日経MJより:ホテル、ハレの場から日常の空間に

長期滞在プランで回遊、ウィズコロナの生活スタイル

12月26日付日経MJに以下の記事がありました

新型コロナウイルスの影響で人々の生活スタイルが変わってきた。テレワークの定着もその一つだ。最近は休暇を楽しみながら仕事をするワーケーションも注目されている。こうしたコロナ下の生活の変化に対応して、シティホテルが非日常のぜいたくな空間を日常のように使うことができるサービスを始めた。

「旅するように暮らす」――。東急はグループのホテルなどに定額で長期滞在できるサブスクリプションサービスを展開している。

「(ツギツギ)」と呼ぶサービスで今春、第1弾として30泊(18万円)もしくは60泊(36万円)で、39のホテルなどを回遊できるプランを打ち出した。100人限定で売り出したところ、予想を大きく上回る933人から応募があったという。

生活スタイルとして定着したテレワーク

「テレワーク」。デルタ株が猛威を振るった2021年春から夏以降、多くの企業で実施されました。デルタ株猛威の最中は「旅するように暮らす」なんて優雅なものではなかったですが、テレワーク自体は生活スタイルとして定着した感じです。

Withコロナも2年を経過しようとしています。その間、テレワークを快適に、効率よく実施するための各種インフラが構築されました。今や誰もが使っているZoomがその代表でしょう。

ワーケーションの可能性

一方、「旅するように暮らす」というスタイルは「ワーケーション」として国が力を入れて推進しています。ワーケーションの概念は90年代からあり、観光庁では『Work(仕事)とVacation(休暇)を組み合わせた造語。テレワーク等を活用し、リゾート地や温泉地、国立公園等、普段の職場とは異なる場所で余暇を楽しみつつ仕事を行うことです。休暇主体と仕事主体の2つのパターンがあります。』と説明しています。

ワーケーションは浸透しているのでしょうか。株式会社クロス・マーケティングと山梨大学の研究グループが今年3月に共同で実施した全国調査によると、全国47都道府県に在住する男女20~64歳の就業者7万6834人のうち、直近1年間にテレワークの「経験あり」が39.6%に対して「ワーケーション」を経験している人はわずか6.6%だったそうです。このデータは日本人の国民性や会社の考え方に加え、制度を後押しする支援策が少ないことがワーケーション浸透を阻害していることを示唆しています。

観光庁ホームページより

このサービスが新しい点「料金前払い」

自社のグループホテルや提携先ホテルを回遊してもらう仕組みは以前からありました。ポイントカードです。レイトチェックアウト1時間無料とか10泊したら次の1泊は無料で宿泊できるという類です。代表的なものに東横インの「東横INNクラブカード」やリッチモンドホテルの「リッチモンドクラブ」などがあります。

これらはビジネスユースを狙った「お得なサービス」と言えます。多く利用したユーザーに対する「ご褒美」的なサービスです。

しかし 東急の「 TsugiTsugi 」 は、「料金前払い」という点が画期的で、ポイントカードとは異なります。料金前払いは東急にとって有利な条件ですが、ユーザーにとっても(払ったお金を宿泊で取り戻したいという)消費喚起効果があるため、ワーケーションを促進させるにはいい面があります。国も後押ししている政策であり、法人利用の補助金などがあればさらに浸透するのではないでしょうか。

なお、新聞記事では「サブスクリプション」と紹介され、定額使い放題のようなイメージを持たれる可能性がありますが、東急は「サブスクリプション」という表現はしていません。申し込み条件に上記30泊コースは『申込時に全額クレジットカードで支払う』とあります。実際は定額ではあるけれど使い放題ではない(18万円で30泊)からでしょう。

実際に使えるのか?

TsugiTsugi 」はワーケーション商品であり、東急としては同一ホテルでの長期滞在を狙ったものではなく、全国に点在するグループホテルの利用を促すための商品です。

仮に30泊(18万円)コースを使用すると仮定します。1泊6千円ですが、同伴者1名までは無料だから夫婦で使えば1人3千円なんでかなりお得なプランといえます。だけど、ワーケーションとして使うとするとどこに泊まるホテルがあるのかがポイントになります。全国に39か所らしいのですが、僕が住んでいる九州だと泊まれるホテルは博多エクセルホテル東急、博多東急REIホテル、東急ステイ福岡天神、東急ステイ博多、熊本東急REIホテル、阿蘇キャニオンテラス&ロッジの6施設のみです。阿蘇のホテル以外はいわゆる市街地のホテルであり、しかも福岡市圏内4施設と熊本市圏内1施設のみです。こうしてみると九州ではワーケーションというよりビジネスホテルのサブスクリプションサービスという結果になってしまいます

これが東京圏や近畿圏、東海・中部圏だと本当にワーケーション利用が可能なんでしょう。交通インフラの規模が全く違うので、1時間以内の交通圏が九州の何倍も広い範囲をカバーしているからです。

TsugiTsugi はツギツギと広がるだろうか

僕は広がると思います。その理由はマーケティングの環境が大きく変化しているからです。

2010年代にワークライフバランスが喧伝(2007年には内閣府が「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」と行動指針を定め、2017年までに有給休暇消化率を100%にし、男性の育児休業取得率を10%に引き上げるなどの目標を掲げた。)され、働き方改革やダイバーシティの流れにつながりました。そしてコロナ禍の今はSDGsで「多様性」が謳われています

働き方にも当然多様性が求められ、その実現方法として 「 TsugiTsugi 」 は有望な商品だと考えます。新しいマーケティングの形に乗って sugiTsugi はツギツギと広がるのです。

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