新興富裕層がつくる好循環 IPO資産による次世代の育成とは

日経新聞に以下の記事が出ていました。世界の富裕層が2000万人を突破し、その中でも日本は2番目に富裕層の数が多いという記事です。この背景には何があるのでしょうか?

どこ吹くコロナ、新富裕層台頭 金融機関が熱視線 (2022.1.2 日経新聞)

数十億円以上の金融資産を持つ超富裕層が世界で拡大している。世界的なカネ余りによる新規株式公開(IPO)の活況などが背景にあり、新型コロナウイルス禍もどこ吹く風で潤う。若い世代も増え、マネーの流れの景色を変えつつある。各国の金融機関や税務当局は新たなお金持ちたちへのアプローチに躍起となっている。

日経新聞に書かれていること

  • 金融資産を100万ドル(約1億1000万円)以上保有する富裕層は前年から6%増えて2080万人に拡大した。
  • 国別で富裕層が最も多いのは米国で、日本が続く。日本は先進国の間でも人口規模が大きく、一般に金融資産を比較的多くもつ高齢者の割合が高いことも背景にあるとみられる。
  • 新興富裕層はIPOや会社の売却を機に資産を増やす30~50代が多い。
  • 21年の世界のIPO件数は9月末時点で20年の通年実績を上回った。長引くコロナ禍で金融緩和が続き、あふれるマネーを吸い寄せる。

どうでしょう。世界的に富裕層が拡大した⇒日本は2番目に多い⇒IPOや会社の売却で増えた⇒コロナ禍の金融緩和が背景 の流れですよね。日本で本当にIPOが増えているのでしょうか?

まずはIPOについておさらいします。

IPOとは (ウィキペディアより)

新規株式公開あるいは単に株式公開(英: Initial Public Offering、通称IPO)とは、自由な株式譲渡が制限され少数株主に限定されている株式を株式市場に上場して株式市場での売買を可能にすることをいう。
その方法には新株を発行して株式市場から新規に資金調達する公募増資や、既存株主の保有株式を市場に放出する売出しがある。
IPO銘柄は、証券会社で抽選に申し込み、当選した人だけが購入できる。

2021年のIPOは125社、前年から32社増加した

東京商工リサーチによると2021年のIPO者数は125社と、前年の93社から32社増加し、2007年の121社以来14年ぶりに100社を上回ったそうです。要因は国内株式指標の堅調な推移と、2022年4月の東京証券所再編を前に駆込需要的に新規上場が行われたからと分析しています。

下の図を見ると日経平均株価がこの3年間急上昇したのがわかります。IPO実施の環境も良かったということですね。

どんな企業のIPOが多かったのか

東京商工リサーチの資料から市場別IPO社数とIPO企業の上位5業種を10年間で比較しました。2011年のIPO社数は36社で東証JASDAQ16社、東証マザーズ11社の順で新興市場が多いことがわかります。2021年になると特に東証マザーズが93社と突出しています。東証マザーズは、成長性がある理由が明確であり一定条件を満たせば、赤字でも上場可能なため、スタートアップ企業に上場しやすい市場として人気があるからです。

業種についてみると2011年は情報サービス以外の業種は従来からある業種が並んでいます。しかし2021年はその他サービスや専門サービスなど、この10年間で市場が形成されたと考えられる業種が上場していることがわかります。

「新興富裕層」とは

記事の中で「新興富裕層」というキーワードが出てきます。ググってみても検索キーワードに引っかからないので一般的な言葉でなく、筆者の造語だと考えられますが、言いたいことはわかります。一般的な「富裕層」は親から財産を相続して引き継がれて行きます。それに対し「新興富裕層」は自社株やIPOや自社そのものの売却で得た利益による新たな富裕層を指しているのでしょう。

このように考えるとIPOと新富裕層は非常に親和性の高いキーワードだと気付きますね。

この記事が言いたいこと

この記事は最後に<Review 記者から>次世代育成の好循環に期待として以下のようにまとめられています。

<Review 記者から>次世代育成の好循環に期待

新興富裕層は自らが創業時に支援を受けた経験から「ペイ・フォワード」(人から受けた親切を他の人につないでいく)の精神で後輩の起業家を支援したり、非営利団体に寄付したりする人も多い。

IT(情報技術)バブル期の起業家のように一等地に住んで高級車に乗り、ぜいたくをしたいという人は相対的に減っているように映る。新たな富裕層の力が次世代につながり、好循環をつくっていくことを期待したい。

記者の意見が書かれているのは日経新聞にしては珍しいですね。この記者の言いたいことについて考察します。

「ITバブル期」の起業家について触れていますが、1999年から2000年にかけ、当時普及が進みつつあったインターネット関連企業の将来性を期待して、米国で通信やIT(情報技術)関連企業の株価が急騰しました。しかし多くの企業が利益の裏付けがなく、事業展開に失敗して破綻したり、不正会計が発覚したりして相場崩壊のきっかけになりました。

ITバブル期のキーワードでは「ヒルズ族」が有名ですよね。六本木ヒルズ森タワー近辺にオフィスや住居を構える人たちで、ベンチャー企業の成功者、芸能人、モデルなど若くて裕福な人が多く、派手な生活ぶりで話題になりました。そういえば最近の「新興富裕層」はどこに居を構えているんでしょう。確かに一等地に住んで高級車に乗るというイメージは湧かないですね。そしてそのイメージの人はダサいという感覚さえ覚えます。

「ペイ・フォワード」という言葉も使われていますが、恥ずかしながら僕はこの言葉を知りませんでした。Pay It Forwardとも表現されるみたいですね。辞書には『恩送りをする。誰かから恩を受けた(親切にしてもらった)場合に、その人に恩を返す(恩返しをする)のではなくて、その恩を別の人に送ること。』とありました。まさにベンチャービジネスでの成功者なら実際にやっている人が多いんでしょうこうして次世代育成のサイクルが回っていくんだと思います。

本日はここまでです。

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