日本株でGO! №27
公募増資価格に株価が貼り付く異常事態⁉
公募増資価格に株価が貼り付く
まずはこの図をご覧ください。
2023年12月1日の株価の推移です。
後場から株価は1,489円に貼り付いて推移しています。
知らない方は「一体何があったんだ?」と不思議に思うでしょうね。
2桁台のボロ株ならともかく、千円台の株です。
時価総額も1,920億円の大規模な会社での出来事。
AZ丸和HDに一体何が起こったんでしょうか。
業績は堅調
この会社、物流企業ですが業績は堅調です。
直近発表された資料をご覧ください。
利益率の伸びは一桁ですがROAが11.9%、ROEが24.0%と稼ぐ力は非常に高い会社と言えます。
(逆に従業員の給料が安いという噂は聞きますが・・・)
AZ丸和HDはどんな会社
先ほどの図ではAZ丸和HDと記載されていますが、正式名称は「AZ-COM丸和ホールディングス株式会社」です。
長い社名ですね。
株式市場では省略して『AZ丸和』と表記されます。
この会社、なじみがない名前ですが「丸和運輸機関」というのが前の名前です。この名ならご存じの方も多いでしょう。
丸和運輸機関は2022年10月1日付で会社分割方式により純粋持株会社へ移行し、AZ-COM丸和ホールディングス株式会社に商号を変更しました。
AZ-COM丸和ホールディングスは、埼玉県に本店を置く会社で、運輸・物流業界に属しており、東証プライムに上場しています。
2022年2月に東証プライムに上場している同業のファイズホールディングスをTOBで子会社化しました。
今後はM&A(合併・買収)などで輸送能力を強化し、2025年までの3カ年で連結売上高を2022年比80%増の2400億円まで伸ばす中期経営計画を策定しています。
運輸業界は運転手の不足に加え、物流の2024年問題で業界が大きく再編されようとしています。
2024年4月からトラックドライバーの時間外労働の960時間上限規制と改正改善基準告示が適用され、労働時間が短くなることで輸送能力が不足し、「モノが運べなくなる」可能性が懸念されており、このことを「物流の2024年問題」と言われています。
各社とも生き残りをかけ、打てる手は全部打っている状況です。
そんな中でのAZ-COM丸和ホールディングスの奇妙な株価形成。
理由は公募増資による資金調達にありました。
公募増資による希薄化懸念で株価は急落
AZ-COM丸和ホールディングスは755万株の公募増資と900万株の株式売り出し、そして上限245万株のオーバーアロットメントによる売り出しを行いました。
調達資金185億9,800万円は物流センターの建設資金などに充てられます。
2023年11月21日09時28分
AZ丸和HDは大幅続落、公募増資で希薄化懸念
AZ-COM丸和ホールディングス<9090>は大幅続落。20日の取引終了後、755万株の公募増資と900万株の株式売り出し、上限245万株のオーバーアロットメントによる売り出しを実施すると発表。1株利益の希薄化と株式需給の悪化を懸念した売りが膨らんでいる。
発行価格は11月29日から12月4日までのいずれかの日に決定する。公募増資などによる調達資金約185億8900万円(手取概算額)は、物流センターの建設資金や設備投資などに充てる。
注目したいのは公募増資とオーバーアロットメントで1000万株、売出しが900万株と、売出しがかなり多い点です。
もう一つ株探からニュースを紹介します。
7.8%の株式価値希薄化とあります。当社の発行済株式数は128,952,320 株、7.8%は1,000万株です。これが株式が希薄化する分です。
2023年11月21日11時18分
AZ丸和HD—大幅続落、公募増資や株式売出の実施を発表
AZ丸和HD<9090>は大幅続落。755万株の公募増資、900万株の売出、最大245万株のオーバーアロットメントによる売出を行うと発表している。発行価格・売出価格は11月29日から12月4日までの間に決定。売出人は複数の既存株主となっている。調達資金は物流センターの建設資金などに充当。株式売出の目的は流通株式比率のプライム市場上場維持基準充足を図るためとしている。7.8%の株式価値希薄化、並びに当面の需給悪化を警戒する動きに。
900万の株式売出しで資金調達はできない
それに対して900万株売出しを実施してます。
売出しについて当社リリース資料から抜粋しました。
2.当社株式の売出し(引受人の買取引受による売出し)
(1) 売 出 株 式 の種 類 及 び 数
当社普通株式 9,000,000株
(2) 売 出 人 及 び売 出 株 式 数
和佐見 勝 2,766,800株
株式会社マツキヨココカラ&カンパニー 2,638,400株
日野自動車株式会社 1,079,200株
株式会社埼玉りそな銀行 987,200株
トーヨーカネツ株式会社 928,400株
あいおいニッセイ同和損害保険株式会社 300,000株
三和建装株式会社 196,000株
株式会社東計電算 104,000株
株式の売り出しとは安定株主の株を売出して市場に流通させるということです。
流通量が増えるので当面の需給の悪化を招きますが、発行済み株式数が増える訳ではありません。
当社にとっても新たな資金調達ができる訳でもないんです。
発行済みの株を持っている人が変わるだけですからね。
プライム市場上場維持基準充足を図るため
当社発表では「株式売出の目的は流通株式比率のプライム市場上場維持基準充足を図るため」とあります。
プライム市場上場維持基準流通株式数 2万単位以上 · 流通株式時価総額 100億円以上 · 流通株式比率 35%以上.の3つです。
AZ-COM丸和ホールディングスの株式数と時価総額はプライム市場上場維持基準を優に超えています。
ところがこのままでは上場基準を満たさない問題があります。
それが流通株式比率35%以上の達成です。
AZ-COM丸和ホールディングスの社長はこの方。
もうお判りですよね。
当社の株の59.57%は社長が持っている典型的なオーナー企業なんです。
その他にも安定株主が持っている株は市場で流通しません。
今回の900万株の売出しは現状では流通株式比率 35%以上という東証プライム市場の上場基準を満たしていないための措置です。
しかもそのうち社長の売出し分は276万株です。
上場基準を満たすために他の安定株主に頼み込んで手放してもらったのではという憶測が出ますよね。
AZ丸和HDは買うべきか
公募価格に貼り付く株価は危険
日足チャートを見ます。
11月29日に今回の公募価格は1,489円で決定しました。
12月1日の終値も1,489円。
こんなの僕は見たことありません。
当社と同時期に公募増資を発表したGSユアサの公募価格は2,072円。今日の終値は2,156円です。
ここも急落しましたけどさすがに公募価格にまでは落ち込んでいません。
詳しくはここを見て下さい。
市場からは今回の公募増資による効果を全く期待されていないのではと思わせる株価です。
物流業界の2024年問題への懸念
株価が大幅に下落しても飛びつけない理由に物流業界の2024年問題への懸念があります。
当社はこの業界では中堅企業、上にはヤマトHD(ヤマト運輸)やNXHD(旧日本通運)、SGHD(佐川急便)などの超大手がひしめき合っています。
2024年問題で業界の淘汰・再編が囁かれる中、果たしてAZ-COM丸和ホールディングスの今回の措置で効果が出るのか、疑問な点がありますよね。
今回の措置は投資効果が無い
資金調達が主目的ではなく、社長が株を持ちすぎているから少し売って(売ってもなお過半数を掌握)流通量を増やし、東証プライムの上場基準満たす(現段階は未達)ための措置なんですから。
公募増資価格に貼り付く市場での株価。
今回の措置は投資効果が無いと投資家に判断されたんじゃないでしょうか。
それでも買う理由は明らかに過度な下落
それでも当社の株を買う理由を上げるなら株式の希薄化に対する過度な下落率でしょう。
今回の公募増資による株式希薄化は7.8%です。
それに対して発表後の株価の下落率は23.3%。何と3倍近く下落しています。
11月20日の終値:1940円
12月01日の終値:1489円
下落率は23.2%
900万株の売出し(発行済み株式数は増えない)で一時的に需給がひっ迫するとはいえ、明らかに過度な下落と言えます。
今後上がる確率は高いと思います。
市場というのはわからない
しかし市場というのは判りません。
公募増資実施後、株価が1489円より下落していくというシナリオもあり得ます。
その時は株主から「上場基準を満たさない企業はNO!」「お前の都合でやった罰だ」とのメッセージを突き付けられたということでしょうね。
僕は一時的にでもこれはあるんじゃないかという気がしますが・・・
☆☆☆
今回はここまで。
僕はしばらくウォッチする予定ですが、あなたにAZ-COM丸和ホールディングスの株の売買を推奨する意図は一切ありません。
株式投資は自己判断でお願いします。
それじゃ、またね👋
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