日本株でGO! №5
急変したセブン&アイの経営環境
イトーヨーカ堂の縮小とアパレル事業からの撤退
ロイターが配信した記事が各新聞に掲載されました。産経新聞の記事をお見せします。
スーパーのイトーヨーカ堂の縮小とアパレル事業からの完全撤退を発表しました。
イトーヨーカ堂は「食」に注力し、コンビニ事業(セブンイレブン)への集中を進めるとあります。
流通大手セブン&アイ・ホールディングスは9日、低迷が続く傘下の総合スーパー、イトーヨーカ堂の不採算店舗閉鎖を含むグループ全体の合理化策を公表した。イトーヨーカ堂の全国126店舗(今年2月末時点)のうち14店舗の閉鎖を決定。スーパーでのアパレル事業から完全撤退する意向も併せて明らかにした。
イトーヨーカ堂についてはこれまでも不採算店の閉鎖や、セブン&アイ傘下の別スーパーへの移管などで店舗数を減らしてきたが、令和8年2月末までに2割超を削減し93店舗とする。
スーパー事業については店内で扱ってきた衣料品から撤退し、グループ戦略の軸となる「食」に注力。イトーヨーカ堂と食品スーパーを手掛けるヨークなどとの統合再編を進め、首都圏での運営効率化を進める。
セブン&アイを巡っては「物言う株主」として知られる米投資ファンドが、イトーヨーカ堂など低収益部門の切り離しと、コンビニ事業への集中を求める。井阪隆一社長は9日の記者会見で「株主の皆さまを始めステークホルダーと建設的な対話を継続し、皆さまの声に傾聴し、グループの持続的成長と企業価値の向上に向け邁進(まいしん)する」と強調した。
2023.3.9産経新聞
事前の期待による株価上昇と発表後ショックによる急落
この発表を受けて翌日10日の株価は6%近く下落、終値が当日最安値となり、まだ下落余地が十分にありそうなローソク足になりました。
セブン&アイについては3月9日に中期経営計画が発表されることが明らかにされており、3月に入って期待感からか株価が急騰していたため、今回の下落はより目立つものとなりました。
この下落を「ヨーカ堂ショック」と呼ぶことにします。
ヨーカ堂に勝ち目はない
日経新聞にイトーヨーカ堂の営業収益と店舗数のグラフが載っていました。
ともに右肩下がりですが営業収益の落ちに比べ店舗数の減少が後追いになっています。
これは仕方のないことでしょうが、営業収益が一貫して右肩下がりの中、一時的に店舗が増えている時期もあり、今見ると判断を誤ったのだと言えます。
最終損益は15年以降赤字続き、22年にさらに営業収益が急落しています。
何故ここまで不採算のイトーヨーカ堂を引っ張ったかという問題はあります。
セブン&アイの始祖「羊華堂」であり、従業員2万6千人を抱える大所帯のため、抜本的な対策が後手に回ったと容易に想像がつきます。
でも、ようやく全店で2割の閉店を決めました。
僕は4割閉店を目指すドラスティックな改革が必要だと考えていますが、いきなり4割というのもショックが大きいのでしょう。
スーパーマーケットは中小の独自路線店舗を除けばイオンの一人勝ちだと思います。外資系のスーパーも入って来る時代です。
西日本に店舗網を持たないイトーヨーカ堂に勝ち目はなく、中途半端なローカルチェーンに留まるならいずれ淘汰される運命なのではないでしょうか。
【訃報】
イトーヨーカ堂創業者でセブン&アイ・ホールディングス(HD)名誉会長の伊藤雅俊(いとう・まさとし)氏が10日、死去した。98歳だった。
★★★
僕が記事をアップした本日、訃報が飛び込んできました。
ご冥福をお祈りいたします。
セブン&アイは復活する
絶好調に見えるローソン 実は出戻り
コンビニの競合他社としてローソンの株価を見てみましょう。
日足チャートで見ると絶好調に見えます。
しかしローソンは一度急落してからの復活です。
ローソンの株価を週足チャートで見ます。
22年初に窓を空けて急落したのが判ります。
これは9-11月営業利益が2ケタ減益になったことが嫌気されたからです。市場は好調な決算を予想していたためサプライズとなりました。その後も株価は6月まで下落を続け、3-5月の大幅増益の報道から上昇に転じました。
日足では絶好調に見えたローソンの株価ですが、出戻りというのが実際です。
中期的に右肩上がりのセブン&アイ
セブン&アイの週足チャートはどうでしょうか。21年以降ずっと右肩上がりです。
23年に入ってから上昇角度が大きくなっているように見えます。
セブン&アイ復活に向けての3つの鍵
今回のヨーカ堂ショックから立ち直ることができるか否か。
僕は株価はさらに急角度で上昇すると考えています。
理由は以下の3点です。
- ヨーカ堂削減の公表効果
- 衣料品からの撤退
- 巣ごもり消費の終焉
ヨーカ堂削減の公表効果
セブン&アイの復活、具体的に言えば株価の上昇を支援する最初の鍵は「ヨーカ堂の公表効果」です。
地方にある採算性の低い店舗を中心に33店舗を閉店すると公表しました。
イトーヨーカ堂126店舗のうち、地方にある店舗は北海道6、東北9、甲信越4、中部7、近畿7の計26店舗です。これらを削減するだけでも効率化の面では大きな効果が得られるはずです。
今回のイトーヨーカ堂の削減は経営資源の集中を公表することこそに効果があります。
今までも不採算店の閉店は実施していますが、今回の世に公表したのは初めてのこと。
セブン&アイも聖域なきリストラを実施するというアナウンス効果は大きいはずです。
衣料品からの撤退
イトーヨーカ堂の店舗削減とあわせて衣料品からの完全撤退は大きな意味があります。
スーパーマーケットでは食料品を1階、衣料品を2階で販売する形態からまだ残っていますが、2階以上のフロアにどれだけ顧客がいるかを見れば先行きが困難なことは明らかです。
イトーヨーカ堂でもこの形態の総合スーパーの閉店を進めてきましたが、いよいよ商品そのものを扱わないという選択に踏み込んだことは大いに意義ある選択です。
巣ごもり消費の終焉
今回のセブン&アイの「ヨーカ堂ショック」と同時期に起こるのがコロナの終焉、消費生活においては巣ごもり消費の終焉です。
コンビニ業界では巣ごもり消費は追い風と言われてきましたが、やはり消費を停滞させる面があることは否めないでしょう。
この生活様式に変化が出て来るこれからにいかに対応するか。
多くの企業にとって大きな社会的変化ですが、この流れにいち早く乗るためにもヨーカ堂削減というアナウンス効果を生かし、衣料品から撤退する経営資源を効率的に投下できるセブン&アイは他社より抜きんでた位置にいると考えるのですが、いかがでしょうか。