扱っていない。平のなかで東は、会う理由をその都度作らなくてもよい相手になっているのでしょう。
東は会える保証を欲しがっていた。
平は会う未来を、すでに当たり前にしていた。
二人の温度差は、気持ちの強さの差ではありません。関係を信じる方法が、正反対だっただけなのではないか、と考えます。
東と平のクラス替え|「放課後会うし」が揺らした二人の現在地
東と平は別々のクラスになりました。同じ出来事を前にしても、二人が受け取った意味は少し違います。その温度差が、東の言葉にできない感情を浮かび上がらせました。
新学期の出来事東と平は、これまでのように同じ教室では過ごせなくなった。
失われるかもしれない側
東
1 クラス替え同じ教室という、毎日自然に話せる場所がなくなる。
2 不安このまま今までの距離まで失われるのではないかと揺れる。
3 感情の名前寂しい、悲しいだけではない。自分ばかり気にしているようで、悔しい。
続いていくと信じる側
平
1 クラス替え同じ教室ではなくなっても、関係まで変わるとは考えない。
2 前提放課後や駅で会うことは、特別な約束ではなく自然な未来になっている。
3 小さな確認東も同じように会うつもりだと、どこかで信じていた。
平が何気なく置いた言葉どうせ俺ら放課後会うし。
東は会える保証を欲しがっている。平は会う未来をすでに当たり前にしている。二人の差は気持ちの強さではなく、関係を信じる方法の違いです。
平にとって東は、会うかどうかを改めて決める相手ではなく、放課後に会う前提の相手になっていました。東が揺れたのは、その当たり前を自分も信じてよいのか、まだ確信できなかったからではないか、と考えます。
図解:第19話「グラデーション」における、クラス替え後の東と平の感情と「放課後会うし」の温度差
3組の関係性比較|受容、安心、未命名の特別が描く3つのグラデーション
第19話は、3組の関係を同じ基準で並べません。
誰が一番進展したか。
誰が一番恋人らしいか。
誰が先に答えへたどり着くのか。
そんな順位をつける回ではありませんでした。
山田と西、谷と鈴木、東と平は、別々の場所で、それぞれの色を育てています。
恋人である二人にも、答えのない不安はある
山田と西は、すでに恋人です。
それでも、相手との距離をどのように縮めていけばよいかは、まだ手探りです。呼び方ひとつを変えるだけでも照れるし、デートの楽しみ方が違えば相手を退屈させていないか不安になる。
谷と鈴木も恋人です。
それでも、未来への不安が消えるわけではありません。クラス替えや受験を前に、今の関係を守れるのかと揺れます。
恋人という名前は、関係を完成させるゴールではありません。
むしろ、名前がついたあとから、相手とどう違い、どう支え合い、どう変化を越えるかが問われていくのかもしれません。
名前がない関係にも、確かな当たり前は生まれる
東と平には、まだ恋人という名前がありません。
東は自分の気持ちを「恋」と言い切れないでしょう。平もまた、東との関係を特別な言葉で説明しているわけではありません。
しかし二人には、放課後に会う未来があります。
それは約束というより前提です。
前提というより、生活の一部に近いものです。
名前のない関係は、不安定に見えるかもしれません。
けれど、言葉にした約束だけが関係を強くするわけではないのでしょう。平が何気なく置いた「どうせ俺ら放課後会うし」という言葉には、東を自分の日常へ入れている事実がありました。
私たちは、ときどき特別な相手ほど、特別だと言わずに扱っているのかもしれません。
第19話「グラデーション」|3組が見せた関係の色
3組は、恋愛の進み方を競っているわけではありません。異なる場所に立ちながら、それぞれの方法で相手との距離を変え、二人だけの色を増やしています。
大切なのは、恋人か、友達かという一つの名前だけではありません。第19話は、関係のなかに生まれた感情の濃淡そのものを映し出した回でした。
1 山田 × 西
違いを共有する
関係の色:受容
見たいものも、楽しみ方も違う。それでも相手が夢中になる姿を、二人のデートの喜びとして受け取れるようになりました。
二人をつないだもの同じ見方をしなくても、一緒に楽しめること
2 谷 × 鈴木
不安を抱えて約束する
関係の色:安心
変化が怖いからこそ、今と同じようにそばにいたいと願う。谷の「大丈夫」には、鈴木を守りたい気持ちと自分の揺れが重なっています。
二人をつないだもの変わる未来の前で、それでも離れたくないという願い
3 東 × 平
当たり前を作り始める
関係の色:未命名の特別
別クラスになっても、平は放課後に会う未来を当たり前としている。東はその言葉に救われながら、なぜ救われたのかをまだ言葉にできません。
二人をつないだもの会う理由を作らなくても、また会うと思えること
3組に共通すること相手を自分と同じ色に変えようとしていない。違うまま隣にいるから、二人の間に新しい色が生まれていく。
「グラデーション」とは、境目が完全に消えることではありません。恋人と友達、安心と不安、自然体と戸惑い。そのどちらかを選べない感情が重なる場所にこそ、人と人の関係の本当らしさがあるのではないか、と考えます。
図解:第19話「グラデーション」における、3組のペアがそれぞれに育て始めた関係の色
第19話「グラデーション」感想|違うまま隣にいる二人が、少しずつ増やしていく色
――水槽の前で、西は立ち止まる。
山田は、西と同じ速度で展示を見ませんでした。それでも、西が見つめるものを急かさず、その楽しそうな表情を自分の喜びとして受け取ります。
――桜の下で、鈴木は未来を怖がる。
谷は「大丈夫」と言いました。その言葉には見栄もあり、不安もありました。それでも、鈴木を安心させたいという願いが確かにありました。
――新しい教室の前で、東は立ち止まる。
平は「放課後会うし」と言いました。東が必死に探していた答えを、平は答えだとも思わず、当たり前のように差し出したのです。
第19話「グラデーション」は、関係に白黒をつけません。
山田と西は、違う見方を持ったまま恋人です。
谷と鈴木は、不安を抱えたまま未来を約束します。
東と平は、名前がないまま放課後に会うことを前提にしています。
すべてが途中です。
けれど途中だからこそ、相手の一言で色が変わる。呼び方が変わる。会うことの意味が変わる。
誰かと近づくことは、自分の色を手放すことではないのでしょう。

西は西のまま、山田の隣にいる。
谷は不安を抱えたまま、鈴木を安心させようとする。
東は揺れたまま、平の「当たり前」に救われる。
平は平のまま、東との放課後を未来に置いている。
違いを消さず、相手の色を奪わず、それでも二人のあいだに新しい色を増やしていく。
「グラデーション」とは、きっとそういう関係のことではないでしょうか。
次に会う理由がなくても会えること。
不安があっても、相手の未来に自分を置いてみること。
好きなものを同じように見なくても、相手が楽しそうならうれしいと思えること。
正反対な二人が重なったとき、世界は一色にはなりません。
むしろ、以前より少しだけ複雑で、少しだけやわらかく、名前のつかない色を増やしていくのです。
原作は少年ジャンプ+連載、阿賀沢紅茶さんによるコミックス全8巻で完結済み。第2期は7月5日よりMBS・TBS系全国28局ネットで放送中。第1期は2026年1月放送で、「マンガ大賞2024」第7位、「みんなが選ぶ!!電子コミック大賞2024」男性部門賞などの受賞歴があります。
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