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「汝らの望むものはここだ。ここにある。欲しくば取りに来い」
黒い塔に響いた声は、神学校ソルセインへ集う者たちへの招待状だったのでしょうか――。『クレバテスⅡ』第1話が描いたのは、戦争の終結ではありません。二年間だけ剣を収め、制服と肩書に正体を隠して、世界の真実を奪い合う新たな戦争の始まりでした。この記事では、学ぶ者になったクレン、アリッサとして再出発するアリシア、ドレルの秘密の部屋、ナイエの鏡、そしてレイの強さを考察します。
※※記事は、アニメ『クレバテスⅡ』第1話(公式表記:第1幕)「神学校ソルセイン」の内容を含みます。
第2話以降と原作の重大なネタバレには触れていません。
クレバテス2期 第1話あらすじ|二年間の停戦が新たな扉を開く
▼ 第1期から振り返りたい方はこちら
📖 第1期『クレバテス』感想&考察記事を読む「土地や地位、私にできることなら、何なりと――」
ハイデンを救い、ルナをトアラのもとへ送り届けたクレンたちに、褒賞を選ぶ権利が与えられます。ネルルがルナの正式な乳母となる一方、クレンが望んだのは土地でも地位でもありませんでした。
彼が口にしたのは、ルナ専属の魔術教師になること。
しかし、ハイデンの伝統ではルナの教育が始まるのは三歳からです。そこでクレンは、それまでのおよそ二年間を利用し、自ら魔術を学ぶことになります。
同じ頃、古来橋ではハイデン、エスリン、ボーレートによる三国協議が開かれていました。議題はボーレートによる侵攻の責任と賠償。そして、ドレルが進めていた魔術研究です。
人の赤子や魔獣の子を実験台にしていた疑いのある、おぞましい研究――。
エスリン王ユリエルは、その研究場所と成果の開示を求め、見返りとして二年間の停戦を提案します。ボーレート皇帝ベイスは、関係者として正面から入ることを条件に調査を認めました。
その場所こそ、エドセアで最も長い歴史を持つ神学校ソルセインだったのです。

三国協議の意味|誰も相手を許してはいない
二年間の停戦。
この言葉だけを取り出せば、ようやく平和が訪れたように聞こえます。しかし、少し立ち止まってみましょう。古来橋に立つ三国の代表たちの間に、和解の空気はあったでしょうか。
ハイデンは深く傷つき、トアラはボーレートへの制裁を求めています。エスリンはドレルの研究成果を独占させまいと動き、ベイス皇帝は護衛のザザックをけしかけることさえためらいません。
誰も剣を捨てたわけではないのです。
ただ、剣を振るより先に奪うべきものが見つかった。そのために、いったん鞘へ戻しただけではないか、と考えます。
つまり二年間とは、平和の長さではありません。
次に剣を抜くまでの猶予です。

神学校ソルセインへの潜入|全員が別の顔を持っている
ソルセインへ入るため、アリシアは少女の姿と「アリッサ・スレイハント」という偽名を与えられました。クレンも留学生となり、ナイエは教師として学校へ潜入します。
そこへ、エスリンの双子、オーグとスラーダからの留学生、そしてクレンさえ注目するレイが集まりました。新しい名前が一気に増えましたので、ここで顔と立場を整理しておきましょう。
CLEVATESS Ⅱ・EPISODE 1顔でわかる「神学校ソルセイン」人物ガイド
第1話時点の「表向きの立場」と「本当の目的」を整理します。
アリッサ
留学生
正体:アリシア
少女の姿と偽名で入学した屍の勇者。クレンと秘密の部屋を探ります。
⚔️ 別の名前で始める再出発
⇄
クレン・バーティス=魔獣王クレバテス表向きはハイデンから来た留学生。ルナの教師になるため、今度は自分が魔術を学びます。
ナイエ
新任教師
ベイス皇帝の命令で潜入。秘密の部屋へ入った記憶が欠けています。
🪞 鏡と大穴の記憶
レイ
ソルセインの生徒
紋式詠唱魔術を操る少年。静かな顔の内側に、激しい熱を隠しています。
⚡ クレンが認めた異質な強さ
ミレア
理事長
過酷な魔術教育で傷つく生徒たちを案じる、ボーレートの王女です。
👸 「あの子たち」を守りたい
エルロー・ローメイン
学長
「私がソルセインを守る」と語る管理者。その穏やかさが逆に謎を深めます。
🎓 何から学校を守るのか
ティゲル
エスリン
双子の一人。挑発的な態度でレイと衝突します。
🧪 薬式魔術
リオン
エスリン
ティゲルと常に行動する双子。二人で薬式魔術を操ります。
👥 二人で一つの戦い方
サラサ
西の大樹海オーグ
角を持つ堂々とした少女。古風な話し方が印象に残ります。
🌳 クレンと同じ「角付き」
エディソン
東の国スラーダ
緊張しながらも、大声で自己紹介した気弱そうな留学生です。
🌊 来校には事情がある?
ルナ
ハイデンの次代の王
学校にはいませんが、クレンが魔術を学ぶ最大の理由です。
👶 不在のまま物語の中心にいる
ヴォーデイン
北方の魔獣王
ドレルを魔血で支配していた存在。なぜ人属の魔術研究を進めたのでしょうか。
🔥 秘密の部屋につながる黒幕
※人物情報は『クレバテスⅡ』第1話で確認できる範囲に限定しています。画像出典:TVアニメ『クレバテス』公式サイト
少し立ち止まってみましょう。
こうして顔と立場を並べると、ソルセインが普通の学校ではないことが、より鮮明になります。生徒の姿をした調査員、教師の姿をした潜入者、そして人属の姿をした魔獣王――ここでは、目に見える肩書と本当の目的が一致しません。
この学校には、純粋に授業だけを受けに来た人物が、いったい何人いるのでしょうか。
神学校ソルセイン考察|学校編は物語を小さくしたのか
第1期では、王都が破壊され、山賊団との死闘があり、軍勢と魔術がぶつかりました。その激しさを見届けたあとで「次の舞台は学校です」と告げられれば、少し身構えてしまうのも無理はありません。
物語が穏やかになるのではないか。
学園生活を中心とした、軽い雰囲気へ変わるのではないか。
放送前、そんな不安を抱いた方もいたのではないでしょうか。
しかし第1話は、その心配を古来橋から谷底へ投げ捨てました。
戦場から学校へ|見えない武器のほうが怖い
戦場では、敵が武器を持って正面からやって来ます。
けれども学校では、敵が隣の席に座るかもしれません。教師として笑いかけ、廊下ですれ違い、同じ授業を受けながら、こちらの目的を探っているかもしれないのです。
THREE NATIONS, SIX MOTIVES顔でわかる「神学校ソルセイン」6つの思惑
同じ校門をくぐっていても、全員が同じ未来を見ているわけではありません。
🏰 三国がソルセインへ向ける思惑
潜入
エスリン
古代魔術につながる研究の独占を阻止したい
目的:技術確保
留学生
ボーレート
表向きは門戸を開き、内部では各国を監視したい
目的:監視と統制
表の顔:魔術を学ぶ教育機関裏の顔:研究成果と真実を奪い合う情報戦の舞台
クレン・バーティス
表向き:留学生
ルナの魔術教師になるため、魔術の仕組みを学びたい。
🎯 個人の目的:教育の準備
本当の姿は魔獣王クレバテス
アリシア/アリッサ
表向き:留学生
クレンとともに、ドレルの秘密の部屋へ近づきたい。
🎯 個人の目的:秘密の調査
少女の姿と偽名で正体を隠して潜入
ナイエ・シフォンリッツ
表向き:新任教師
消えた記憶を抱えたまま、皇帝から命じられた調査を進める。
🎯 個人の目的:任務と記憶
鏡・螺旋階段・大穴――記憶だけが欠けている
戦場から学校へ移ったのではありません。戦場が制服に着替えたのです。
※『クレバテスⅡ』第1話で確認できる立場と目的を図解しています。画像出典:TVアニメ『クレバテス』公式サイト
二年間という期限|同じ未来を誰のために使うのか
ソルセインが他国へ門を開く期間は二年。
そして、ルナの本格的な魔術教育が始まるまでの時間も、およそ二年です。
同じ二年間を、国家は研究成果の獲得と次の戦争への準備に使おうとします。一方、クレンはルナへ魔術を教える準備に使おうとしています。
どちらも未来を見ていることに変わりはありません。
けれど、その未来にいるのが「強くなった国家」なのか、「成長した一人の子ども」なのかで、時間の意味は大きく変わります。
力で人属を滅ぼせる魔獣王が、未来のために選んだのは破壊ではなく教育でした。
この静かな対比こそ、第1話の底に流れる希望ではないか、と考えます。
二年後に待つのは、ルナが言葉と力を学ぶ日でしょうか。それとも、三国が再び剣を抜く朝でしょうか。
その両方が同じ時計で数えられていることに、ソルセイン編の緊張があります。
「偽り」の学校|本当の自分では入れない場所
クレンは人属を演じます。
アリシアはアリッサを演じます。
ナイエは教師を演じます。
さらに、ティゲルとリオンの尊大な態度にも、周囲の目を引きつけるための誇張が混ざっているように見えます。
「偽れ。真実を暴くために。」
放送前から掲げられてきた言葉が、第1話で早くも形になりました。真実を探すためには、まず自分を偽らなければならない。正体を隠さなければ、秘密の置かれた場所へ入ることさえできません。
けれど、偽り続けることは簡単ではありません。
新しい環境へ入るとき、私たちも少しだけ違う顔を作ることがあります。平気なふりをし、知らないことを知っているように振る舞い、周囲に合わせて笑う。そうしなければ、居場所を失いそうになるからです。
本当の名前も、目的も、力も明かせない――。
その息苦しさに覚えがある人ほど、ソルセインの廊下は見知らぬ異世界ではなく、かつて歩いた場所のように映ったのではないでしょうか。
クレンの変化|最強の魔獣王が「学ぶ者」になった
「ならば我は、王の魔術教師になりたい」
第1話で最も大きな変化を示したのは、派手な魔術でも三国の交渉でもなく、この短い願いだったのかもしれません。
トアラは土地や地位を与えると言いました。しかし、魔獣王クレバテスに人属の土地も地位も必要ありません。
彼が欲したのは、ルナの成長へ関わるための役割でした。
ルナの魔術教師を望んだ理由|支配よりも成長を見届ける
第1期の始まりで、クレバテスにとってルナは、人属に生かす価値があるかを判断するための存在でした。
赤子が人属の価値を証明する――。
シロ・クレイトスの言葉を受け入れたとはいえ、当初のクレバテスにあったのは好奇心と観察者の目線です。
ところが旅を終えた今、クレンはルナの教師になりたいと、自分から願いました。
見届けるだけではなく、育てる側へ。
価値を判定するだけではなく、未来を作る側へ。
もちろん、クレン自身がその変化を人属の言葉で説明することはないでしょう。彼にとっては合理的な選択にすぎないのかもしれません。
それでも、誰かに何かを教えるためには、その相手が未来にも存在すると信じる必要があります。
不在の赤子が、魔獣王を学校へ連れてきました。
ルナはソルセインにいません。それでも彼女は、クレンが学ぶ理由として、物語の中心にいるのです。
放送前予想の答え合わせ|先生ではなく生徒だった
放送前の記事では、クレンが神学校の教壇に立ち、人間の生徒たちへ魔術を教える展開を想像していました。
これは見事に外れました。
クレンはソルセインの先生ではなく、生徒として入学したのです。
ただ、この裏切りはうれしいものでした。
クレンは圧倒的に強い存在です。しかし、魔術についてすべてを知っているわけではありません。誰かの教師になるためには、まず自分が学ばなければならない。その当たり前を、最強の魔獣王にも適用したところに本作の面白さがあります。
強いことと、知っていることは同じではありません。
知らないと認めることは、戦いに勝つより難しい場合があります。クレンにとってソルセインは、魔術を習得する場所であると同時に、自分の無知と向き合う場所になるのではないか、と考えます。
もっとも、入学初日からアリシアに向かって「戦う以外まるで能がない」と切り捨てるあたり、教育者らしい柔らかさは校門の外へ置いてきたようです。
ルナの初授業までに、魔術だけでなく言葉選びも履修していただきたいところです。
アリシアがアリッサになる意味|削られた身体と新しい名前
「目が覚めたら、身体が縮んでいたんだが!」
アリシアの叫びは、重い第1話に見事な風穴を開けました。
クレンの説明は、さらに強烈です。
身体が大きすぎたから、魔血で「削った」。
洋服の裾を詰めるように人の身体を加工する魔獣王。しかも次は一瞬でできると、どこか誇らしげです。アリシアでなくても「私はおもちゃじゃない」と抗議したくなります。
身体を「削った」クレン|笑えるのに怖い

この場面は軽快な掛け合いとして楽しめますが、同時にクレンとアリシアの関係が持つ危うさも残しています。
アリシアはクレンの魔血で動く屍の勇者です。生死だけでなく、身体の形までクレンの意思で変えられる。本人の承諾より目的を優先するところも、クレンが人属の倫理を身につけていない証拠です。
一方で、クレンはアリシアの身体を「完全に把握した」と語ります。
支配の言葉として聞けば恐ろしく、旅の仲間を観察し続けていたと考えれば、別の意味が浮かびます。
彼女を道具としてしか見ていないのか。
それとも、失うことのないよう把握しているのか。
現時点では、どちらか一方に決めることはできません。その判別できなさこそ、クレンとアリシアの関係にある独特の緊張ではないでしょうか。
アリッサ・スレイハント|別の自分を試すための猶予
少女の姿になったアリシアは、「アリッサ・スレイハント」という名で学校へ入ります。
第1期の彼女は、あまりにも多くの役割を背負ってきました。
勇者であり、屍であり、ルナの守り手であり、父を奪ったドレルを追う復讐者でもありました。どの役割も重く、「普通の自分」でいられる余白はほとんどありませんでした。
しかしソルセインでは、彼女は一人の生徒です。
もちろん偽名であり、潜入任務でもあります。自由になったとは言えません。それでも「勇者アリシア」として完成された姿を求められず、知らないことを知らないと言える時間が生まれます。
別の名前を名乗ることは、自分を偽ることでしょうか。
それとも、これまで選べなかった自分を試すための、小さな猶予でしょうか。
第1話のアリシアは、まだ新しい身体に振り回されています。けれど、「アリッサ」として誰かと出会い直すことが、彼女自身の傷や強さを見つめ直す契機になるのではないか、と考えます。
レイの強さを考察|静かな顔の内側にある火山
「存在感がないから、全然気づかなかった」
レイ・フォレスターは、ブルーイエ兄弟の挑発を涼しい顔で切り返します。
穏やかに見えて、言葉はなかなか鋭い。売られた喧嘩を避けるどころか、相手が後戻りできない場所まで静かに連れていく人物です。
そして始まった魔術戦は、第2期が描こうとしている戦いの質を鮮明に示しました。
薬式・結晶式・紋式詠唱魔術|第1話で見えた三つの系統
第1話で提示された魔術を整理すると、次のようになります。
| 魔術体系 | 第1話で示された特徴 | 主な使用者 |
|---|---|---|
| 薬式魔術 | 薬品や魔鉱石などを調合し、現象を起こす旧式の技術 | ティゲル、リオン |
| 結晶式魔術 | 魔結晶を身体に移植して術を行使する | ナイエ、ドレル、メイナード |
| 紋式詠唱魔術 | 「紋」と式を組み合わせる、トアの魔術に近い力 | レイ |
薬式魔術は二世代前の技術と呼ばれましたが、それだけで弱いわけではありません。ブルーイエ兄弟は薬品と魔鉱石を組み合わせ、対象を追う砂塵の渦を作り出しました。
しかしレイは、その渦を正面から力で破壊しません。
状態を加速させる「紋」と雨を呼ぶ式を重ね、上昇気流が生み出す雨雲を利用して、局地的な雷へつなげます。
相手の術を観察し、構造を理解し、その現象そのものを自分の攻撃へ変える。
腕力ではなく、知識と発想で戦場を組み替える魔術です。
第1期の剣戟とは異なる面白さが、ここで一気に立ち上がりました。
レイ対ブルーイエ兄弟|雷より怖い冷静さ

レイが恐ろしいのは、雷を落とせることだけではありません。
周囲の生徒が危険を感じても、彼の表情はほとんど崩れません。さらに攻撃を重ねようとして、ナイエに止められるまで手を緩めようとしませんでした。
外側は静かで、内側は激しい。
クレンは、そんなレイを「火山」「マグマのような熱量」と表現します。そして、アリシアを含め、自分を討ちに来た者たちの中にも、あれほどの者はいなかったと評しました。
これは単純に「レイは13人の勇者より強い」という戦闘力比較ではないでしょう。
クレンが見抜いたのは、力を求める執着、あるいは目的へ向かう意志の密度ではないか、と考えます。
レイの涼しげな顔もまた、ひとつの仮面です。
その下で燃えているものは何なのか。誰に向けられた怒りなのか。それとも、失った何かを取り戻すための熱なのでしょうか。
「正気では魔術で強くなれない」という彼の姿勢は、才能の証明であると同時に、壊れることを恐れない危うさにも見えました。
ドレルの秘密の部屋|ソルセインの地下で何が起きたのか
第1話の最大の謎は、ドレルがソルセインで使用していた「秘密の部屋」です。
人の赤子や魔獣の子を実験台にした研究。
この事実を聞いたアリシアは、山賊ブロコが売りさばいていた赤子の行き先を思い浮かべます。もし運命が少し違っていれば、ルナもそこへ送られていたかもしれません。
研究の犠牲者を救い、所業を暴くことは必要です。
ところが、各国が欲しがっているのは場所だけではありません。「そこで得られた成果のすべて」も要求しています。
ここに、人属の業が見えます。
おぞましい実験を非難しながら、その結果だけは利用したい。
犠牲者を救うための調査と、軍事的な力を奪うための調査が、同じ「正義」の顔で進められようとしているのです。
ヴォーデインの目的|なぜ人属を強くしたのか
アリシアは、重要な矛盾に気づきました。
ドレルはヴォーデインの魔血に支配されていたはずです。それなのに、なぜ魔術研究を続けさせたのでしょうか。
魔術は人属を強くします。強くなった人属は、魔獣にとって脅威になるはずです。
それでもヴォーデインが研究を許したのなら、目的は単純な人属の滅亡ではありません。
強くなった人属が必要だったのか。
勇者伝承を動かすため、魔術の発展が欠かせなかったのか。
あるいは、人属が力を得ていく過程そのものから、何かを回収しようとしているのか。
王家の炉を狙ったこととも、無関係ではないでしょう。
第1期では、人属と魔獣は対立する存在として描かれました。しかし、その構図そのものが、誰かによって作られた「偽り」だった可能性もあります。
ヴォーデインは人を滅ぼしたいのでしょうか。それとも、何かを完成させるために、人の強さを必要としているのでしょうか。
ナイエの記憶|大穴へ続く道だけが消えている
秘密の部屋を知る数少ない人物が、ナイエ・シフォンリッツです。
彼女は魔結晶の移植施術を受けるため、ドレルに連れられて研究施設へ入りました。
暗い建物。
いくつも並ぶ小部屋。
そこから聞こえる、うめき声と奇妙な音。
奥へ進むうちに、自分が歩いているのか、目を開けているのかさえわからなくなる。そして気づいたときには、螺旋階段のある巨大な穴に浮いていた――。
場所についての印象は残っているのに、そこへ至る道だけが思い出せません。
さらにベイス皇帝は、ナイエ以外から聞き出した話もほぼ同じだと語ります。
複数の人間が、同じ場所へ行き、同じように道筋を忘れている。
偶然とは考えにくいでしょう。
秘密の部屋は物理的に隠されているだけではなく、訪れた者の認識や記憶へ干渉する仕組みを持っているのではないか、と考えます。
存在しない鏡|真実を映すのか、反転させるのか
立ち去ろうとしたナイエが、最後に思い出したものがあります。
制服姿の自分が立っていた鏡です。
けれど、彼女の記憶によれば、あの鏡はソルセインには存在しなかったはずでした。
鏡は、真実を映す道具のように見えます。しかし実際には、左右を反転させた像を返します。
本物に似ているけれど、本物ではない。
自分であるように見えて、自分とは逆の存在。
「偽りの勇者伝承」という題名を掲げる物語において、これほど不穏な小道具もありません。
秘密の部屋への入口なのか。
別の空間と学校をつなぐ境界なのか。
あるいは、記憶を抜き取られたナイエが、失った自分を見た場所なのか。
鏡に映っていたのは過去のナイエだったのでしょうか。それとも彼女が忘れさせられた、もう一人の自分だったのでしょうか――。
ナイエとミレアの感想|弱さを抱えた女性たちの学校生活

巨大な謎が動き始める第1話の中で、ナイエとミレアは、それぞれ異なる形の弱さを見せました。
その弱さが、物語に人の体温を残しています。
ナイエ・シフォンリッツ|戦場より教室が怖い人
ベイス皇帝に呼び出されたナイエは、処罰されると思い込み、心の中で震え続けます。
秘密の部屋について話せば見逃すと言われ、ようやく安堵したところへ下された任務が、ソルセインの教師になることでした。
「私は学校が苦手なんです」
「集団になじめないんです」
「帰りたい」
その心の声が、あまりにも切実です。
戦場から生きて帰った上位魔道士が、生徒たちの「おはようございます」で瀕死になるとは、誰が予想したでしょうか。
しかし、ここで笑えるのは、彼女の気持ちに少し覚えがあるからでもあります。
大勢の視線が集まる場所で、自分だけが場違いに思える。何を話せばいいかわからず、廊下を歩くだけで消耗する。
ナイエの臆病さは、単なるコメディ要員として処理できません。彼女は失われた記憶を抱え、自分が誰の味方をすればよいのかもわからないまま、学校へ放り込まれています。
逃げたいのに、逃げる場所も相手も選べない。
その頼りなさが、秘密の部屋へ近づくほど深い恐怖に変わっていくのではないでしょうか。
ミレアとローメイン|優しい会話に残る違和感
ミレアは、ソルセインの魔術教育が過酷であることを認めています。
中には立ち直れなくなる生徒もいる。これ以上、あの子たちに負担をかけたくない――。
生徒を「あの子たち」と呼ぶ言葉からは、理事長として守ろうとする気持ちが伝わります。
それに対してローメイン学長は、魔術の発展が人の世の未来を作ると語り、「私がソルセインを守ってみせます」と約束しました。
言葉だけを聞けば、理想的な学長です。
それなのに、なぜでしょう。
ドレルの研究と失踪した記憶を知ったあとでは、その優しさが逆に不穏に響きます。
学校を、誰から守るのでしょうか。
生徒を守るのか。秘密を守るのか。それとも、学校そのものが持つ仕組みを守るのか。
穏やかな声ほど、その裏側を疑いたくなる――。ソルセインは、すでにそんな場所として描かれています。
『クレバテスⅡ』第1話感想まとめ|学び舎ではなく真実の争奪戦へ

「汝らの望むものはここだ。ここにある。欲しくば取りに来い」
冒頭の黒い塔に響いた声は、そこで戦う者だけに向けられた言葉だったのでしょうか。
魔術の力を欲する者。
国を守るため、研究成果を欲する者。
失われた記憶を取り戻したい者。
そしてルナへ未来を教えるため、自分が知らないことを学ぼうとする魔獣王。
ソルセインの門をくぐった全員が、それぞれの「望むもの」を抱えています。
第1話の結論|学校編は世界の内側へ入る物語
CLEVATESS Ⅱ・EPISODE 1神学校ソルセインは「世界の仕組み」への入口
物語が小さな教室へ閉じ込められたのではありません。
クレンたちは、世界を動かす仕組みの内側へ足を踏み入れました。
🏫 神学校ソルセインへ潜入
人属の姿をしたクレンと、アリッサを名乗るアリシア。二人が入ったのは、ただ魔術を学ぶだけの教室ではありません。
失われた記憶
秘密の部屋までの道だけが消えている
ナイエ
存在しない鏡
学校にはなかったはずの記憶
表と裏
レイの力
古代トアの魔術へ近づく異質な才能
紋式詠唱
「正しい知識」を決める場所
何を教え、何を隠し、どの物語を真実として残すかを選ぶ。
→
伝承の外側にいる魔獣王が、内側へ入る
人属の常識に縛られないクレバテスだからこそ、誰も疑わなかった「正しさ」の綻びを見つけられるのかもしれません。
クレバテス → クレンとして入学
だから、学ぶことから始める。 相手を倒す力だけではなく、無知を認め、誰かのために学ぶことも強さなのか――。第2期は、第1期とは異なる強さを問い始めました。
※『クレバテスⅡ』第1話で示された情報をもとに構成した考察図です。画像出典:TVアニメ『クレバテス』公式サイト
第1話が開いたのは、学校生活の扉ではありません。
真実を欲する者たちが同じ校舎へ集められ、互いの偽りを暴き始める――静かな戦争の扉だったのではないでしょうか。
放送前の総合考察はこちら
PRE-BROADCAST ANALYSIS 『クレバテスⅡ』なぜ舞台は学校になったのか 「偽りの勇者伝承」とは何を意味するのか。放送開始前に考えた、神学校ソルセイン、クレン、アリシア、レイ、主題歌の総合解説です。 放送前の予想 第1話の答え合わせ第1話を見たあとに読むと、「当たった予想」と鮮やかに裏切られた部分の両方を楽しめます。
『クレバテスⅡ』配信中
作品の配信状況をU-NEXTで確認できます。
びわおからひとこと
「偽れ。真実を暴くために。」――第2期を見て、クレンとアリシアが歩いてきた第1期も振り返りたくなった方がいるかもしれません。
U-NEXTは『クレバテスⅡ』を地上波先行・最速で毎週配信。初回登録の方は、無料トライアルの対象になる場合があります。視聴前に、作品の配信状況と最新の利用条件をご確認ください。
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